こころに残れ!

「え?工藤くんの誕生日?」
「そう!ちょうどゴールデンウィークで学校休みだし、蘭とサプライズで祝ってやろうって話してたんだ。なまえも一緒にやろうよ!」
「サプライズって言っても、簡単な料理とケーキ作って新一の家に押しかけるだけなんだけど」

隣の席の工藤新一くん。有名な高校生探偵で、時々、新聞に載ってるのを見かける。どんな難事件でも解決しちゃうらしくて、警察の人達も一目置いてるみたい。
そんな彼とは本の貸し借りをよくしていて、あとわからない所を教えてもらったりもしててよくお世話になってるんだよね…そんな彼の誕生日を祝うんだ、と聞いたら―――お礼代わりに、一緒に祝いたくなるのが人の性。…あれ、これって私だけ?
まぁ、それはさておき。その日は用事もなくて暇だったから二つ返事でOKしちゃいました。





―――工藤くんの誕生日当日。

私と園子ちゃんは蘭ちゃんの家に朝から集まって、工藤くんの家に持っていく料理とケーキ作りに勤しんでいました。私、今まで知らなかったんだけど蘭ちゃんってすっごく料理上手なんだよ!何でも普段から家事をやっているのは彼女だから、もう慣れちゃったんだって。さすがにお菓子は作ったことないからちょっと不安だけど、って笑ってたんだけどさ。
でもそこは私の出番!料理は全然だけど、お菓子作りは趣味みたいなものでよく作ってるからケーキ作るのも割と得意なんだ。

午前いっぱい料理とケーキ作りに時間を使って、昼過ぎに工藤くんの家へと向かうことになりました。事前に家にいることは確認済みだし、今日は出かける予定がないこともリサーチ済み!これで急に押しかけても当人がいない!って事態は避けられました。そうなっちゃったら、料理もケーキも無駄になっちゃうからね。


―――ピンポーン

「はーい…って、蘭?園子?みょうじ?何してんだオメーら」
「んふふ!まぁ、中に入ってからのお楽しみよー新一くん!」
「…ということなので、上がってもいい?」
「まぁ、いいけど…入れよ」
「工藤くんの家初めてだ…!お邪魔しまーす」

初めて足を踏み入れた彼の家は、とにかくでかかった。いや、外観からしてでっかい家だなぁとは思ってたけどさ。何て言うか、…もしかして彼ってお坊ちゃまだったのかな?そんな感じが全くしないから、知らなかったけど。家族の話とか、ほとんど聞いたことないし…海外にいる、っていうのは前に聞いた記憶があるけどね。
…っと、今は工藤くんの家事情は置いておこう。幼なじみで家の勝手を知っている蘭ちゃんが、お皿やフォーク、お茶の準備をしにキッチンへ行っている間に私と園子ちゃんはリビングの設営です!まぁ、設営っていっても持ってきた料理を出して並べていくだけなんだけどさ。

テキパキと料理を並べていると、何が何だかわからないって顔をした工藤くんがソファに座って私達の行動をじーっと見ていた。んー…もしかして、だけど…彼ってば今日が自分の誕生日だって気がついてないのかな?
仮にも探偵だから私達が訪ねてきた時点で、何をしに来たのかわかってるもんだろうと思っていたんだけど、はずれちゃってたのかな?その推測。

「よしっじゃあ…始めよっか」
「おい、始めるって何―――」
「「「誕生日おめでとーーー!!!」」」
「………は、?」
「あれ?もしかして新一、自分の誕生日忘れてるの?!」

蘭ちゃんに驚かれた工藤くんはリビングに飾ってあるカレンダーを見て、ようやく「ああ!」って納得してました。マジで忘れてたんだ…でももう高校生だもんね、それに男の子だし自分の誕生日にはあんまり関心ないのかも。

「すっかり忘れてたわ…」
「新一くんのことだから、私達が来た時点で予想ついてると思ってたんだけどなー」
「ね。私もそう思ってた」
「うっせー…」
「ふふっ!とりあえず食べようよ、ほら工藤くん、蘭ちゃんの作った料理美味しいよ?」

どれ食べる?取ってあげるよ、って言えば、からあげとポテトって答えが返ってきたので、それを山盛りにお皿に取ってあげれば多いわ!ってツッコまれちゃいました。それを見ていた蘭ちゃんと園子ちゃんは大笑いしてるし。
だって工藤くんの誕生日だよ?主役だよ?おめでたい日だよ?!そりゃあもう、たっくさん食べてもらわなくちゃいけないじゃんか。

「あははっもうなまえちゃんってば相変わらずだね」
「新一くーん、せっかくなまえが盛り付けてくれたんだから食べてあげなさいよね〜?」
「食うけど、限度ってもんがあんだろーが。バーロー」
「サービスだよ、サービス!あ、工藤くんが好きだっていうレモンパイもバースデーケーキ代わりに作ってきたからね」
「……おう、さんきゅ」

もごもごとからあげを頬張って、少しだけ頬を赤くしながらお礼を言ってくれた工藤くんは、普段とは違って可愛かったです。