たった1人のヒーロー
誰にでも憧れの存在っていうのいるはずで、もちろん私にもいる。…いた、て方が正しいんかな…でも今でも密かに憧れてる存在であるのは確か。
…うん。過去形ではないな、現在進行形や。
憧れるんはテレビの特撮ヒーローやったり、両親やったり、兄妹やったり、親戚の人やったら様々やろうね。せやけど、やっぱ多いんは特撮ヒーローなんやろか?特に男の子達は。
タツや廉、ねこからは聞いたことあらへんけど(あんまりテレビを見てなかったんもあるけど)、あの子らもそういうんに憧れてたことがあったんやろか。
でもタツはおじ様やったり、するんかもしれん。ちっさい頃、あのお人の経を聞くんが大好きで、私もよう一緒にお寺に連れてもろてた。
私はすーぐ眠くなってうとうとしてしもたけど、あのお人は最初から最後まで背筋ピンと伸ばして聞いとったなぁ…すごい、て思った記憶がある。
あん頃から集中力はすごかったんやと思う。廉とは大違いやった。
そういう所にも、憧れとったんかなぁ…今思えば。
せや。私の憧れは…タツのこと。
何に関しても真っ直ぐで、真面目で、頑張り屋で、責任感も、正義感も強い子。
まぁ、確かに目つきはようないし、今では不良みたいな見た目しとるけど誰よりも優しいねん。
いつだって私の手ェを引いて、守ってくれるあの後ろ姿が…ごっつカッコ良かったんよ。
『"忌み子"やからなんや!神楽がお前らに何をしたいうんや!!こいつ泣かしよったら俺が許さへんえ!』
近所の子らに「忌み子や」って苛められとると、誰よりも早くその子らを蹴散らしてくれて、ずーっと傍にいてくれた。
ふふ。でもそれは今でも変わっとらんね…いつだって、私のことを考えてくれとるもん。もう子供やないんやけどねぇ?
両親を亡くして、親戚にも疎まれて身寄りがおらん私の一番の味方でおってくれたタツは、ずーっと私のヒーローで、憧れの存在だ。
「(ほんまはこんな風に思ったらいかんお人なんやけどねー…)」
「神楽!」
「あ、お疲れさん。委員会終わったん?」
「おん。待たせてすまんな」
「だいじょーぶ!昔のこと思い出しとったらすぐやった」
「昔?」
「そ。タツがいじめっ子から守ってくれた時のことや」
カバンを持って立ち上がりながらそう言えば、そん時のことを思い出したんか「あー…」て言いながら、複雑そうな顔。
そないに嫌な思い出なんやろか?でもそれはどっちかっちゅーと、タツより私の方やんな。一応、当事者やし。
「今、思い出しても腹立つわあいつら…」
「…何で当の本人より、アンタの方が怒ってるのかわからん…」
「お前ももーちょい怒ってええことやろが!あん時かてあんま怒らんかったし」
…あぁ、そないなこと気にしとったんか。せやかて、
「タツや廉、ねこがごっつ怒って言い返してくれたやろ?せやから、何やそれでえーかと思ってしもて」
「はぁ?」
「3人が私の分も怒ってくれはったから、せやから怒らんかったっちゅーことや」
「…なんやそれ…」
やって私が言いたい、て思ってたことぜーんぶ言ってくれたんやもん。私まで怒る必要なくなってしまうやろ?
まぁ、タツは納得いかんのかまだ難し顔しとるけどね。
…でもな?私が今こうやって元気に笑っとれんのも、タツ達がいてくれたからなんよ?
あの時、タツ達が私の代わりに怒ってくれたりしとらんかったら…今頃、父様や母様の所へ行ってたかもしれんのやから。
それをせずに済んだんは…やっぱりアンタらが傍にいてくれたから。私はそう思っとる。
「神楽?」
「タツは、…私のヒーローや」
「!」
「いつだって飛んで来てくれて、私を…絶対に守ってくれる。世界で一等カッコいいヒーローなんよ」
「おま、…!」
「ふふ、先に下行ってんでー」
ごっつ恥ずかしいけど、でも、言うたことに後悔はしてない。
やってほんまのことやもん。
ヒーローだって思っとることも、世界で一等カッコいいて思っとることも…全部、嘘偽りないほんまのことやから。