あげたいって思う人


今日は学校も塾もお休みの日。
夏休みに入ってからなんやかんやずーっと忙しかったんやけど(個人的なのもあるけど)、久しぶりになぁんも予定のない休日なのです。
課題も珍しく出とらんし、本屋でも行っておもろい本探そかなとか、駅の近くに出来た新しいカフェにでも足を伸ばしてみよかなとか考えててん。
でもなかなか行き先が決まらんくて、とりあえず出かける準備だけて思っとったらこれまた珍しい来客がありまして。何と出雲ちゃんなんよ!な?珍しいやろ?
何かあったんか、と思ったんやけど、別段そういうわけやなくて、何やお誘いに来てくれはったんやて。


「でもまっさかしえと出雲ちゃんと出かけることが出来るなんて思っとらんかったわ」
「別に、…たまたま新しく出来たカフェが出来たのを見つけただけよ!」
「ふふ、それでも誘ってくれて嬉しかったわ。な?しえ」
「うんっ!こういう所、滅多に来ないから」


出雲ちゃんからお誘いを受けて向かった先は、私が行こうか迷ってた新しいカフェ。
彼女も偶然見つけてずっと行ってみたかったんやて。せやけど、こういう所って1人で行くの勇気いるやん?でも行きたい気持ちが強くて、私達を誘ってくれたんやって。
朴さんも誘ったらしいんやけど、残念ながら今日はなんや用事があるらしくてダメだったみたい。今度は4人で来てみたいなー…朴さんとももっと仲良くしたいんやもん。

でも正十字学園に入学してもうすぐ半年経つけど、しえや出雲ちゃんとプライベートで出かけるんは初めてかも。皆でショッピングや遊園地は行ったけど、3人っちゅーのはなかったもんね。
女の子の友達ってあんまり作らんかったから、こういうのええなぁ。楽しい!


「…此処、ケーキが美味しいんですって。あんた達も頼むでしょ?」
「うっわぁ…!本当だ、すごい美味しそう!迷っちゃうなぁ…」
「種類も豊富なんやねぇ…あ、2人はお昼食べた?」
「私はまだ食べてないよ」
「食べてないわ。そういう神楽は食べたの?」
「ううん、私もまだなんよ…ほら、ランチセットでデザート付っちゅーのもあるで?これにせぇへん?」


私が指差したランチセットはパスタ、グラタン、オムライスの中から好きなんを選べるやつ。ドリンクとサラダもセットみたいやね。
ほんで更にデザートも付くみたいで、そのデザートがまたすごいんよ!あの、イギリス?のティータイムで出てくるようなやつやねん!
たくさんある中から3種類まで選べるらしくて、これならどれにしよ〜って悩んでた私達にもピッタリや。
どう?と2人に問い掛けてみれば、目をめっちゃキラキラさせて頷いてくれはった。ほんなら、このランチセット3つで決定やな。ランチはどれにしよかな〜。


「んん〜…パスタかオムライスで悩む…」
「それなら私がパスタにしてあげるから、あんたはオムライスにしたら?一口あげるわ」
「ほんま?なら、私のもあげる!」
「じゃあ、私はグラタンにしようかな。皆で分けっこしようよ!」
「あ、それええな」
「…いいんじゃない?好きにしたら」


デザートも全員違うもんを選んで、これもまた一口ずつ交換することになった。
こういう風に分け合えるんも女友達と一緒の楽しみ、だったりするんよね。やって、タツ達と来たらこないなことにはならへんもん。
…あ、でもたまにタツはさっきの出雲ちゃんみたいに、悩んでた片方を頼んでくれたりするなぁ。んで一口くれんねん。

その光景をふと思い出して、口元が綻んだのが自分でもわかった。頬づえをしていた手で口元を隠してたつもりやったんやけど、それは私の勘違い。
向かいに座るしえと、隣に座る出雲ちゃんにしっかりと見られとった。
でも2人の反応は真逆でおもろい。やって、しえはケーキ見とった時のようにキラキラした瞳しとって、出雲ちゃんはなんちゅーか…呆れた笑み?を浮かべとんのやもん。どっからどう見ても真逆やろ?


