そのままの君


会えない、って諦めてた。
本当はすっごくすっごく会いたいけど、でも。見知らぬ地で頑張ってる2人を思うと、帰ってきてなんて言えないよね。


 side:しえみ


燐が計画してくれた同窓会という名の飲み会。
任務で顔を合わせることもあるけど、京都へ帰ってしまった勝呂くん、志摩くん、三輪くんとはほとんど会うこともないまま3年の月日が経ってしまった。
だからね?こうやって全員が集まる場を設けてくれた燐には、言い表せないほどの感謝をしてるの。当然のように集まってくれた皆にも、だけど。
皆で昔話をしたり、近況を話したり聞いたりするのはとても楽しくて。いっぱいいっぱい笑えてるのに、それでもどこか淋しさが消えないんだ。2人にも会いたい、って思っちゃう。そんなこと考えちゃダメだっていうのもわかってはいるんだけど。

ヴァチカンへ研修に行っている雪ちゃんと神楽ちゃんにも、この飲み会の連絡をしてくれたらしいけど、まだ帰国できないから行けないって返信があったんだと燐は教えてくれた。
…そうだよね。急に言われても、帰国できるはずないよね。
そう諦めていたから、2人が姿を現した時は本当に本当にびっくりしたんだよ。だって来るはずがない、って思ってたんだから。
驚いてたのは私だけじゃない。電話で先に来ることを聞いていた燐以外は皆、驚いた表情してたもの。でもそれは仕方ないことだと思うんだよね、うん。

2人によると、研修期間はまだ残ってたんだけど無理矢理に任務やら研修やらを終わらせてきて、この帰国を許してもらったんだって。本当なら今年いっぱいはヴァチカンにいる予定だったらしくて。
でもまた延びそうだったけど、と疲れた顔で苦笑してたのは神楽ちゃん。


「学ぶことはたくさんあったし、充実しとったけど…あかん。私、絶対本部は合わんわ〜…」


誰とでも仲良くできそうな彼女だけど、実は人付き合いが好きなほうではなくて。だから私達とこうやって和やかに話したり、一緒に笑ったりしてるのは珍しいことなんだって、高校時代に三輪くんがこっそり教えてくれたのを思い出した。
あと、意外と好き嫌いがハッキリしてるってことも。
祓魔師の本部がどういう所なのかはわからないけれど、きっと神楽ちゃんにはそりが合わない人がいたんだろうなぁ。だから合わない、って零したんだろうし。

会えて嬉しいのは本当なんだけど、1つだけ疑問がある。どうして予定を詰め込んで、無理をしてまで帰国することにしたのかってこと。
いくら合わないとは言っても、そんなことで放り投げるような人達だとは思ってないし、絶対にしないと思う。だからこそ、余計に気になってしまった。
素直に問いかけてみると、


「あー…連絡もろたら、皆に会いたくなってん。せやから、ちょお無理してみた」


恥ずかしそうに教えてくれた神楽ちゃんがすっごく可愛くて、思いっきり抱きついた。
困惑した声が聞こえたけど、でもすぐに楽しそうな笑い声に変わって。離れようとしない私の背中を優しく叩いて、そしてぎゅーっと同じように抱きしめ返してくれたの。こういう優しい所…変わってないなぁ。


「それにしても…神楽、大人っぽくなったなぁ!」
「兄さん、それセクハラ…」
「何よ。それじゃあ、前の私は子供っぽいみたいやんかぁ」
「そういうわけじゃねーけど!なんつーか、」
「綺麗になった、て言いたいんでしょ?奥村くん」
「そう、それ!ナイス、志摩!」


高校時代の神楽ちゃんも綺麗で美人さんだったけど、今の彼女は志摩くんと燐が言う通り、もっと綺麗になったんです。
でも皆と話してる姿や、楽しそうに笑ってる姿、燐や志摩くんにツッコミをいれている姿は…あの頃のままだ。私の知ってる、大好きな神楽ちゃんのままでこっそり安心したんだよ。
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