所謂、危機
体力には自信があった。せやけど、燐くんの体力にはやっぱり敵わん…!
ほんまに体力宇宙なんちゃうの?!ちゅーか、これって悪魔の血ぃが半分入ってるからなんやろか?確か力も普通の人より強い、とか何とか前に言ってはったような気がする。…まぁ、そんなこと今はどうでもええんやけどね!
しばし山を駆け上って、少しだけ拓けた場所に出た。木々もさっきまでの道よりは生い茂ってへんね…此処が雪くんの言うとった山の中腹辺りなんやろか?でもそないに登ってきたような感覚はあらへんけど…。
「雪男が言ってたのってここら辺か?さっきまでのとこよりは戦いやすそうだけど」
「せやねぇ…けど、こん山って結構大きかったやんな?それにしてはあんまり登った気がせんのやけど」
「だよな。ってことはもっと上ってことなのか?」
「かもしれんけど…」
どないしよ。もっと先に進むべきなんか、此処で待機するべきなんか…雪くん達に指示を仰ぐにしても、彼らにはこの場所がわからんわけやしどうしよもないよなぁ。
まぁ、中腹辺りって言うとったけど、必ずしもそこに下級悪魔が出るわけやないんやけどな…そこらで食い止めぇっちゅーことで。
せやけど、逆に言えば―――あんまり麓に近い所で待機しとると、もし万が一にも逃がしてしもた場合…被害が広がってしまう恐れがあるっちゅーこと。
…それを考えると、もう少しだけ上を目指した方が良さそうや。
「燐くん、もーちょい上いこ。その方が被害が広がる恐れは少なくなる」
「おー…って、神楽、後ろっ!!」
燐くんの焦った声に視線を後ろへ向ければ、そこにおったのは―――魍魎の群れ。
ははっ確かに雪くんが言ってた通り…下級悪魔を召喚するんやね!
そないに危険がある悪魔やあらへんけど、群れになっとるとちぃと質が悪いんよなぁ…すぐさま刀を抜いて一閃振るえば、群れは姿を消した。
んー…せやけど、魍魎て腐の眷属やったよなぁ?ってことは頂上におるんも腐の眷属の悪魔っちゅーことなんやろか?
そんなことを考えさせてくれる間もなく、次々と現れる悪魔。
ああ、もう!少しは考える時間くらい与えてくれたってええやろが!頂上におる悪魔を祓いに行くわけやないけれども!
「次から次へと湧いてきよるなぁ…!やっぱり元を絶たんとどうにもならんっちゅーことか」
「みてーだ、なっ!」
でっかいのが出てきてないのが唯一の救いやけど、ずーっと相手しとるんもなかなかに疲れるんやで?
トン、と当ったのは恐らく燐くんの背中。そこに少しだけ体重を預けてそっと息を吐く。皆んとこもこないな大群に襲われとるんやろか?なーんて、人の心配しとる場合やないっちゅーのはよーくわかっとんのやけどねぇ。
せやけど、やっぱり大切な仲間で友達やし?気になってまうんや。
「皆、大丈夫だろ!連絡も入ってねーしさ」
「まぁ極論言うとそうやなぁ…」
「俺達は俺達で出来ることしようぜ!な?」
「……ほんま、普段は突っ走るだけのお人やのに、こういう時は心強いなぁ」
「こういう時はって何だよ、こういう時はって!!」
うがー!って燐くんが怒り始めた。そこに屍の大群が突っ込んで来よったんやけど、燐くんが青い炎を纏った降魔剣を薙げば、一気に霧散する。
ほー。やっぱりすごいねんなぁ、青い炎って。…よし、私も負けてられん!もっと気張らなあかんね。
グッと刀を握り直して前を見据えた瞬間。後ろから木々が薙ぎ倒されるような、大きな音が聞こえた。今度は何が来よったんや―――と後ろを向いたこと、一瞬で後悔した。
やって、そこにおったんは大きな大きな、屍のような物体。
いや、生き物…悪魔、なんか?
不浄王よりは確実にちっさい。ちっさいけど、私らよりはかなりでかい。それが木々を踏み倒し、一歩、また一歩と…私らの方へと向かって来とった。
「あれ、も、悪魔か…?!」
「恐らくはな…ちゅーか、あれも下級悪魔なんか?」
それにしてはえらい上の方から降りて来とる感じがするけどな。でもまぁ、こっちに来てはるんなら相手するしかない…麓へ行かすわけには、いかへんもん。
燐くんと2人で刀を構えれば、ガガッと何かノイズ音が耳に響く。んん?もしかしてこれ、通信か?
試しにマイクに向かって「はい」と答えてみれば、えらい焦った雪くんらしき人の声が聞こえてきた。
『緊急事態です…すみません、僕達が相手していた悪魔が麓へ向かって歩き始めました!通っているのは真ん中のけもの道です!!』
真ん中のけもの道を通ってきたんは、そこで悪魔を相手にしとるんは、…私と燐くん。
「嘘、やろ…あのでかさで中級悪魔や言うんか?!」
でっかい悪魔が私達のいる場所に辿り着くまで、あと何分―――――?