愛の棲み処
新一と共に日本に戻ってきてから数日。私は一人暮らしをするべく、新居を探していた。博士は今まで通り住んでいて構わない、と言ってくれたけど…さすがにこれ以上、甘えるわけにもいかないのでね。確かに元の姿に戻った志保がそのまま住んでいるから、残った方が楽しいのかもしれないけど―――いい加減、探偵事務所代わりにできる家が欲しいというのも本音だから。
そして悩んだ末に決めたのは、3LDKのマンション。一人暮らしには広すぎるかもしれないが、事務所兼家にするつもりだからその方が都合がいい。寝室とリビング、それから事務所という名の仕事部屋ってね?事務仕事する部屋と、依頼人と会う部屋を別にしたかったからちょうどいいかなーって。
「そういうことだったらウチに来りゃ良かったんじゃねーの?」
「……お前、人の話聞いてた?」
引っ越しを手伝う、と言ってくれたので、有難く新一にも手伝ってもらいながら進めていたのだが…コイツの一言に段ボールを開ける手が止まった。散々、説明していたはずなのにどうしてそんな結論に至ったんですかねぇ?新一くんや。
「お前ん家に転がり込んだら、博士の家を出た意味がまるでない」
「別に俺には甘えりゃいいだろ」
「へ?」
「だ、だから!…俺は、お前の彼氏だろ?だから、…甘えたって、何の問題もねーだろーが」
ぷいっと背けられてしまった顔。でも耳や首が赤く染まっているのを見て、ああ照れているんだなと笑みを零した。こうやってすぐ照れてしまうクセに、言葉にするのをやめようとしない新一はとても可愛いなぁと思うんだよね。素直に可愛いと言ってしまうと烈火の如く怒るので(でも顔真っ赤)、絶対に言わないようにしてるけど。
クスクス笑いながら片付けを再開するけれど、さっきの新一の言葉にはどう答えようか。
「…新一の家は、いつ優作さんと有希子さんが帰ってくるかわかんないだろ?」
「まぁ…唐突に帰ってくるからな、父さんと母さんは」
「だから、と言うのもアレなんだけど………2人きり、に、なれる所があるといいかなぁとか思ってたりなんかしちゃったりして…?」
えへ(ハート)なんて効果音が出るような言い方をしてみたものの、慣れないことをしたからか顔に一気に熱が集まってきてしまって熱いの何のって!きっと真っ赤になってる、間違いないです。さっきの新一ばりに真っ赤だと思う。
「〜〜〜〜オメーさぁ…なにそれ、誘ってんの?」
「さそっ…?!」
「その反応、そういう意味で言ったんじゃねーんだな。でも心臓にわりぃ……!」
「ご、ごめん…?」
咄嗟に謝っちゃったけど、新一は別に怒っているわけではないらしい。どっちかと言うと、…呆れてる方に近いか?どうしたものか、と片づける手を休めぬまま考えてみるが良案は思いつかなそうだ。あれだ、レモンパイを焼いたりしたら機嫌直してくれたりしないだろうか?怒らせたわけではないけれど。…でもお菓子作りはなかなかにいいかもしれない、ご機嫌取り云々を抜かしたとしても。
さっさと片付けて買い物にでも行こうか、と思い直した時、グイッと引っ張られた。そのままぽすん、と新一の胸に倒れ込む形になり、更にはぎゅうっと抱きしめられる始末。え、どうしてこうなった?!う、嬉しいけど恥ずかしい…!
ボソリと呟けば、再会した日にこれ以上のことしただろ?と笑われたけどね。うん、確かに新一の言う通りなんだけどハッキリ言わないで余計に恥ずかしいわ!!
「し、新一、片づけないと今日寝る場所ない…っ」
「そん時は俺ん家に泊まればいいじゃん。…いいから、こっちに集中しろ」
片付けはまだ半分もいっていない。中途半端に段ボールから出されたもの達はそこら中に散乱していて、文字通り足の踏み場もない状態だ。…それなのに、額に、頬に、鼻筋に落ちてくる新一の唇に逆らうことができなくて。最後に唇に落とされたキスで私は、観念する他なかったのです。
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