祝ってあげるから感謝なさい!

11月11日がゾロの誕生日だと教えてくれたのは誰だったか。
数日前の記憶がすでに曖昧なのは何故だ。まぁ、私の記憶力はさておき…今日は仲間であるゾロの誕生日なのです。
料理やケーキはコックであるサンジがとびきり美味しいものを(不服な顔をしつつも)用意してくれるはず。ダイニングの飾りつけもチョッパーとフランキーとウソップを筆頭に、皆で飾りつけした。あとは夕飯の時間に何も知らないゾロをクラッカーでお出迎えするだけ。
そう、準備はびっくりするほどに万端なのだ。つまり、何の心配もないのだけれど…私の気持ちは一向に晴れる様子がない。
別にプレゼントを買い忘れたわけでもないし、心配要素があるわけでもない。じゃあ何で気持ちが晴れないのか、と言いますと…私が素直になれない天邪鬼だからなのです。それはもうたくさんの人がドン引きするほどに天邪鬼なのだ…これにはいっつもナミが呆れ顔だし、ロビンも苦笑する他ないって感じ。更にはルフィにまで「お前、いい加減素直になれよなー」と言われてしまうくらいにひどい。

私は、ゾロが好き。

いつからかわからないけれど、気が付いたらあの筋肉馬鹿に心底惚れていて、これまた気が付いたら天邪鬼が発動していた。…いや、元々素直な性格はしてないけどさ。私。それにゾロと喧嘩すること多かったしね。
誰かが女版サンジだとか言ってて、言い得て妙だと納得した記憶がある。だって、とてもわかりやすいでしょ?正にそんな感じだったし、ゾロと私って。

「なまえ、今日くらいは素直になんなさいよー?」
「う、…」
「そうね、せっかくのお誕生日ですもの。素直になった方が私も良いと思うわ」
「ロビンまで…」

わかってるのだ。この性格のせいでゾロには女として見られてないことくらい。損もしてること、ちゃんと理解してる。…でも、頭と心は所謂、別物なのである。頭では理解してても心がついていかないってこと、世の中にはたくさんあると思うのよね。
はい、ただの言い訳ですねわかってます。
けど、確かに今日はせっかくのゾロの誕生日だし、…いつもの意地はどっかに吹っ飛ばして素直に「誕生日おめでとう」って言いたいなぁ。
そう思っていました。数時間前までは。

ルフィの声で幕を開けたゾロの誕生日会と言う名の宴。
今となってはもう、全員を巻き込んでのどんちゃん騒ぎでしかない。誕生日会の欠片も残ってない状態です。当の本人はお酒が飲めれば問題ないのか、何も気にすることなく酒瓶を傾けてる。
あ、…だけど、普段より穏やかに笑ってるような気がする。何だかんだ言いつつ、アイツもしっかり楽しんでんじゃん。滅多に見ない穏やかな笑みを見ることが出来て、私も何だか嬉しくなる。
料理を口にしながらボケッと見てたら、不意にこっちを向いたゾロと思いっきり目が合ってしまった。心の準備を何もしていなかったから、びっくりしすぎて思わず噎せた。それはもうめちゃくちゃ噎せた。
ゲホゲホ咳き込んでいると、呆れた声音が頭上から降ってくる。そこでようやく、ゾロがめっちゃ近くにいることに気が付きました。何してんだ私。

「なに人の顔見て噎せてやがんだてめぇ」
「ゲホッ…アンタが急にこっち向くからびっくりしたんじゃないの!」
「はぁ?!俺のせいかよ!!こっちに熱い視線寄越してきたのはそっちだろうが!」
「それこそはぁ?!よ!なーに自意識過剰発言しちゃってんのよ、ゾロってば」

いつもの口喧嘩が始まった私達を見て、全員が呆れた顔をして溜息を吐いているのが視界の端に映った。
うん、まぁ皆の気持ちはわからんでもないけれどね!だって喧嘩してる相手は今日誕生日で、所謂、主役だもん。そんな奴にお祝いの言葉をかけることはあれど、今の私みたいに罵詈雑言(?)を吐くようなバカはいないだろう。きっと世界中探しても私だけだと思う。
普段、仲の悪いサンジだって今日はちゃんと料理もケーキも作って、尚且つ、きちんとお祝いの言葉まで言ったんだから。

ひとしきり言い終った後で、お互いに何となく口を噤む。
最初は呆れた顔でこっちを見ていた皆は、もうすでに私達のことなんか気にしていないとでもいうようにどんちゃん騒ぎを再開してるし。いや、まぁいいんだけどさ…この喧嘩だって日常茶飯事なんだし。今更っちゃぁ、今更だ。ものすごく。
…だけど。いくら何でもこのままおめでとうの一言すら言えないなんて、私は嫌だ。きっと自分部屋に戻ってから後悔すると思うんだ。
グッと拳を握って、私は口を開いた。

「ッ、…ゾロ!」
「あ?何だよ、まだ言い足りねぇのか」
「ち、違うわよ!あのっ、…誕生日、おめでとう」

ボソリ、とお祝いの言葉を呟き、持っていたプレゼントを投げつけるように渡してその場を逃げるようにして離れたのです。
ちゃんと捨て台詞も残して!



(あんにゃろ、素直に祝いの言葉を言ったかと思えば…!)
(けーっきょく素直になりきれねぇんだなぁ、なまえの奴)
(でもまぁ、プレゼント渡せたのは進歩じゃない?投げたけど)