「神楽ちゃん、今、勝呂くんのこと考えてた?」
「………え、」
「あんたがそういう柔らかい笑み浮かべてる時に考えてるのって、大体あのゴリラのことでしょ?わかりやすいのよ」
「ゴ、ゴリラて…」


思わず苦笑が漏れる。そういや、塾が始まった時もそんな風に呼んどったっけ。
…てか、ツッコミ所はそこと違て!何で2人は私がタツのこと考えとった、てわかったん?!知らん間に口に出しとったんやろか…!


「口には出してないわよ。…言ったでしょ?わかりやすいんだ、って」
「えええ…こう見えても、結構ポーカーフェイスなんやけど…」
「いつでもわかりやすいわけじゃないよ?神楽ちゃんは隠し事、上手だと思うし」
「そうね、…痛みとか辛いとか苦しいとか、そういうのばっかり隠すの上手くなっちゃって。へらっと笑ってれば済む、って思ってんでしょ?」


…あかん。出雲ちゃんの言うこと、否定出来ん。


「私達、神楽ちゃんと付き合いがそこまで長いわけじゃないけど…何て言うのかな、女の子の勘?って言うのかなぁ…」
「あんたのその柔らかい笑みは、大体、あの男に向いてんのよ。少し注意深く見てればピンとくるわ」
「そんなわかりやすかったやろか…」


ランチのサラダやメインが運ばれてきた後も、尚、話は続く。あ、ご飯もしっかり食べながらなー。
でも何やこそばいなぁ。こないな話、誰ともしたことあらへんもん。…クラスの子らが楽しそうに恋バナゆうんをしてるのを聞いたことはあったけど、まさか自分がする側になるとは思わへんかった。
もごもごと美味しいオムライスを頬張りながら、そんなことを考えとった。


「「で?」」
「…へ?で、て…なに?」
「とぼけんじゃないわよ!いつからあの男と付き合ってんの?」
「あとあとっ!勝呂くんのどこが好き?!」


思いもよらぬ2人の爆弾発言に思わず、噎せてしもた。


「わっ大丈夫?神楽ちゃん!!」
「何よ、そんなに驚くこと?」
「ゲホッ…めっちゃ驚くわ!何がどうなったら私とタツが付きおうてる、て結論になりますのん?!」
「えっ違うの?」
「違うわ…」
「あんだけいっつもべたべたしてて付き合ってないの?!」


そないにべたべたしてた記憶もないんやけども、…どうやら2人にはそう見えとったようで…絶対に付き合ってる!て思っとったんやて。
あー…塾でしか会わん2人にそう見えとるっちゅーことは、クラスの子らも勘違いしとる人達がおるっちゅーことよねぇ?
…別に、私自身はどう思われよとあんまり気にせぇへんけど…タツは困るよな。私なんかと噂になってしもたら。せやけど、付きおうてない!てわざわざ言いふらすようなことでもないし〜…!
てか、そないなこと言うたらきっと逆に誤解されてまうような気がせんでもない。


「…けど、神楽があいつのこと好きなのは本当よね?」
「あー、うー…お、ん。それは合っとる…」
「告白しないの?きっと両思いだよ?勝呂くんと神楽ちゃん」
「ちょ、杜山しえみ!!」
「え?神木さんだって私と同じ考えじゃない?」
「そ、れは…思ったことがないわけじゃ、ないけど…」
「私とタツが両思い、なぁ…」


そんなわけないとは思うけど、でも、意外と鋭い観察眼を持っとる2人の言うことやし、ちょお期待したい…とか、思ってまう。いや、きっとしえと出雲ちゃんの勘違いやろうけどな!
そう思っとかんとほんまに身が持たんわ…。

あー…もう、ほんまあかん。んなこと考えながらご飯食べとったら、これ、タツにも食べさしてあげたいとか…思ってしもた。
これは今度、タツを誘って来てみるしかあらへんかなぁ。2人で出かけるいい理由に、なるやろし。
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