消えない疑念


米花町に戻ってきてしばらくはホテル住まいをする予定だったんだが、…気が付いたら阿笠博士の家に転がり込む形になっていた。いや、確かに蘭やコナンくんの前で「住むとこないからしばらくはホテル」って言っちゃったけど。思わず口が滑って。
…最初は蘭に「ウチに住んだら?」ってものすごーーーーく!魅力的なお誘いを受けたんだけどな。さすがに私まで厄介になるわけにはいかんだろ。ただでさえ、コナンくんを預かってるというのに。なので、丁重にお断り。ちゃんと住む場所探すから、って言ってね。
でも蘭は心配そうな顔をしたままで、ついにはコナンくんが「博士に聞いてみるから、OKだったら博士の家に住みなよ」と言われてしまいました。あの、博士の家にはよく遊びに行ってたけど、さすがに住ませてもらえないんじゃなかろうかコナンくんよ…!


「それがあっさりOKってどういうことなんだろうか…」
「部屋は余っとるし、特に問題がないからじゃな」
「…まぁ、助かったけど。ありがと、博士」
「何の、何の!それにしても久しぶりじゃなぁ、咲羅くん」
「そうだね、2年ぶりだ」


博士も相変わらずで、今でも色々発明しているらしい。
まぁ、それは置いておくとして…で。一番気になるのは、私と同じように博士の家にお世話になっている小学生の女の子…確か、灰原哀ちゃんって言ったっけ?何だか子供には見えない、ずいぶんと大人びた子だ。
コナンくんもあまり子供らしくない面を、ここ最近で見てはいるけど。

―――――あの灰原哀ちゃん…誰かに、似ている気がする。

誰だったかまではハッキリ思い出せないけど、前に…何処かで会ったことがあるんだ。いや、会ったのは子供ではなかったけども。
何て言うか…面影、とでも言えばいいのか?その誰かを子供にしたら、きっと彼女のような顔立ちになるんだと思う。それくらい似ている人に会ってるはずなんだけど、


「あーくそ。誰、だったかな…」


哀ちゃんだけじゃない。コナンくんもだ。話してみれば話してみる程、幼い時の新一にそっくりすぎる。時々、新一と話してるんじゃないかって錯覚する時があるくらい。
もちろん、蘭や小五郎のおじ様の前では間違いなく、小学生の江戸川コナンなんだけど…博士や哀ちゃんと話す時の彼は…どこか工藤新一に見えてならないんだよねぇ。

何らかの原因で体が小さくなった、…とか?
それなら子供らしくなく、妙に大人っぽいのも頷けるし、絶対に子供が知らないような知識があるのも頷ける。

けど、常識としてそんなことあるはずがないよなぁ。どんな摩訶不思議なことが起きて、体が縮むんだって話だよ。んなことあってたまるか。…とは思うんだけど、一度浮かんだ疑念はなかなか簡単に消えてくれなかった。


「(…あぁ、あれか。新一に会いたすぎてコナンくんが本人なら、とか思ってるのか?私)」


うわ。自分で考えたこととはいえ、それはいくら何でもダメ過ぎるだろ…。小学生にアイツの姿を求める、って…一歩間違えたら立派な犯罪だ、犯罪。それは探偵として、そして大人としてやってはいけないよな。
自分の導き出した考察に内心溜息を吐きながら、博士と話をしている哀ちゃんとコナンくんに視線を移す。うーーーーーーん…ダメだ。やっぱり似てる、本人ではないかと思ってしまう。


「でもよ、灰原…そうなるとここ、」
「そうじゃなぁ、ワシもそこが少し気になってしまう」
「…あら。それならこうしたらどうかしら?」


パソコンを覗きこんでいる博士とコナンくん。そして大人顔負けのブラインドタッチでキーボードを打っている哀ちゃんの姿。
突然、靄がかかっていたような脳内がサァッと開けたような気がした。…そうだ…哀ちゃんが誰の面影と重なっていたのか、ようやく思い出せた。あの子だ、いつぞやの調査で出会った…時折、悲しそうな笑顔を浮かべていた―――――彼女。

全てのピースが、繋がった。
物的証拠はないけど、でも絶対にそうだという妙な確信が私の中にはある。


「…ねぇ、」
「ん?どうしたの咲羅姉ちゃん」
「……何かしら」


コナンくんと哀ちゃんに視線を合わせ、ゆっくりと息を吸い込んだ。
真実を、突き付ける為に。全ての真相を、知る為に。


「どうしてそんな格好をしているの?
―――――工藤新一くん。そして…宮野志保さん」

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