胃袋を掴まれる?
お腹が空いて授業に集中しきれん4時間目。
終了のチャイムと共に生徒は一斉に購買へとダッシュする。本日の昼食を確保する為に。
寮住まいである私もその競争に加わるのが常なんやけど、まぁ時には参加出来ん時もあるわけで。授業が長引いた時とか、先生に用事を頼まれてしもた時とか、理由は様々やけど。
こん学園の購買はめっちゃ混むんや。せやから、授業が終わるのと同時くらいに教室を出んとアウトー!っちゅうことはぎょーさんある。
…そして今日。私は購買競争に負けました。
先生に頼まれた用事を済ませて、慌てて購買に向かったんやけど遅かった。完全に出遅れてしもて、残っていたのは飲み物のみやった。
しゃーないのでパックのオレンジジュースだけ買って(お気に入りのいちごみるくも売り切れとった)、お昼を食べているであろうタツ達がいる中庭へと足を向けた。…それにしても、今日のお昼ご飯どないしよ。
「あ、お嬢ー!こっちですよー」
「…あれ?神楽さん、購買にお昼買いに行ってたんやないんですか?」
「そうやったんやけど、…途中で先生に用事頼まれてしもて、飲み物以外みーんな売り切れとった…」
「お前がいちごみるく以外を飲んどるなんて珍しな」
「それも売り切れとったんよー…」
うう、お腹空いた〜…さすがに学食食べるほど、お金持っとらんしなぁ。
「ならこれ食うか?昨日の残りもん詰めただけだけど…」
「へ?せ、せやけどそれ、誰かに渡すお弁当なんやないの?」
燐くんは燐くんでお弁当食べてはるし、他の誰かの分て考えるんが自然よね?
何も買えんかった私にとって有難い申し出ではあるんやけど、誰かに渡すはずのお弁当をもらうわけにもいかんし。
「雪男の分だったんだけど、アイツ、急に任務入っちまったらしくてさ〜…残すのももったいねぇし、神楽が食ってくれよ!」
ほら、遠慮すんな!
にかっと笑って半ば押し付けられるように渡されたお弁当を開けば、昨日の残り物とは思えんような中身でした。わ、美味しそう…!
そういえば、燐くんて料理上手なんやったっけ。いつぞや食べたカレーも美味しかったんよねぇ。
「美味しい…!」
「そりゃ良かった。あ、この卵焼きも食うか?だし巻きだぜ!」
「食べる!」
ん、と差し出された美味しそうな卵焼きにぱくりとかぶりつけば、なんや周りの空気がビシッと凍ったような気がした。
口ん中に卵焼きが入ったまんまやから喋るわけにもいかず、ん?と首を傾げてみれば、タツと廉は大きな溜息を吐いて、ねこは苦笑を浮かべとった。なしてお三方はこないな反応を示しとんのやろ。
「なんちゅーか、…ほんまお嬢って」
「無自覚な方ですねぇ」
「餌付けされた動物か、お前はっ!」
「へ?」
「はははっ!ほーんとお前ら面白いよなぁ」
「笑いごとやないぞ奥村ぁ!!」
追いかけっこを始めてしもたタツと燐くんを眺めながら、味の染みた煮物を口に含む。んー、これも美味しいわー。
「神楽さん、神楽さん。さっきみたいなこと、他の人にしたらあきまへんえ?」
「なんで?」
「わかってへんなぁ、お嬢。お嬢は人気あるんでっせ?さっきは相手が奥村くんやったから良かったですけど、あれが他の人やったらお嬢は喰われてますから!」
「何で志摩さんが言うとソッチの話になるんやろか…でもまぁ、大方合ってはりますけど。つまり、僕達が言いたいんはもう少し自覚を持ってくださいっちゅーことなんです」
ねこの言いたいことはわかったけど、私は2人が言うように人気があるわけやないし、そないな物好きなんておらへんやろーと思っとんのやけどなぁ。
ボソリ、とそう呟けば、今度はねこまで大きな溜息をついてしもた。えええ…?
「…まぁ、俺らが気を付けてればとりあえずは平気なんちゃう?子猫さん」
「そうやね、…ほんま難儀なお人や」
(胃袋を掴むのが有効、てよう聞くけど、案外間違っとらん気がするなぁ…)
(あー、料理って大事だよなぁ)
(((?!!)))