疲労困憊


頭痛い。腕痛い。体重い。


「ちょーねみぃ…」
「神楽、起きたなら朝食食べに…って、アンタ大丈夫?」
「眠そうだね、まだ寝てる?」


昨日任務は全て終了したらしく、私達、候補生は今日・明日とお休みを頂いてる。帰るまで好きにしてて構わないんやって。
せやから、無理に起きんでもええんやけど…これ、今起きんかったら私1日寝たまんまな気ィすんねん。それはいくら何でもマズイよって。


「起きる、…朝ご飯やっけ?」
「ええ。朝はバイキングですって。好きなもの食べていいらしいわよ?」


出雲ちゃん曰く、和洋中、何でも揃ってるらしい。
そらまたすっごいなぁ…昨日の夕ご飯もえらい豪勢やったけど、朝から中華が出るってどないやねん。てか、食う人おるんかいな……と、思ったけど、燐くん辺りが食べてそうだなー。あとシュラ先生。
重い体を無理矢理起こして、旅行鞄の中から適当にシャツとパンツを引っ張り出して着替える。短パンやけど、まぁええでしょ。このくらいならだーれも文句言わへんやろし…ちゅーか、浴衣のまま行くよりはマシやと思うねん。

あー…でもほんま体おっもいし、ごっつ眠い。こないに眠いの初めてやねんけど。ちゅーか、ちゃんと寝たはずなんにこのひっどい眠気はなんなんよ。
やっぱり大人しく寝ておくべきやったやろか…食堂に来たはええけど、ちっとも食欲わかへん。美味しそうなご飯がぎょーさん並んどるのに、食べたいと思わんわ。どないしよ…飲み物だけってもらえるんかな?


「すんません、飲み物って…」
「飲み物でしたらあちらにありますよ。少しお待ち頂ければ、冷たいものをご用意致しますが…」
「あー…ほんならお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました。何に致しますか?」
「オレンジ、でお願いします」


さってと、何や食べれそうにないしこのまま座ってようかな…空いとる席はー、と。
飲み物片手にキョロキョロしてると、後ろから元気な声で名前を呼ばれた。はは、朝っぱらから元気やなぁ?あの子は。


「おーっす!神楽ー!こっちで一緒に食おうぜっ」
「おはようさん。男子は全員早いなぁ」
「志摩さんと奥村くんはついさっき起きたとこですけどね。…あれ、神楽さんご飯食わんのですか?」
「んー…何や食欲ないんよ。飲み物だけもらってきた」


私の定位置であるタツの隣に座って飲み物に口をつければ、隣から少しでもええから食えや、と小突かれた。うー…わかってはいるんやけど、食べたないんやもん。
好きなものを取ってきたらしいしえと出雲ちゃんもやって来て、向かいに腰を下ろし、さっきのねこのように私の手元を見て少しだけ目を丸くした。そして出雲ちゃんはキッと鋭くこっちを睨むんは止めてください怖いです。


「ちょっと神楽!何でアンタ飲み物だけなのよ!」
「そうだよ、ちゃんと食べないと…」
「いや、あの、うん…ちょお食欲なくて」
「なくても食べないとダメに決まってんでしょ?!少しくらい胃に―――」

―――コトン、

「…へ?」
「果物のヨーグルトかけ。シンプルだけど、これなら食欲なくても食えんじゃね?」
「えーと、…おおきに?」


何で疑問形!ってゲラゲラ笑っとる燐くんを尻目に、わざわざよそってきてくれたフルーツを口に運ぶ。食べれん、と思ってたんやけど…うん、これなら全部食べれそうかも。
黙々と食べてると、皆もホッとした顔をして自分の分をまた食べ始めた。…何やろ、なんちゅーか…あ、あれや。おとんとおかんがぎょーさんいるような錯覚に陥るな。

朝ご飯を食べ終わった後、皆は暇やからっちゅー理由で出かけていった。
ほんまは私も誘われてたんやけど…えっらい眠気でなぁ。この状態で外出てったら絶対にマズイ気がしたから断ってん。しえと出雲ちゃんが心配して残ろうか、って言うてくれたけど…せっかくの時間やもん。私のせいで旅館に缶詰にさすんは申し訳ないからね。


―――ぼすんっ

「あかん…ほんまいだるい、」


せっかく片づけてもろた布団をこないに短時間で引っ張り出すのは、なんや忍びなくて…枕だけ出してそのまま寝転んだ。
んー…やっぱり畳に寝転ぶんは気持ちええなぁ。
ゆるゆると瞼が重くなってきた時、ノック音が聞こえたような気がした。あれ…皆は出かけとるはずやし、雪くんやシュラ先生は昨日の任務の後処理がある、て言うてたから出かけてるんやなかったっけ…?一体、誰やろ。
ぼんやりとする頭でドアを開ければ、そこには出かけたはずのタツがおった。え、何でおるん?


「タツ…?」
「…心配やったから戻ってきた。入ってええか?」
「おん、どーぞ」


タツやったら少しくらいだらしない姿見せても問題あらへんかなー。いや、いっつもは誰が来ても気を付けるようにはしてんで?せやけど、今はほんま頭働いとらんし、だるいし、眠くてしゃーないねん。
申し訳ないけど、行儀とか気にしとれん。
お茶とかは適当に飲んで、とだけ言うてから、私はさっきまで寝転がっていた場所に横になる。もう少しだけ寝たら体調、良くなるやろか…。
そっと目を瞑れば、ふわりと頭を撫でられる感触。ゆっくり、そして優しく撫でられるんは気持ち良くて、余計に眠気を誘う。んー…これ、気持ち良く眠れそう。


「眠いんなら寝とき。あとで起こしたるさかい」
「ん、…どこにも、行かん?」
「行かん。此処におったるから…安心しぃ」


その言葉に安心して、私はようやく意識を手放した。


「…よう頑張ったな、神楽。今はゆっくり休みや」
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