Let me know.
同期の塾生の燐くんはいつも唐突や。話に脈絡なんてあらしまへん。
大分慣れてきはったけど―――…ほら、今やって。
「なー、神楽」
「どっかわからんの?」
「いや、今のとこ大丈夫だけど…聞いてもいいか?」
「うん?」
課題が終わらない、といういつも通りの燐くんからのSOS。
それに応えてる最中に、それまで順調に走らせとったペンを止めて、神妙な顔して聞いてきはった。…聞きたいこと、って…何やろか。
読んでいた本にしおりを挟んで聞く体制に入れば、燐くんがようやく口を開いた。
「何で…祓魔師になろうって思ったんだ?」
思いがけない質問やった。と、思ったと同時に。そないに神妙な顔する必要あんのかいなって思ってしもたんやけど。
思わずポカーンとしてしもた…が、燐くんは真面目に聞いてきはったみたいで。真面目な表情を崩すこともなく、私が口を開くのを待ってるようやった。
祓魔師になろうと思った理由…ね。
この塾に通ってる皆は祓魔師を目指してはる。その理由は様々やけど、燐くんはタツと同じで「魔神(サタン)を倒す」っちゅーのが目指す理由。
廉とねこは、第一は御家柄なんかな。そして、タツを護る為。
「私、は……」
今まで誰にも、聞かれたことなかった。聞いてくるようなお人もおらんかったしね。
お世話になってる方々でさえ…聞いてくることはせんかった。大反対されてたから、やろうけども。
今思えば、タツ達も…私に理由を聞いてくることはしなかった気ィする。
私達の中で祓魔師を目指すんは当たり前で、小さい頃からそう思っとって…明確な理由なんて、提示せんかったから。
「護りたい、から」
「……?」
「大好きで大切なお人らを、場所を…護りたいって思ったから」
せや。寺を建て直すんも確かな理由やった、それに協力・貢献したいって。けど、そんなんはほんまはこじつけで…私はただ、護りたいんや。
身寄りのない私を、忌まれの家に生まれた私を…可愛がってくれはる、笑いかけてくれはる皆を。あの場所を。
私の唯一の居場所やったから。あの大切で、大切で仕方ない場所を―――護りたい。それに―――…
「命を懸けて護りたいお人が…危険と隣り合わせにおる祓魔師になるんや。私はそのお人を…死なせたくない」
「それって…ソイツを護って死ぬってことか?盾になるってことか?」
見つめてくる綺麗な青の瞳。
問いかけてくるその瞳は、決して剣呑さをはらんでるわけやない。
純粋な……心配、なんやろか。
「ちょぉ違うかなぁ…」
そう。そういうんやない。
確かに護るっちゅーことは、そのお人が危険に晒されたら自分の命を投げ出してでも、ってことや。それだって間違いやない。
けど、私の中では正解ではないってだけ。
私が望むんは、私が言うとる"護る"っちゅーんはな…?そんな大層なもんやないねんよ。
「違うって…じゃあ、どういうことだ?」
「一緒に生きる為に、護るんよ」
「…どういう意味だよ」
「私はなぁ?燐くん。そないに出来た人間やない。大切なお人護って死ねたらそら本望やろけど、そんなん残された人間は辛いだけやんか。…命を投げ出す勇気がないだけやって言われたら、まぁそれまでなんやけども。せやけど、私は大切なお人を護って死ぬより―――護って、その上で一緒に生きていきたいんや」
護って、生きて、その先に広がる未来(セカイ)を一緒に見たいから。
傍におるんは私であってほしいっちゅー…私の勝手な我が儘なんやけどね。本当は。
「あはは。恥ずかしいもんやな、こういうん話すの」
「…神楽ってカッケーなぁ…」
「はぁ?ほーか…?」
「うん!カッケーよ!!勝呂と同じくらいカッケー!!!」
「タツと同じ、ね…ふふっありがとぉ」
命を懸けて護りたいっちゅーのは、間違いやない。
どんなことがあっても死なせたらあかん。…いや、死なせとうない。
せやけど、そのお人の為に…私は生きたい。護る為に生きるんやって、思っとる。
―――ガラッ
「何や、お前らもう来とったんか」
「最近、お二人仲が良いですね〜」
「そうか?…あ、おはよー勝呂、志摩、子猫丸!」
「おはよーさん」
「おはようございます、神楽さんに奥村くん」
燐くんと2人だった教室が、少しずつ賑やかになっていく。
こん感じも…私にとっては失くしとうないもんで。護りたいもんの1つ。
「奥村と何しとったんや?」
「課題のわからんとこ教えてたんのと…ちょぉお喋り」
「ふぅん…知らん間に仲良うなっとるんやな。気ィついたら名前で呼んではるし」
「せやから、遊園地行った時に言うたやろ?近うなった、って」
「あぁ…そういや言うとったな」
ねぇ、タツ。私ね?護りたいもんが増えたんよ。最初はタツだけだったんに。
それに廉とねこが追加されて、勝呂家が追加されて、明陀が追加されて、京都が追加されて…。
こうやって、失くしとうないもんがどんどん増えていくんやろか?
いつか、両手では抱えきれんほどに―――――。