俺の出る幕はもうない

「玉緒先輩っ!一緒に帰りませんか?」

「ああ、いいよ」

いつからだろうか。お前が俺を誘わなくなったのは。

いつからだろうか。紺野とお前のとなりに俺の居場所が無くなったのは。

「あ、設楽先輩もこれから帰るんですか?一緒に帰りません?」

「……佳音」

「?」

お前は、俺の気持ちなんてちっとも知らないんだろう。だから、そうやって平気な顔をして、

「佳音さん、設楽は迎えの車があるから無理じゃないかな。そうだろ?設楽」

紺野の目が俺を挑発する。
一歩も引いてやらないと訴えてくる。

「……今日は無理だ。また今度」

「そうですかー。じゃあ、また今度。玉緒先輩、行きましょう」

「うん。じゃあな、設楽」

「……ああ」

二人が俺の横を通りすぎていく。その後ろ姿はもう俺の入り込める余地なんかなくて。
とっくに解っていたさ、佳音が俺を見てないことなんか。
だから、紺野。お前に譲るよ。
あいつを幸せにするのは、俺の役目じゃない。

二人が去って暫くしてから俺は学校を後にした。
ああ、明日からまた迎えの車を寄越してもらわなくてはならない。

一人で歩く帰り道は思っていたより静かで、とても寂しくて。

ああ、俺は、お前のことが本当に好きだったんだな。


俺の出る幕はもうない

(幸せに、なれよ)