星追い人をいつまで待つの

日付も変わる夜更けの時間に携帯が鳴る。誰からだろうと思って見てみると、表示されていたのはルカの名前だった。こんな夜更けにどうしたんだろうと思いながら、電話に出る。
「もしもし」
『もしもし。ごめん、起こした?』
「ううん、起きてたよ」
『そっか、ならよかった。……ねえ、今から会えない?』
「こんな時間に?もう遅いよ」
『ちょっとだけ。下に出てこれない?』
「ルカ、どこにいるの?」
『窓の外見て』
もしかしたらと思って、窓から下をのぞくと、こちらに向かって手を振るルカと目が合った。
「ちょ、ちょっと待ってて」
部屋着の上にカーディガンを羽織り、足音を忍ばせながら階下まで下りる。両親を起こさないように、こっそりと玄関の扉を開けて外に出ると、目の前にはルカがいた。
「やあ、佳音」
バイクにもたれかかりながら、片手をあげて挨拶をするルカに少し呆れてしまう。
「やあ、じゃないでしょ。こんな時間に」
「ごめんごめん。たださ、今日って星空が綺麗じゃない?」
ルカの言葉に連れられて上を見上げると、澄んだ空気のなかに瞬く光がいくつか見える。
「だからさ、会いたくなったんだ」
「……意味わかんないよ」
言ってることは滅茶苦茶で意味が分からないのに、それでも嬉しいと思ってしまう自分がいる。それ以上言葉が出てこなくて、黙って空を見上げると、突然手を握られた。
「な、なに、」
冷たい、冷え切った手。ルカはいつからここにいたんだろう。真剣なまなざしで見つめられて、言葉が出てこない。
「ごめん。……ちょっとだけこうさせて」
ルカがそうつぶやいたと思った途端、私はルカの腕の中にいた。温かくて、優しくて。それでも加減されてると分かる力で抱きしめられている。
戸惑いながらも抱きしめ返そうと腕を伸ばすと、パッとルカは私から離れた。
「もう日付変わっちゃったね。さよなら、お姫様」
私の頬に手を伸ばしてするりと撫でると、ルカはバイクにまたがってあっという間に遠ざかってしまった。