夜明け前のトランプゲーム

リドルが4年生に、そしてエースが3年生になる前日の夜。エースは次期寮長に指名されており、明日には正式にその座を引き継ぐことになっていた。
そして、エースはリドルの部屋に呼ばれて二人でお茶を飲んでいた。

「緊張しているかい?エース」
「そりゃしますって。リドル寮長の代わりなんて出来っこないし。ま?オレはオレなりにやらせてもらいますけど」
そう言いながら紅茶を一口すするエース。「この紅茶、なんかいつもより苦いっすね」とエースがぼやくと、リドルはくすりと笑う。
「ふふ、そう言うと思ったよ。君に寮長の座を渡す以上、僕は寮のことに口を挟まない。君のやりたいように、君の目指す寮にすればいいさ」
「オレの目指す寮ねぇ……」
独り言ちながら遠くを見るような目をするエースにリドルはくすりと笑う。
「1年生の頃の君のほうがよっぽど度胸があったんじゃないか?だって僕から寮長の座を奪おうと決闘を申し込んできたんだもの」
「あっ!それ言います!?言っとくけどあれは半分は寮長のせいっつーか、ま、オレも考えなしだったけど……」
ゴニョゴニョというエースにリドルはくすくすと笑う。
「あーあ、一回でもいいから寮長に勝ってその座を奪いたかったなぁ〜」
そのエースのボヤキにリドルの眉がピクリと動く。
「へぇ……いい度胸がお有りだね?ちょうどいい。ここで最後の手合わせといこうじゃないか」
「げっ、マジ?いや、今のは……」
「次期寮長なのに自信がないのかい?随分と不甲斐ない寮長になるものだね」
挑発する口調のリドルにエースはピクリと反応する。
「へーへー、そこまでいうならやってやりますよ!」
2人は立つと向かい合わせになり、素早くマジカルペンを構える。
「オフ・ウィズ・ユア――」
リドルがユニーク魔法の詠唱を唱える前に素早くエースがリドルの前にトランプをばら巻く。一瞬だけリドルの視界がトランプに奪われた隙を狙って、エースは一気にユニーク魔法を放つ。
「アンタのとっておき、いただくぜ!ジョーカー・スナッチ!」
「オフ・ウィズ・ユアヘッド!」
同時にユニーク魔法の詠唱が響き、その後にガチャンと音がした。
エースが自分の首元を見るとがっつりと魔法の首輪がかかっている。
「……ちぇっ、やっぱりだめだったかー」
「戦略としては悪くない。だが、気を抜かないことだよ」
リドルが軽く手を振ると魔法の首輪が一瞬で消える。エースはその場に倒れ込むと、一息ついた。
「一回くらいリドル寮長に勝ちたかったなー」
「おや?勝ったことがあるじゃないか。ほら夢の中で」
「いやいや、あれはデュースやオルトたちのおかげというか……オレはきっかけを作っただけだし」
「夢だろうと一回でも勝ちは勝ちだ。あの時は本当にびっくりしたよ!しっかり掴んでいた僕の魔法がマジックみたいに一瞬でトランプに変わって!あんなの学園に入ってから初めての体験だったよ」
子供のように目をキラキラさせながら言うリドルを見て、エースは照れくさそうにそっぽを向く。
「君のユニーク魔法も君の仲間も。君がここで得た経験はこれからのハーツラビュルを作るうえで大事な基盤になっている。だからこそ、僕は君を指名したんだ。君なら大丈夫だよ、エース」
「……ようやく年下の扱い方覚えたんすね」
「君が学べって言ったんだろう?」
そう言ってリドルは苦笑した。