いつだって唐突に
時間が経つのはあっちゅー間で、なんや色々あったけど私達は全員無事に3年に進級できたんよ。燐くんなんかほんま危なくてなー…そらもう、雪くんとタツと私でめっちゃ必死で彼に勉強教えたんです。それも2年連続で。
なのに、当の本人は意外と…っちゅーか、いつも通り楽観的やったから3人揃ってキレてしもたんよねー…あはは、それもすでに懐かしゅうてしゃあないわ。
それと志望称号もそれぞれ取得できて、学生と祓魔師の二足のわらじで皆頑張ってたりする。
まぁ、それでもまだ任務は少ない方やと思うけどね?
ほんで、気が付いてみれば卒業までもう2ヶ月をきっていた。
「もうすぐ卒業だねぇ…」
「そうやなぁ。なんやあっちゅー間やったわ」
「色々あったけどね。今度のテストが終わったら自由登校だし、任務も増えそうだわ」
「あー…それは確かになぁ」
バラバラになる前に皆で出かけられたら、て思っとったけど…忙しくなりそうな予感しかせえへん。
出雲ちゃんの言う通り、もうすぐ最後のテストがあってそれが終われば授業ものうなるし、自由登校でええねんて。大学に進学する人はまだ受験が残ってたりするし、学校に来て勉強したりするみたいやね。図書室も自由に出入りしてええみたいやし。
けど、私達は祓魔師になるんが目標で、高校を卒業したら大体のメンバーが正十字騎士団に所属する予定みたい。しえは家の手伝いをしつつ、て言うてたかな?確か。
大学進学して、勉強しながら祓魔師の任務こなすことも考えたけど…特にやりたいことがあるわけでもないしなぁ。しいて言うんならまだ騎士と詠唱騎士の称号しか取ってないから、早めに竜騎士も取っておきたい。
卒業前に全部取る予定やったんやけど、竜騎士だけ試験に落ちてしもてん…何気にショックやったわ。
雪くんやタツにそう愚痴ったら、2つ取れれば大したもんやろ、て苦笑されてしもた。
「あ、いた。神楽さん!」
「へぁ?雪くん?」
「どうしたの?雪ちゃん」
「ちょっと神楽さんに用事があって…借りてもいい?」
「あぁ、はい。話していただけなので」
一緒に来て、という雪くんに大人しく着いていくと。辿り着いたのはまさかの学園長の部屋。
思わず固まってしもた私を見て雪くんは苦笑しとるけど、ごめん、笑い事やないねんけど…!ただでさえ胡散臭いお人やなー、て思ってたのに、私が烈華と真の契約を結んだきっかけのあの任務があった日から、信用とか信頼とかそういうのがガタ落ちしとんねん!出来れば一切関わりたくないっちゅーのが本音です。
やって何を考えとんのかさっぱりなんやもん!!表情や行動から意図が一切読めんから、どうしたらええのかわからんの。
めっちゃ逃げ出したい。めっちゃ帰りたい。
…せやけど、雪くんが私を此処に連れてきたのは学園長直々に私達を呼び出したかららしくて…うん、逃げられん雰囲気やね。
ちゅーか、逃げたら満面の笑みでブリザード吹かせた雪くんに追いかけられそ…。
これはもう覚悟を決めて入るしかないか。話するだけみたいやし、それに雪くんも一緒やから…まぁ、何とかなるやろ。
―――コンコンッ
「フェレス卿、失礼します」
初めて入った学園長の部屋はえらいだだっ広かった。
え、校長室みたいなんを想像しとったんやけど…それよりも何十倍も広い部屋やんけ。想像をはるかに超えとって、どないな反応したらええかわからんくなってきたわ。
…やっぱりお金持ち学校やから、学園長の部屋もそれに比例すんのかいな。
「ようこそ、お2人共。正直、佐伯さんは来られないかと思っていましたが…」
「(ギクッ)」
「ふふ、その反応を見ると…アナタ、逃げようとしてましたね?」
「はぁ…フェレス卿、神楽さんで遊ばないでください。それでお話とは?」
「ああ、そうでしたね。私としたことが忘れる所でした!」
座っている椅子ごとくるん、と回ったかと思えば、えらい真剣な表情で私達を見つめる学園長に自然と背筋が伸びた。
なんやわからんけど、緊張…してきてしもた。何を言われるんか全く予想が出来んから、尚更かもしれん。
ドキドキしながら次の言葉を待っとれば、学園長が紡いだ言葉は―――
「奥村先生、そして佐伯さん。君達、4月からヴァチカンに行く気はありませんか?」
予想以上の破壊力を持ってはりました。
「…は?ヴァチ、カン…?」
「はい。実はお2人に本部から研修の要請が来ておりましてね?いやあ、本部から直々に要請が来るなんて素晴らしいことですよ!」
「ちょ、ちょお待ってください!ゆき、…やのうて、奥村先生に本部から要請が来るんはわかりますけれども、何で私まで…!」
「おや、アナタの成長は目ざましいものがありますよ?訓練生の時に使い魔にしたあの悪魔といい、その後の任務での働きも素晴らしかったですからね…そこが認められたんです」
返事は卒業式までにもらえれば大丈夫です。色よい返事…期待してますよ?
学園長の部屋を出た後、雪くんとどんな言葉を交わしたのか。どうやって寮の自分の部屋まで帰ってきたのか。帰ってきた後何をしてたのか。
何一つ、思い出せんねん。
思い出せるんは、学園長の言葉だけ。あん言葉がずーっと頭ん中をぐるぐる回っとる。
返事は卒業式まで、かぁ…まだまだあるような気がするけど、けど…こうやって悩んでたらきっと、あっちゅー間に時間が経ってしまうんやろなぁ。
ほんま、どないしたらええんやろ。
あのお人を、タツを守るて決めたあの日から私の将来は決まってるようなもんやった。祓魔師になって、京都の出張所で働いて、お寺を立て直す言うてたタツの手助けをするつもりでおったのに…そう決めてた、はずやったのに。
「(何でこないに悩んでんの…私)」
ああ、もう。ぐるぐる回りよるし、気持ちは揺らぎ始めとるし、…ほんま、どないしたらええかわからへんよ。