懐かしの京都観光
「へ?皆でこっち来るん?」
突然かかってきた燐くんからの電話。珍しなぁ、と思いながら出たら、奇跡的に全員の休みが被ったから京都に遊びに来るって言い出した。それ自体は嬉しいんやけど、…その、あまりに急すぎて私らの休みが取れるかわからんっちゅーこと。今から申請してもきっと却下されんのがオチやしなぁ。
でも燐くん達がこっちに来ることは決定事項らしく、休みが取れんでも夕飯くらいは一緒に食べようと約束してその日は電話を切った。ほんでタツ、廉、ねこに事情を説明したら3人とも目ん玉落ちるんとちゃう?ってくらいに大きく見開いて驚いとった。まぁ、驚くんも当然やんなぁ?やって、来るの明後日やで?普通に考えて私らの休みをもぎ取るんは無理な話やもん。
「っちゅーわけで、…私と勝呂くんのお休みを申請したいんですけど…」
それでもダメもとで申請はしますけどね。もちろん。
廉とねこも私らと同じく、隊長にお願いしてみるーて言うてたわ。きっと無理やけど、って全員言いながらな。燐くんには今度から前もって計画して頂けるよう言ってみよ…言っても無駄な気ぃするけどね。とりあえずは挑戦してみる。
そないなことを考えてたら、柔にぃの口から驚くべき言葉が飛び出した。
「ええよ、休んでもろて。ちゅーか、廉造も子猫もやけど…その日は元々、休みになってんで」
「へ?」
「何や、坊もシフト見てへんのですか?」
「見てへん…休みなんてほとんどないもんやと思ってたから、あんまり気にしてへんかった」
ガサガサとシフトを引っ張り出して見てみると、あらびっくり。確かに柔にぃの言う通り、燐くん達が来る日は休みになっとった。もちろんタツも。まー、ずいぶんとタイミングが良いことで。
2人して固まっとったら、苦笑しながら燐くんから頼まれたんや、と教えてくれた。
どういう意味かわからなくて詳しく話を聞いてみれば、1ヶ月くらい前に燐くんから連絡があったんやて。皆で京都観光しに行きたいから、私ら4人をまとめて休ませられる日はないかーって。ほんでそれぞれが属してる隊の隊長さんと相談して、この辺りなら書類整理などにも差し支えないだろうってことで休みにしてくれた…らしい。なんちゅーか、…燐くんの行動力がすごすぎて、開いた口が塞がらんわ。隣に立っとるタツもあんぐり口を開けて驚いとるし。きっと廉とねこも私らと同じような顔をしとんのやろなー。
ホッとしたけれども、燐くんは何でそのこと私に直接言わんかったのやろ…昨日の電話の時に言うてくれれば良かったのに。
「ああ、それはな?仮で、てあの子に伝えとったからやないかなぁ」
「そうなんですか?」
「おん。多分大丈夫やろう、とは思っとったけど、急に忙しくなることもあるさかい。確定出来んかったんや」
成程。つまり、燐くんもその日が確実に休みだとは聞いてないわけなんやね。そういうことなら後で休み取れたよ、て連絡しとかんと!きっと喜んでくれるんやろなぁ。
「ふふ、皆で遊べるの楽しみや」
「せやな。アイツらが京都に来るんも高校以来か」
「ああ、不浄王の時な。あん時もたくさん歩いたけど、けど今度は丸一日あるさかい…もっとたくさんの場所、案内できるの嬉しい」
「そういや、宿はどないするんやろな?決めてへん、てことはないと思うけど…」
タツの一言でそういえば、と思った。確かにもう来る直前やし、宿を決めてへんっちゅーことはないやろけど…どの辺りに泊まる予定なんやろ?それによって夕飯を食べる場所とか考えんと、帰るのが大変になってまうもん。連絡した時にでも聞いてみよかな。
別に会う時にでも聞けばええんやろけど、何となしにプランは考えておきたいし、この辺りに行こう!ていうのだけは決めておいた方がええと思うねん。やっぱり。あん時みたいに当日に皆で決めるんもきっと楽しいと思うんやけど、時間は有効に使いたいって思うから。
…あ、せや!私らのお気に入りの甘味処も案内してあげたいな〜前に来た時は行くこと出来んかったから。しえと出雲ちゃんは気に入ってもらえると思うんよね、甘い物が好きな子達だし。ああ、まだ午後の仕事がたんまり残ってんのに楽しみ過ぎて、顔がにやけてまう。皆に会ったのだってそんなに前やないのになぁ…不思議なもんや。
「嬉しそうやな、神楽」
「めっちゃ嬉しい!高校卒業してしもたから、皆で会う機会なんてどんどんなくなっていくもんやと思ってたから、尚更嬉しいわ」
「…っし。午後の仕事、さっさと片付けて帰ろうや」
「おん!」
―――そして翌日。
燐くんから新幹線が着く時間を聞いていた私達は、駅まで皆を迎えに来たんや。んーと、…そろそろ着く頃なんやけどなぁ…4人揃って来る、て言うてたからすぐにわかると思うんやけど。
タツ達とキョロキョロと捜していたら、遠くから元気な声で名前を呼ばれた。あー…一瞬でわかったけど、そないに大きな声で名前呼ばれると恥ずかしゅうて敵わんよ、燐くん。3人も私と同じようなことを考えとるらしくて、ねこは苦笑い、廉はいつもの笑顔を浮かべながらも頬が薄紅に染まっとる、タツに至っては手で顔を覆って俯いてしもたわ。私もちょお他人のフリ、したくなったわ。さすがに。
てか、ノリが完全に高校生やないの。
「ひっさしぶりー!」
「うっさいわ!駅構内ででっかい声で名前呼ぶんやないっ!」
