消えない炎
皆で笑い合って。皆で色んな所に行って。皆で色んなこと教えてもらって。皆で話をして。
何も壊れんで、崩れんで、楽しくて、嬉しい日常が…ずーっと続いていくんだって思っとった。
やけど、そんなんは幻想で、ただの私の夢だったんやって思い知らされた。
やって、こないに簡単に崩れてしもたんやから。
―――な、なんでっ! 魔神の仔が祓魔塾におるんや!
塾の同期生、奥村燐くん。
彼が背負っていたもの、抱え込んでいたもの、隠していた…もの。それは"魔神の落胤"やということ。青の炎を受け継いどるということ。
青の炎は私らを恐怖させる要因には十分で…彼の正体を知った瞬間、あからさまに皆の態度が変わりはった。
当然の反応やとは思う。せやけど―――
「3ヶ月一緒に過ごしてきたこと、経験してきたこと…それを全部なかったことにするんは、無理な話や」
たくさんのことを経験して、教わって、色んな話をして、彼のことを知って…"仲間の絆"を築いてきたんやと思っとったのに。
何があっても、これは切れへんって…柄にもなく思っとったのに。
ギクシャクした状態のまま、私達は実戦参加資格を得たらしく、京都遠征へ同行することになった。
私達が知らん間に京都は大変なことになっとって。一気に色んなことが起き過ぎていて、頭がおかしくなりそうや。
そして最悪の事態、不浄王が復活したっちゅー知らせ。
蝮姉さまは重症で、おじ様は一人で不浄王と戦おうとしとるだなんて…!大切なモノが全て…一気に―――ガラガラと音を立て、崩れていってしまう。
「さっき、炎を出した件で燐の処刑が決まった」
!…タツを、殴った時のことか。
確かにあん時の燐くんは感情的になって、青い炎を出してしもたんや。それを柔にぃ達に見られて…。
シュラ先生が何かの印を唱えて、燐くんの暴走は止まったんやけど。
あれが原因で、彼は今囚われの身で…更には処刑が決まった、なんてそんな…っ!
決定したんはきっと、正十字騎士団の本部…ヴァチカンやろな。ということは、それが覆るんはまずないっちゅーこと。
「勝呂くん、コレをキミに預ける!」
「それ…!!」
「倶利伽羅……!」
「それと親父さんが燐に託した手紙だ。不浄王を倒すには燐の力が必要だと書いてある」
「シュラ先生、まさかと思いますが…」
「さすが佐伯。勘がいいな。…そうだ。アイツは協力する気だった。お前達、燐を助け出してくれないか?」
燐くんが処刑を免れる方法―――それは手柄を立てることや。
「この迷彩貫頭衣を持っていけ。カモフラージュ効果があったはず。見張りに気付かれず、独居房に近づけるだろ」
せやけど、燐くんを助けるか、助けないか…全ての判断は私達に任せる、と。
そう残してシュラ先生は、他の祓魔師の人に呼ばれて行ってしもた。…どうするかは、まず手紙を読んでからや。
タツに預けられた手紙を、タツ自身が全員に読んで聞かせた。
そこに書かれてたんは降魔剣のことや、それが燐くんの手に渡った経緯や…そして、おじ様の本当の気持ち。助けてくれ、と言っているように思えた。
―――がしっ
「皆で燐を助けよう!」
「…いや、助けたいのはやまやまやけど…それってヴァチカン敵に回すてことやで」
「……!!で、でもこのまま燐と会えなくなったら、皆もきっと後悔するよ…!」
何も―――彼に伝えられんままで、終わりになんてさせてたまるか。
―――バッ
「独居監房舎こっちやな」
「おん。そのはずや」
「勝呂くん!神楽ちゃん!」
「坊!お嬢!」
最初に動いたんはしえ。そして彼女に続くようにタツと私が動いた。
更にねこと出雲ちゃん…めんどくさがっとった廉も、最終的にはポンチョを着てついてきとった。
私が動いたんは、タツを護る為。死なせん為。そして…大切な仲間で友達の燐くんを、助ける為や。
「―――…タツ」
「なん?」
「色々とごめん。叩いてしもてごめん。けど…燐くんの言う通りやよ?後悔してからじゃ遅い」
「……あぁ。せやな」
のうなってからじゃ…もう取り返しがつかん。きっと後悔する。
優しい心を持っとるタツなら、絶対に―――自分を責めてしまうはずやから。
変な喋る扉(悪魔っぽい)に動きを止められ、次に体が動いたんは…彼の馬鹿力で扉が壊された瞬間やった。
…まぁ、張本人の扉が壊されたら、動けるようにもなるわな。
「!!皆、助けに来てくれたのか?!」
「ぼ、僕は奥村くんに死んでもらったら困るんや」
「!」
「危険やないって判ったら、仲直りするんやから」
「子猫丸…!!」
ふふっ何てかいらしい理由やの?ねこ。
どうやらねこと燐くんの間にも、何や進展があったようやね。
私達はとっくに燐くんがどんな子ぉかなんて知っとる。勉強が苦手で、短気で、料理が上手で、ちょぉ乱暴で口が悪いけど…けど、優しい子。
それを知っとれば…別にええんよね。本当は。
色々複雑な思いはそれぞれあるんやろうけど、それでも燐くんを"仲間"やって"友達"やって思うとるんよ。
―――ゴスッ!!
「ギャッ?!す…勝呂…サン…!」
「…親父の件に関しては俺が冷静やなかった…お前の言う通りや、親父の件に関してはな!戦うんやったら必要やろ、持ってけ!」
「お、俺こそ殴ってスマン…」
はぁ…タツの性格はわかってはるけど、もうちょいどうにか出来んのか。
ま、でも認めただけ良かったってことにしとこかね。
「金剛深山までは案内する。後はお前の勝手や、好きにしぃ。俺は俺で戦うさかい」
「勝呂、俺を信用してくれ」
燐くんはサタンの子なのは変えられへんけど、必ず炎を使いこなしてみせるから…やから信じてくれって、タツに伝えた。
でもな?燐くん。タツが怒ってるんはそういうことじゃないんよ。
…確かにタツはサタンを倒すって決めとる。それが彼の野望や。
その為に反対を押し切って、正十字学園に通うことにして、祓魔師になるて決めたんやもの。タツがほんまに許せへんのは―――…
「…俺がお前許せんのは、そおゆうこと全部一人で背負いこんで…先に他人扱いしとったんがお前の方やからや…!そんな奴、どう信じろちゅうんや。味方や思っとったんは俺だけか!!!」
「ちっ違う!!そんなつもりじゃ…!」
「ふふっタツはな、ただ悔しかっただけなんやと思うよ?自分だけが友達やって思っとったみたいで…淋しかったんでしょ」
「神楽はわかってたのか…?」
「付き合い長いから少しはわかるつもりやで。私も…同じことで腹立てとったさかい」
先に離れていったのは、君だった気がしたから。
やから…やからね?燐くん。
もっかい信じさせてぇな。これからの行動で、示してほしいねん。
「ええな。目指すは洛北金剛深山―――!倒すは、不浄王や!!!」