恋に恋して


「…で。本当のとこどーなんだよ」


買い物から帰ってくれば、ムスッとした顔の新一に出迎えられた。つーか、いきなり聞かれても何のことだかさっぱりわかんないんだけど。まず用件をしっかりと言えよ、と溜息を零しながら返せば、赤井さんのことだ、と返された。赤井、って…秀さんのことだよな?何でここで彼の名前が出てくるんだ?


「何で秀さん…つーか、そんな簡単に名前出していいもんなの?」
「博士ん家に盗聴器が仕掛けられてないかどうかは確認済み、それに今は灰原もいねーから問題ねぇ」
「はあ…お前は一体、何を聞きたいの?名探偵くん」
「―――あの人との関係。」


うっわぁ…小学生のがきんちょの口から出る言葉じゃないなぁ、ほんと。中身は17歳だけど、見た目と口調が思いっきり合ってない。…あ、それは普段からか。
それは置いておくとして、…秀さんとの関係ねぇ?それはあの日、話した通りでそれ以上でもそれ以下でもない。つまり、新一に話せることは全て話し終わってるってことなんだけど…この顔だと、その返答では納得して頂けなさそうだなぁ。


「…昔の男、とか?」
「それこそ小学生が言う言葉じゃないっての。…違うよ、私が出逢った時、多分ジョディさんと付き合ってたはずだし」
「そうなのか?!」
「ただの勘でしかないけどね。コーヒーと紅茶、どっちがいい?それともオレンジジュースか?」
「ガキ扱いすんな!コーヒー!!」
「立派なガキでしょーが。見た目は」


ああ、そうだ。昨日焼いておいたシフォンケーキも出すとしようか、お茶請けに。飲み物がコーヒーならよく合うだろう。


「―――秀さんはね、初恋の人だったの」
「え、…」
「告白なんてできなかったし、しようとも思わなかったけど…うん、あの時、私は確かにあの人のことが好きだった」


一緒にお茶するのも、食事に行くのも、すごく楽しかったしドキドキした。憧れの一種だったのかもしれないけど、でも…私は今でも、あの人が初恋だって思ってる。あの時感じていた感情は、確かに恋だったんだ。
今でも好きは好きだけど、あの時に感じていたものとは明らかに違うし、…日本に帰ってきた時に私の初恋は、儚くも散ったのだと理解している。―――いや、ジョディさんとの関係に気がついた時にはすでに、諦めがついていたのかもなぁ。
懐かしいな、と思い出しながら新一に話をすれば、コーヒーの入ったカップを持ったまま苦い顔をしていた。納得はしたけど、消化はできてないって感じか?


「咲羅、は…俺でいいのかよ」
「今更なーに言っちゃってくれてんのさ。弱音吐くなんて、らしくない」
「……」
「新一。私さ、…ちょっとだけ後悔してるんだ、あの時―――気持ち全てに応えることはできない、って言っちゃったこと」


…だけど、自分で決めたことだ。考えて、悩んで、その末に導いた結論だ。だからそれを覆すことはできないし、しないけど…でも少しだけ、彼に触れることを許して。


―――ギュ、

「好き。好きだよ、新一…今は本当に、君のことが大好きなんだ」
「…バーロー。知ってる」
「あはは。そっか」
「ぜってー迎えに行くからよ、それまで浮気すんじゃねぇぞ?」
「しないよ。確かに彼は魅力的だけど、…私は新一しか見えていないからね」


あー…本音に間違いないんだけど、これ…思っていた以上に恥ずかしいかもしんね。新一の肩口に顔を埋めるようにして、抱きしめる腕に力を込めた。こんなにも近くにいながら触れられないのは辛いけど、でもきっとお前は約束を果たしに来てくれるから。

絶対に大丈夫だってわかってるから、だから待っていられるよ。…いつまでも、ずっとな。

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