君が笑ってくれるなら、

「ん?メール、…」

こないな時間に誰や、と思って開いてみれば。予想だにしない人物からやった。
見た瞬間、それはもう脱兎のごとく駆け出した。

「っなまえ!!!」
「あ、タツおばんです〜」
「おばんです、やないわボケェ!」
「いったああぁああ?!」

そう。メールをくれたんは、幼なじみのなまえ。
まぁ、それはええ。メールだって電話だって、いつだって好きな時にしてきたらええわ。あんまり遅い時間やと寝てて出れんかったり、返せへんかったりするけど。せやから、こないな時間にメールしてきたことに怒っとるんやのうて…日付が変わりそうな時分に外に出てるんが問題で、俺が怒っとる理由。
つまり。なまえからきたメールには、「男子寮の門の前におる。出てきてくれん?」て書いてあったわけや。そらもう、急いで部屋飛び出すに決まっとるやろ。
こないな時間に女1人で外に出る、て何考えとんねん!しかも、もう門限過ぎとるし…!つーか、俺もつい出てきてしもた。後で怒られるやろなぁ。

「もー…本気で叩くことないやんかぁ」
「お前がアホなことせえへんかったら叩く必要もないやろ。…で、何やねん?」
「ん、もーちょい待って…」

俺が勢い良く叩いた箇所を摩りながら、腕時計をじっと見つめ始めた。
門限の時間、気にしとんのか?せやけど、もうとっくに門限は過ぎとるから今更気にするだけ無駄やんなぁ。でもそれ以外に時間を気にする理由ってあるんか?
コイツの行動は時々突拍子もなくて、考えるだけ無駄な時ももちろんあるんやけど…もしかしなくても、今回もその類なんとちゃうか?…なんや急にアホらしくなってきたわ、考えるのやめよ。
小さく息を吐いて柵に寄りかかれば、隣に来よったなまえがえらい楽しそうにカウントダウンをし始めた。…は?カウントダウン、て…何でや?
いよいよわけわからんくなって何をしとんのか聞こうと思った瞬間、

「タツ!誕生日おめでとぉ!!」

花が咲いたような満面の笑みで言われたら、ぽかんとしてしまうんもしゃあないと思うねん。

「たん、じょうび」
「…あれ?もしかして気ぃついてなかったん?ほら、」

向けられた携帯に表示されとった日付は、8月20日。間違いなく俺の誕生日や。
うわ、さっきメールがきた時に時間とか見とったはずなのに全然気ぃつかんかったわ。ちゅーか、ポケットにいれとるケータイがさっきからえらい震えとんのはもしかしなくてもそれが原因か…!恐らく明陀の奴らなんやろなぁ、毎年律儀な奴らやさかい。
…あぁ、そうか。意外と真面目なコイツが門限過ぎてんのに寮を出てきて、こっちに来たんはこの為やったんやな。
ちっさい頃から誕生日は必ず一番に祝う!て、眠い目擦りながら日付変わるんを待っとったわ。ほんでおめでとぉ、て言うた瞬間に爆睡するんがオチ。この日だけは、いつも一緒に寝てたんを思い出した。さすがに小学生までやったけどな、一緒に寝てたんは。

「へへー!今年も一番乗りは頂きや!」
「…別に一番やなくてもええやろ」
「いーやーや!これは廉にだってねこにだって譲ったらんねんから」
「さよけ…」
「せや。はいこれ、プレゼントなー」

ぽん、と渡されたんは小さめの袋1つ。中に入ってたんはシンプルなネックレスとピアスで、それは俺の好みどんぴしゃ。
ああ、やっぱりなまえは俺んこと、よう知っとんなぁ…なんて、よくわからんけど感心してしもた。

「おおきに。気に入ったわ」
「それなら良かった。気に入らんかったらどうしよう、て思ってたんやけど」
「なまえがくれたプレゼントで気に入らんかったもんなんて1つもない」
「!…アンタのそういうとこ、反則やと思うわ」
「?何や、それ」
「何でもなーい。ほら、いこ?」

くるっと踵を返したかと思えば、俺の手ぇを握って駆け出した愛しい子。
何処へ行くんや、とか。帰って寝んとあかんやろ、とか。言いたいことは仰山あるはずなんやけど、「タツはよう!」と楽しそうに走るなまえの姿に、全部飲み込んだ。

プレゼントももちろん嬉しかったけど、こうやってお前が隣におって、笑顔でおめでとぉ、て言うてくれるんが一番嬉しい。
そないなこと言うたら、なまえ、お前はどんな顔をすんのやろか。


(ちゅーか、何処行くねん!)
(奥村兄弟んとこ!タツの誕生会や)
(はぁ?こないな時間からか?!)
(ええやん、たまには。1回くらい羽目外さんと!)