Morning Dreamer

目覚まし時計がすさまじい音を立てて鳴り響く。

「あうう……あと30ぷーん」

寝ながら目覚まし時計に手を伸ばそうとするが、あとちょっとというところで届かない。

「ふぬぬぬっ」

やっぱり届かない。
仕方なく起き上がって、目覚まし時計を止めることにする。
ふわあ、とあくびをもらしながらカチッと音を立てて止めると、目覚まし時計は何事もなかったように静かになった。
まだ、全然寝たりない。
あくびを連発しながらもぞもぞともう一度布団に潜り込む。
昨日は何してたんだっけ?

「ああ、そっかぁ……昨日はGIGだったじゃん」

そのあとは飲み会があって……もちろん私はジュースだったけどね!
帰ったのは結局12時過ぎてたんだっけ。それからお風呂入って、支度したらなんだかんだ2時過ぎてて……最近、忙しくて全然寝てない気がする。

でも、そろそろ起きないと先輩に怒られちゃう。
新曲聞かせてあげるーって約束しちゃったし。弾き語りでユイにゃん特別ステージなんて贅沢だよね。
先輩にハモってって言ったらやってくれるかな。しぶしぶだけどやってくれそう。
布団の中でふふふっと笑みをこぼす。先輩の反応が楽しみだ。

でも、そろそろいい加減に起きないと。布団の中でゴロゴロしてから30分経つ。
でもこの魅力的な魔性の「フトン」というアイテムがユイにゃんを放してくれないんですよー。
だって布団から出たら寒いし、眠いし。ユイにゃん唯一の癒しアイテムだし。
寝ぼけた目で時計を見ると、起きないと本当にヤバい時間になっていた。
嫌がる体を無理やり布団から引きはがし、ベッドから体を起こす。

「んーっ……ふわぁぁ……」

伸びをしてから、あくびを一つ。今日は起きたら新曲の練習するんだっけ。

「せんぱーい……お湯沸かしてくらさい……」

もにょもにょと口の中で呟くと、私は布団を放り投げてベッドから立ち上がった。
眠気覚ましの苦いコーヒーが飲みたい。それに昨日食べ残したクッキーがあるはず。
眠い目をこすりながらキッチンに向かおうとして、私ははたと気づいた。

「あれ、私、誰と話してたんだろ?」

一人暮らしで、この家には私以外誰もいないはずなのに。
先輩、先輩って誰のことだっけ。
何かすごく、ものすごく大切なこと、忘れてる気がする。
でも、どうしても思い出せない。

「んー、まあいっか!よしっ、今日も頑張るぞー!」

さっきまでそこにいた誰かの影を振り払うように私はキッチンへと向かった。