悩むが吉


皆でトロピカルランドに行ったあの日。私は新一にキスをされ、告白された。その事実に驚くことしか出来なくて、正直、あの後何をしたのかとか、いつ帰って来たのかとか一切覚えてない。覚えてるのは、…あの言葉と柔らかい感触だけ、だったりする。

ああもう!小学生の姿だというのにうっかりときいてしまったじゃないかああぁああ!!いや、好きな相手だからときめくのは当たり前だろうけど!それに中身は高校生の新一なんだし、別段問題はないとも思うけど。
でも、あの…うん。私、これでも成人してんだよな。3つしか差はないけれど、それでも10代の子を好きだっつーのは犯罪っぽい気がしてしまう。…好きなだけならまだいいけど、あいつの想いに応えても…いいのだろうか。
新一はまだ17歳だ。高校生だ。元の体に戻ったら周りに同い年の可愛い女の子がたくさんいるだろう。…そしたら、同い年の子の方がいいって思ったりするんじゃないのかなぁ?


「…咲羅。貴方って本当にバカなのかしら?」
「え、バカ?!」
「バカ以外に言いようがないわよ。…あのね、想いを伝えるっていうのはそう簡単なことじゃないわ。それはわかるでしょう?」


志保の問いにコクリ、と頷けば、「それなら工藤くんの想いが一過性のものではないことくらい、わかるんじゃないのかしら?」と言われてしまった。…それくらい、私だってわかってる。あんな真剣な瞳で、声で好きだと言われて…信じられない、と思うほど私はひねくれてはいない。


「嬉しいって、…思ったんだ。好きだって言われて、キス、されて」
「それならハッキリ伝えてあげたらいいじゃない。きっと喜ぶわよ?」
「…でもさ、まだ黒の組織との決着ってついてないじゃん?それなのにこー…色恋事、とかさ…邪魔になんない?」
「否定はしないし、話を聞いてる限りあの日の工藤くんの行動は突発的だとは思うけれど…けど、少なくとも咲羅を邪魔だと思うような人ではないと思うわ」


本気で貴方を好きで、本気で貴方を大切にしたいと思ってくれるはずよ。
そう言った志保は珍しく、とても穏やかな…優しい顔で笑っていた。見た目は小学生のはずなのに、時々、こうやっていやに大人びた表情を見せるからお姉さんっぽく感じるんだよなぁ。実際の歳も私より年下だけど、よっぽど彼女の方がしっかりしていると思う。
…だからこそ、困った時や悩んだ時には志保に相談しちゃうんだけど。何だかんだ言いつつ、ちゃんと話聞いてくれるしアドバイスもくれるから、つい甘えちゃうんだよね。


「気の済むまで悩みなさい。それで自分の中できちんと答えが出たら、それを工藤くんに伝えてあげるといいわ」
「…ん。そーする」


クッションを抱えてゴロン、と横になれば、ゆるゆると瞼が重くなってきた。
あー…そうか。あの日から仕事を詰めて、徹夜して、昼間も依頼人に会ったり捜査に行ったりしてなるべく新一と顔を合わせないようにしてたから、…その疲れが出てきたのかも。めっちゃねみぃ。


「好きだ、って言ったら…新一、笑ってくれんのかなぁ…?」


笑って、ほしいなぁ。
零れ落ちた言葉の返答を聞く前に、私は意識を手放した。



(…工藤くん。盗み聞きなんて探偵のすることじゃないんじゃない?)
(んだよ、…気が付いてたのか、灰原)
(…良かったわね、咲羅の気持ちが知れて)
(本人に言われたわけじゃねぇし、悩ませちまってんだ。手放しに…喜べねぇよ)

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