同窓会という名の飲み会


3年。そう、私が日本を発ってもう3年の月日が経過していた。
短いように思えて、とても長い時間で…ほんまは皆に会うまで、どんな反応されるのか心配でしゃあなかったんよ。やって、連絡もせんかったし、休みをもらって日本に帰ってくるってこともせんかったから。
…まぁ、正直忙しすぎてそんな暇がなかったんやけども。
皆かて立派な祓魔師になっとるし、任務やら何やらで忙しい日々を送っとるやろうから私のことなんて気にもせんかったやろなー、とも思うんやけど…やっぱりちょっとだけ、怖かったんや。
けど、そないなことは全然なくて。皆、びっくりはしてはったけど、笑顔で「久しぶり」とか「おかえり」て言うてくれて…胸の奥がじんわりと熱ぅなったんは、私だけの秘密。
不変なものがこないにも嬉しいものだなんて、考えた事もなかった。


「タツ、お隣座らせて」
「おん」


感動的(?)な再会を済ませ、自然と私の足はタツの隣へと向く。席なんて仰山あるけど、クセなんかなぁ…必ずこのお人の隣に行ってまう。それはもうちっさい頃からずーっと変わっとらん。
ちゃう、嘘や。クセやのうて、…私が隣にいたいだけなんや。
腰を下ろしてそっと隣に座る彼の顔を盗み見れば、あん頃より大人びた顔立ちに自然と胸が高鳴る。昔からカッコいい、と思っとったけど…もっとカッコ良くなっとるんやもん。好きな人、なんやし…ドキッとするんは当然のことやろ?


「雪男、神楽、お前ら何飲む?」
「んー…僕はスクリュードライバーにしようかな」
「ほんなら、私ウーロン茶ー」


そう言うたら皆して「え?飲めないの?」って疑問の視線を投げられた。うん、その疑問はもっともやと思うんやけど…とりあえず曖昧な笑みを浮かべておいた。
やって、説明せんでもそのうち理由がわかるから。

私らが頼んだ飲み物がきて、飲み会は再スタートです。
それにしても…3年の間にしえや出雲ちゃんはえらい美人さんになりはったなぁ…2人とも元々かいらしくて、綺麗な顔立ちしとったけど、それよりもっとや。
燐くん、廉、ねこも高校生ん時のあどけなさが抜けて、カッコ良くなった気ィするわ。さっき燐くんが言うとった大人っぽくなった、てこういうことなんやなぁってわかった。もちろん、昔が子供っぽかったっちゅーわけやないで?
当たり前の様に外見はこうやって変わっていくけど、それでも関係性が変わらんっちゅーのはすごいことなんよなぁ、きっと。ふふ、なんや安心したわ。


「…神楽さん、」
「あ、やっぱりダメやった?こっち飲み、まだ口つけとらんから」
「ん」
「飲めんのに強いお酒頼むからや。少しは学びや、雪」


彼からスクリュードライバーのグラスを受け取って、代わりにウーロン茶のグラスを渡す。
一口飲んでみれば、程良いアルコールが喉を通るけれどあまりお酒が得意ではない雪にとっては強かったみたいやね。良かった、ウーロン茶頼んでいて。
ウーロン茶を飲んでホッと息を吐いた雪を見て、こっちも安心した所で何や皆が静かになっとることに気ぃついた。あれ?と思ったら、何故か皆こっち向いて私と雪を凝視しとって…ちょっと驚いてしもた。何でこっちを驚いた表情でじーっと見とんのかなぁ、この子らは。
理由が全くわからんかったから、なん?と問いかけてみれば、即座に廉が「お嬢と若先生て付き合うとるの?!」って前のめりに聞いてきて、後頭部に鋭いツッコミをタツとねこから食らってた。…あれ、いたそ。
でも何をどう見て私と雪が付き合うとるのかも、て結論に辿り着いたんやろ?


「名前、」


ボソリ、と呟いた出雲ちゃんの言葉にようやく合点がいった。
そうか、そういうことか。高校時代は雪くん、て呼んでたのに、さっき彼のことを雪、て呼んだから…せやから廉はそないな結論を出したっちゅーわけかぁ。成程なぁ…まぁ、呼び方変わっとったら疑問にも思うか。
けど、皆が驚いとったんも廉が付き合うとるのかと思ったんもそれだけやないみたい。私が雪のことをよく理解しとるように見えたから、なんやて。お酒に弱いのを見越してウーロン茶を頼んどったから。


「あー…それは向こうで酔いつぶれた雪を見たから、やねぇ」
「え、そうなの?」
「まぁ…恥ずかしながら」


ヴァチカンで20歳の誕生日を迎えて、そのお祝いにーてお酒飲みに連れてってもろたんやけど…そん時に雪が見事に酔いつぶれてしもてな?もちろん、今まで未成年だったから飲む機会もなかったから、雪がお酒弱いだなんてこと知らんかったし。
めっちゃ大変だったわけでもないけど、少しだけ大変で、それ以来あんまり飲ませんようにしとるっちゅーわけです。本人も気を付けてはくれとるけど、1杯くらいは飲みたいらしく、今日みたいに頼んでみては一口でダメ、っちゅーことが多いんや。
それが何度かあったから、自然と雪がお酒を頼んだ時はソフトドリンクを頼む癖がついた。

せやから、別に付き合うとるとか、そういう理由やないねんよ。呼び方が変わったんも、向こうでずっとコンビ組んどったから…なんや自然にこうなったっちゅーのが正しい。


「なんや若先生と神楽さんのコンビってすごそうですね。強そうや」
「まぁ、私は前衛タイプで雪は後衛タイプやから、相性としては悪ないとは、思うけど」
「詠唱してもらう時は少し大変だったけれどね」
「じゃあ、ほんまに若先生とお嬢て付き合うとらんの?」


…廉。まだその話続いとったん?


「付き合ってませんよ。僕、振られましたしね」
「は?!」
「雪ちゃん、神楽ちゃんに告白したの?!」
「はい」


オイコラ雪。何でアンタは笑顔で爆弾落とすんよ…!皆、興味津々で質問ぶつけてきとるやないのー!!!
はぁ、…けど、言うてしもうたもんはしゃあないかぁ。告白されたんも、私が雪を振ったんもほんまのこと。1年くらい前、やったか。
よう気まずくならんかった、と思ったけど、後から聞いてみれば振られるのわかってて告白した、て言われたんよねー。雪ってほんますごいと思う。普通は振られんのわかってたら怖くて言えへんもん。
…ちゅーか、振られんのわかってたって…私の好きな人、知ってたっちゅーことやんな?それはそれでごっつ恥ずかしいわ…!!


「なんやぁ、今度こそ付き合うとるて思ったんに」
「だから何でお前はすぐそっちに繋げるんや、阿呆」
「せやかて気になりますやん?見た感じ、恋人同士みたいやったですしぃ」


相変わらず恋愛脳、なんやねぇ。内面が変わっとらんで安心したような、ちょお残念なような…複雑。
お酒を口に含みながらそっと隣に視線を向けると、えっらい渋い顔したタツがおった。機嫌が悪い、て感じではないけれど…けど、声は掛けづらい雰囲気やなぁ。色々と、話したいことあったんやけど。


久しぶりの再会に盛り上がりながら、夜は静かに更けていく。
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