変わらぬ毎日


ようやくタツとお付き合いというものを始めて1ヶ月。私達は毎日、忙しく走り回っていた。
ヴァチカンから日本に戻ってきて、私が配属されたのは京都出張所。まぁ、元々此処以外に所属するつもりなんてこれっぽっちもあらへんかったから、当然と言えば当然なんやけど。…けど、それをフェレス卿に言い渡されるまでやっぱり不安やってん。せっかく日本に戻ってこれたんに、また本部所属ですとか言われるんちゃうかって。もしくは全く違う支部に、とかな。
あ、でも京都出張所は騎士団所属やから、一応日本支部所属になんのかな。イマイチ仕組みを理解してへんのやけど。
まぁ、それはさておき。祓魔師になって3年、とはいえ、京都出張所の中では一番下っ端や。配属されたばっかりやしなー。せやから任務の他にも色々雑用もさせてもらってんねん。ちなみに直属の上司は柔にぃで、タツも同じ隊なんよー聞いた時はびっくりしたわ。
柔にぃは次期座主を部下にするなんて、て言うてたけど、肝心のタツは自分のが下なんやからこき使うたらええんやーって言うてんのよ。私からすれば彼らしい、と思うけど、柔にぃは冷や汗ダラダラで頭抱えとった。坊をこき使うなんて出来んー!やてさ。他の皆もやっぱり緊張してまうみたい…それに関しては堪忍、て困った笑みを浮かべとったっけ。


「神楽、これ二番隊へ届けてくれんか?そしたら昼休憩行ってきてええから」
「リョーカイしました、隊長」
「…お前さんに隊長って呼ばれるん、やっぱりこそばいなぁ」
「まだそんなこと言うてはるんですか?いくら言われても公私混同はしませんからね。ほんならいってきます」


隊長である柔にぃから書類の束…というより、タワーに近いものを受け取って二番隊へと足を進める。二番隊といえば金にぃがおる所やんなぁ、あのお人おるやろか。別に用事があるわけやあらへんけど、おるんなら挨拶しときたいし…なかなか顔合わす機会もなかったしなぁ。
ひょっこりと二番隊の部屋に顔を出せば、昼時のせいかほとんど人はおらん。まぁ、せやろなぁ…私かてお腹空いたから早く休憩行きたいもん。はてさて、隊長さんはー…っと、おった!


「すんません、志摩隊長からの届けもんです」
「おお、佐伯か。…って、こないな量を女の子に頼まんでも…」

―――ドサッ

「ええんですよ、力に自信はありますし、…それにこういうんは下っ端がやらなあきまへん!」
「理屈はそうなんやけどなぁ、…とにかくおおきに。休憩行ってき」
「はい。ほな、失礼します」


二番隊の部屋を出て、ようやく休憩やーと大きく伸びをしとったら、慣れ親しんだ声が耳に届いた。聞こえた方に視線を向ければ、そこにおったんは予想通りの3人で。自然と頬が緩むのを感じた。


「お嬢!昼飯食いに行きましょ」
「おん。4人揃ってお昼なんて久しぶりやね」
「ああ…言われてみればそうかもしれんな」
「最近は何処の隊も書類整理に追われてましたからね、しゃあないですよ」


そうなのだ。祓魔任務の数はそう多くはなかったのやけど、ねこの言う通り書類整理に追われとって、…お昼休憩が取れんのは全員バラバラやったんや。もしくは任務でおらんかったり。夕飯は時々一緒に食べてたけど、お昼はほとんど一緒できんかったんよねぇ。休憩、ちゅーても食べながら書類整理しとったくらいやから、まともな休憩自体久しぶりなんやと思うけど。私とタツは、ね。廉とねこは隊が違うからそこまではわからんけど、大体無理な時は携帯に連絡入ってたから。
ああ、でもやっぱり4人揃えるとホッとするっちゅーか…戻ってきたなぁ、て思うてしまんは何でなんやろ。昔からずーっと一緒やから、なんかねぇ?

さて!感傷に浸るのはこれくらいにして、お昼は何を食べようかな。午後もみっちり書類整理が待っているし、訓練にも参加せんといかんかったはずやから、…こう、ガッツリ食べたい気分。お肉とか。ボソリとそう言うと、3人揃って意外やって顔しよったんやけど…なに?私がお肉食べたいとか、ガッツリいきたいとか言うのそんなにおかしいんかな?お腹減ってるし、私、草食でもないんやけどなぁ。
むう、と頬を膨らませれば苦笑交じりの声で堪忍、と言われた。や、別に本気で怒ってるわけやあらへんけど…。


「お前がガッツリ肉食いたい、て言うの珍しいやろ?せやからつい」
「ええ?そやった…?」
「そうですよ。神楽さんてパスタとか、イタリアンを好むやないですか。それか和食」
「あんまり肉食いたい、て言わないですよ?お嬢って」


ねこと廉にそう言われて、いくつか思い当たる節があった。タツの家で育ったから和食中心の食生活やったし、高校に入学してからはしえや出雲ちゃん達と安いイタリアンのお店や、カフェに行くことも増えた。そのせいか、確かにイタリアンや和食が食べたい、て言うことが多かったかもしれん。…うん、お肉食べたいって言ったことあんまりあらへんかも。
そこまで考えてようやく3人が意外そうな顔をしたのに納得がいった。そら滅多に言わんかったらびっくりもするわな。


「さすがにステーキとか焼肉とか食いに行けへんから、定食屋さん行きます?焼肉定食とかありますよ〜」
「ほんなら行きつけのあのお店にしますか?あそこやったら坊も神楽さんもお気に入りでっしゃろ?」


ああ、あのお店か。確かに美味しくてお気に入りなんよね、定食の種類も豊富やし、デザートも結構あってよく行くお店。それに何より安いねん、量が多いのに。
此処からだと近いし、一番ええ選択かもしれんね。ねこ達の言葉に頷いて、私達は行きつけの定食屋さんへ向けて足を進めることにした。
歩いてる間は最近の仕事中の失敗談や、同僚や先輩方に聞いた面白い話、きっと傍から見ればどうでもええような話ばっかりやと思うんやけど、私達はいつものように大笑いしたり呆れたり。とにかく話も尽きんし、笑い声も途切れんのや。それはずっと、ずーっと昔から変わらんかった気ぃがする。いつだって4人でくだらない話をして、笑って、喧嘩して、仲直りして…そうやって過ごしてきた、生きてきたんや。


「あ、せや!坊、お嬢、子猫さんー今日残業なかったら飲みに行きましょーよ」
「なんや、えらい急やな」
「バタバタしとって、お嬢おかえりなさいのパーティーしてへんやんか?それしたいなぁ、て」
「そんなんええのに。ちゅーか、帰ってきた日は皆で飲んでたやないの」
「そうなんですけど、やっぱこの4人でやりたいやないですか〜!ねぇ、子猫さん!!」
「…まぁ、今回は志摩さんに賛成です。ちゃんとおかえりなさい、て言えてへんかったし…」
「そういうことなら俺も賛成や。神楽は?」


そないな言われ方されたら、…断れんやん。


「しゃあないから行ってあげてもええよ」
「さっすがお嬢!ほな、仕事終わったらそっちに迎えに行きますさかい。待っとってくださいね?」
「はいはい」


きっと明日も、その先も…今と何も変わらん毎日が待ってるんやと思う。少しずつ変わってく部分もあると思うけど。
…けどな?変わらん毎日もええもんやな、て思うんやで。大切な人達が傍にいて笑うてくれとる…それってえらい幸せなことやと思うから。
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