「あれ、高遠さん?」
「伏見妹…?!」
所属している劇団の新しい公演が決まり、今回は客演を呼んでいると聞いていた。でも新しい台本に夢中になっていたから話自体を流し聞きしちゃってて、肝心の名前を聞き忘れていたのです。
なので本読みの日、地図を片手にキョロキョロしている高遠さんを見つけた時は、ちょっとビックリしたんだよね。
「それで?練習はどうなんだ?」
「順調だよ。でも高遠さんの演技がすごくてさぁ、引きずられそうになる…」
「ははっ丞さんはGOD座の看板役者だった人だからな」
そう。あの人の演技は本気ですごい。何度も何度も見たことのある演技を、間近で見られることはものすっごく嬉しいし、ものすっごく光栄なことなんだけど!絡みが多い私は、彼の演技に引きずられないようにするだけで精一杯。慣れるまでもう少し時間がかかりそう。
そうボヤくと兄さんは頑張れ、と頭を撫でてくれた。