「もう、兄さん…嬉しいのはわかるけど、此処、公共の場なんだから」
「全く…変わんないわね、アンタは」
「燐だし、仕方ないかなぁ」
皆で燐くんの行動に呆れつつ笑っていれば、あの時と変わらぬ態度で少し拗ねたような表情になってしもた。ああもう、ほんまに高校の時のまんまやねぇ君は。あの頃から3年の月日が経っとるっちゅーのに。でもまぁ、燐くんらしゅうてええのかな?こういう所。…もーちょい落ち着いてくれると有難い気もするけどな。
さて、そろそろ観光する為に移動するとしますかね!…あ、けど、皆の大荷物どないしよ…駅のロッカーに預けてもええけど、後でまた取りにこないかんのはめんどいよなぁ。
「皆、荷物どうする?そのままやと観光すんのに重いし、邪魔やろ」
「駅のロッカーに預けて行きますか?取りに来るん面倒かもしれませんけど」
「ああ、大丈夫!今日泊まる旅館に預けに行くことになってんだ。ちゃんと確認して、行くことも言ってあるし」
「そうなん?ほんなら先に行こか」
何処に泊まるんやろなー、と着いていけば。何とタツと私の実家でもある虎屋でした。
これにはもう口をあんぐり開けて驚く他、ないです。もしかしたらそうかもしれんねー、て話してはいたけど、おば様が何も言っていなかったから違うんやと勝手に結論付けていたんですよ。せやけど、まっさか予約しとったとは思わんかったわ…うん、びっくり。
どうやら私達をびっくりさせよ、と思って、おば様に言わないでって口止めしとったんやて。まぁ、京都に来るって聞いた時点ですでにかなりびっくりしとんのやけどな?まぁ、確かにこれもびっくりしましたけれども。あー、燐くんが満足気な笑みを浮かべていらっしゃる…ほんま悪戯っ子っちゅーか、何ちゅーか。周りにいる皆は苦笑いやけどねー。
おば様に荷物を預けた後は、私達のオススメである場所や皆が行きたいていう所に行くことにした。虎屋が拠点なら、案外何処にでも行けるから逆に便利かも。
金閣寺や銀閣寺や清水寺、この辺りは前も行ったけど、燐くんの希望でもう一回行くことにして。ほんで鴬張りの床が有名な二条城と知恩院などを巡り、今は私達が大好きな甘味処で休憩中。
あ、せや。陰陽師で有名な清明神社も行ってきてん。ほら、私らの職業も似たようなもんやろ?せやから何や気になってしもて、…無理言って連れて行ってもらったんよ。今は京都在住なんやからいつでも行けるんやけど、多分、こういう時やないと行かんと思ってな。
「わ、この抹茶パフェ美味しい…!」
「それ私の一等好きなやつなんよ。気に入った?雪」
「うん」
「このお店の甘味、どれも美味しいね!ハズレがないもん」
ふふ!やっぱりしえと出雲ちゃんが一番ええ顔しとるなぁ。かいらし。
「あ、しえ。この最中も食べてみぃひん?美味しいよ」
「ありがとう!…ん〜っ本当だ、美味しい!」
「ちょっと杜山!アンタ、口の端にあんこついてるじゃない」
「えっ嘘!」
ほら、こっち。
ナプキンでしえの口を拭ってあげてる出雲ちゃんはまるでお姉ちゃんみたいや。妹がいる、て前に聞いたことあったし、根っからのお姉ちゃん気質なのかもしれんね。
各々が注文したものを食べ終え、次は何処に行こうかと相談を始めた時、ポケットにいれていた携帯が震えていることに気ィついた。長さからして電話やんなぁ…一体誰からや、とディスプレイを見て、思わず固まってしもた。すぐに出なあかんのはわかっとんのやけど、ものっそい出たない。携帯を手に持ったまま動かない私を訝しんだのか、タツがどないしたん?と声をかけてきた。ので、無言でディスプレイを見せれば苦い顔になりはった。まぁ、その反応が正しいわな。
ああ、でもこんまま無視するわけにもいかんし…ということで、意を決して出ることに。
―――ピッ
「…はい、佐伯です。どないしたんです?隊長」
「えっ柔兄?!」
大声を出した廉に静かに、とジェスチャーで伝える。
受話器の向こうでえらい申し訳なさそうな声を出しとる柔にぃから告げられたんは、今、ちょお厄介な悪魔が出よったらしく手を貸してくれっちゅーことやった。…うん、まぁ貴方からの電話で大体は予想しとったけどね!!
『ほんっまにスマン!皆と一緒なんは重々承知なんやけど、…坊と一緒に来てくれんか?』
「…隊長命令を断れるわけないでしょう、行きますよ」
『スマン、恩に着る!』
詳しい場所は後で送ってもらうことにして、私とタツの銃を持ってきてもらうようにだけ告げて電話を切れば、自然と深いため息が漏れた。
一部始終を見てた、…というか、聞いてた皆はしゅんとしてるっちゅーか、同情の目をしとるっちゅーか…うん、とにかく罪悪感いっぱいになる顔をしてはります。ほんまごめんなさい、でも文句なら私らではなく空気読まずに出てきた悪魔に言うたってください!もしくは柔にぃにどうぞ!あのお人は何にも悪くないけれどもね!!
「…というわけです、勝呂くん」
「全部聞いてたわ。…悪い、ちょお行ってくる」
「ほんま空気読めん悪魔ですね…俺らの方は気にせんで。終わったら連絡ください」
「そうだね、終わったらまた合流しよ?」
「……アンタ達、気をつけなさいよ」
出雲ちゃんの言葉に頷きだけを返し、お店を飛び出した。
ああもう!こないな時に出てこんでもええでしょうに!!こうなったら怒りを全部その悪魔にぶつけたる…!