銀の弾丸を打ち込め


「おい、ボウヤ。何でお嬢ちゃんが一緒にいるんだ…」
「えっちょっ咲羅ちゃん?!」


運命の日。新一と一緒にFBIの面々がいるという場所に向かえば―――予想通りの反応をされました。秀さんにジロリ、と睨まれるけれど、私はどこ吹く風。わざと視線を逸らし、知らんぷり。無愛想で、優しさなんてなさそうに見える人相をしているけれど…でも私は知っている、秀さんは優しい人だって。
まぁ、任務となればその優しさも捨ててきたんだろうけど。だけど、一般人を見捨てるような真似だけはするような人じゃないからなぁ。だからきっと、今回も私が関わることを良しとはしていないんじゃないだろうか。


「コナンに無理言って連れて来てもらったんです。組織の奴らには―――借りがありますので」


にっこりと笑ってそう言えば、秀さん達がピクリと反応したように見えた。借りがある、というのは語弊があるかもしれないけど…でもあながち間違ってもいないと思うんだよね?両親を殺された分の憎しみを、悲しみを、アイツらに返してやらなければいけないんだから。
今は恐らく、アジトに踏み込む前のハズ。そんなに時間はないはずだろう、と思っているのだけれど…こわーい顔した秀さんにちょっと来い、と腕を引っ張られた。新一達、他の捜査官達から大分離れた所で秀さんはようやく足を止め振り向いた。
その顔にはただ、鋭さだけが浮かんでいて私は思わず苦笑い。今から一世一代の大仕事をするのだから、笑っていることなんて不可能だとは思うけど、その顔は視線だけで人を射殺せそうですよ。


「組織の奴らに借りがあると言ったな?」
「ああ、言ったね」
「…どういう意味だ。お前はアイツらに関わる事件に首を突っ込んではいなかったはずだが?」
「直接対峙したことはないし、事件にも関わってない。…けど、両親が殺された」
「なに…?」
「黒の組織を調べていたみたい。どういう経緯で、とか、何で、とか…それは全くわからないけど、でも組織に殺されたのは確かだ」


だから、何を言われようと、アンタにいくら睨まれようと―――私は帰らない。


「復讐なんて馬鹿げてるって、私も思ってるさ。そんなの誰も喜ばないことくらい、わかってる」
「……」
「それでも、全てを知った今。黙ってることも、ただ待ってることもできないんだよ」
「頑固者だな、お嬢ちゃんは」
「ああ、頑固だよ。絶対に曲げてなんかやらない…それに、守りたい奴がいるんだ。自分の手で、必ず」


真っ直ぐ正面から秀さんの目を見つめ返せば、折れたのは彼の方。ゆっくりと目を閉じて、溜息を1つ。どれだけ説得しても無駄だ、というのをわかってくれたらしい。
ごめんね、秀さん…きっと心配してくれているんだろうけれど、やきもきしながら帰りを待っているのは性に合わないんだ。どんな危険に晒されることになっても、私は自分の目で真実を見たいんだよ。


「…もう1つ、やることがあると言っていただろう。それは?」
「組織の研究データ。それを奪うこと」
「薬のデータ、か…彼女の頼みか」
「まぁ、そういうこと。…許可、してくれるでしょ?」
「俺の許可があろうがなかろうが、お前は聞きやしないだろう」


あはは、さっすが秀さん。よーくお判りで。


「死ぬなよ、お嬢ちゃん」
「うん、わかってる。秀さんもね」





夜も更けた頃、辺りを緊張が包み込む。さすがにFBIの無線を盗聴していないから詳しいことはわからないけれど、新一からの通信によればそろそろ―――という感じらしい。
あちらさんは組織壊滅が目的なんだけど、私は一応研究データを奪うことが目的になる。私なんかが組織の幹部達と戦闘になった所で、勝てる自信は皆無だからね。両親の仇を取りたい、という気持ちはあるけれど、自分の力とかそういうものは過信してないつもりだから。…本音を言えば悔しいけれど、でもそれは全て秀さんにお任せすることにした。

(ドンパチし始めたら、その騒ぎに乗じて忍び込むのが最善かな…)

厳重なセキュリティがあるだろうけれど、壊す術はいくらでもある。それなりに必要なものは掻き集めてきたから…まぁ、何とかなるでしょ。さすがに暗証番号とかは調べらんなかったんだもん。事前準備はしてきてるけど、そこを掴ませてくれるほどに甘い組織ではなかったからねぇ。いや、当たり前だろうけど。世界を脅かす程の組織なんだから。

―――ガゥンッガゥンッ!!

しばらくして聞こえたのは、銃声。次第に慌ただしく声や、足音…更には叫び声とかが聞こえてきたから、ああ始まったんだなって理解した。ということは、私も動いて問題ないってことだ。伸びた髪が邪魔にならないようひとつに纏め、それをキャップの中に仕舞い込む。必要なモンが入ったウエストポーチはしっかり装着済み、よし…行きますか!

様々な音が飛び交っている中、私はすぐ近くの窓ガラスを突き破って中に入り込んだ。忍び込む、の意味わかってる?って問い質される程に、慎重の欠片もないやり方。
だけど、これだけ騒がしくなっているなら少しくらい物音を立てても、見つかる心配は低いと思うんだよね。だからこそのさっきのやり方ってわけ。FBIの面々がドンパチやり始めてなければ、他のやり方で入り込んだっつーの。


「新一はもう奥の方か…先に自分の用事を済ますとしようか」


暗証番号を調べるのは無理だったけど、アジト内の地図は手にいれることができた。正しくは新一にリークしてもらったんだけどな。
まぁ、それはともかく…その地図を頭ン中にしっかり叩き込んでいるし、恐らく研究室は此処だろうって所も目星はつけている。あとはそこが間違っていないことを、祈るのみだよねぇ。けど、それを心配している暇はない。さっさと済ませて、新一の傍へ―――私の頭の中は、それでいっぱいだった。

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