食べたいものを片っ端から。
*コミック新装版第2巻ドラマCD「愛すべき七つの大罪 vol.2暴食」より。
『夕飯の材料買ってこなくて大丈夫だから早く帰っておいで』
バイトが終わって開いてみた携帯には、そんなメールが1件届いていた。もちろん、相手は久保くんだ。重い物を買っていかなくていいのはとても助かるけど、夕飯は一体どうするのだろう。
あ。何処か食べに行く、とか?でもそれならあの2人がこっちに出てきちゃった方が早いから、早く帰ってこいなんてメール送ってこないわよねぇ。あとはデリバリーとかかなぁ…時くんピザ好きだったし。さすがに家ではピザまで作ることはできないからねー。食べたい時は頼んでしまうのが一番なのです。
んー…理由は色々浮かんでくるものの、どれが正解なのかは帰ってみないとわからなさそうだし、さっさと帰りますかね。
いつもよりは早足で帰宅してみると、リビングのテーブルの上には美味しそうなものが所狭しと並んでいました。…うん、何コレ。
「…どったの?これ」
「今日デパートに毛布買いに行ったんだけどね?」
「あ、もういい。大体、予想ついた…『全国うまいもの市』ね?しかも今日が最終日」
「ほたるすげー!よくわかったな!」
「だってそれ、久保くん大好きなんだもん。いつも大量に買って来てたけど、…今回はその比じゃないわね」
少しずつ手はつけられてはいるものの、どう見たって3人で食べる量じゃない。
まぁ大方、時くんと2人で美味しそうなものを片っ端から買ってきちゃったんでしょうけど。この子、時くんを無意識に甘やかしちゃうクセがあるからなぁ。止めたりしなかったんでしょ、買うの。…でも私が一緒に行ってたとしても、結果は一緒だろうね。葛西さん曰く、私も彼を甘やかしてるらしいですから?
それはともかく、お腹空いちゃったし私も食ーべよっと!どれにしようかなぁ。
「なぁ、ほたるー白くまも買ってきたんだぜ!風呂出たら一緒に食おうな」
「……くま?」
「白くまって言っても本当のくまじゃないからね?あるでしょ?有名なアイス」
「そんなのあったっけ?」
私は久保くんほどご当地グルメに詳しいわけじゃないからなぁ。ずんだ餅とか味噌カツとか静岡おでんとか、そういうのは知ってるけど…さすがにスイーツまでは知らないし。んー白くま、白くまねぇ…なーんか聞いたことがあるような気もするんだけど、ダメだ、思い出せない。
味噌カツをもぐもぐ咀嚼しながら考えていたら、時くんが徐に冷凍庫を開けて何か大きな器を持ってきた。
「なぁに?そのおっきなアイス」
「それが白くまアイスだよ。うまそーっしょ?」
「へぇ、普通のよりかなり豪華なんだね」
「そーだ!これ食ってみろよ」
「んー?」
時くんがアイスをしまってから出してきたのはフライ…みたいなもの。小判型だからコロッケ、…かしら?でもご当地名物のコロッケなんてあったかしら。疑問を浮かべつつ出された揚げ物に噛り付くと、何というか…すごく不思議な触感だった。
え、本当に何だこれ?食べてみても全くわからない。
咀嚼しながら首を傾げていると、楽しそうな笑みを浮かべた時くんが埼玉名物ゼリーフライだ、と教えてくれました。別名・おからコロッケとも言うらしい。ああ成程、これ中に入ってるのおからなんだ。
何か炭水化物というか、お米とかパンとか…主食が欲しい。ボソリ、と言うと冷蔵庫に高菜おにぎりが入ってると久保くんが教えてくれた。飲み物を出すついでに覗いてみれば、高菜おにぎりが1つとイクラ丼が半分入っていた。…どうして半分だけ残したのかなぁ、この子達。
「だってお前、イクラ丼好きだったっしょ?」
「え、覚えてたの?」
「そりゃあねぇ。何年一緒にいると思ってるの」
「あとこれも好きなんだろ?明石焼き」
「あ、好き!大好きっ!」
好物の2つを前にバイトの疲れが一気に吹き飛んだような気がした。
んー、幸せ。