爆弾発言少女


神様、仏様。私は何かマズいことでもしたんですかね?

日頃の行いがいい、とは言わないけど、決して悪くもないと思うんだけどなぁ…はぁ、と溜息を吐いて、チラリと隣に視線を移す。そこにはまるで毛を逆立てたネコのように秀さんを威嚇している安室さんと、それをしらっと流し続けている秀さんと、げんなりとした顔で黙りこくっている新一の姿。そして私。しかも4人共、2人一組で手首を手錠で拘束されてます。…どうしてこうなった、割かし真面目に。
つーかね?私と新一はまぁまだいいとして、なんっでFBIと公安まであっさりと捕まって拘束なんてされちゃってるんですかね?!安室さんは知らんけど、秀さんは身体能力高いし強いんだから捕まるはずないでしょーよ。


「…咲羅、さっきから一言も喋ってねーけど起きてっか?」
「こんな状況で誰が寝れんだよ。バッチリ起きてるっつーの」


そこまで神経図太くないわ。
とりあえず、手錠をどうにかしないと脱出もできないよなー…隠し持っていたヘアピンで開けられたりするのだろうか、ドラマではよく見る設定ではあるけれど。上手くいく保証はないけど、何もしないよりは何倍もマシだし試す価値はありだよね。いまだ秀さんへの威嚇をやめない安室さんの声をBGMに、私は手錠の鍵を開ける為に奮闘を開始した。
というかさ、こういう手錠ってどこで調達すんのかね?それとも秀さんか安室さんのモノを強奪したとか?もしそうだとすれば、どっちかが鍵持ってんじゃね?!って思ったけど、それを残すようなヘマはしないか…と、心の中で思いっきり落胆した。
そう上手くいくほど人生ってやつは甘くないよねー。ははん、と自嘲の笑みを浮かべながらもヘアピンを動かす手は休めない。カチャカチャと小さな金属音がしているのだけれど、それはほとんど安室さんの声にかき消されている状態だったりする。なので、恐らく2人は私が手錠をこじ開けようとしていることに気がついてもいないと思う。新一は私と繋がれてるから、もちろん気がついてるけど。

(こんな人達がFBIと公安で大丈夫なのだろうか…)

いや、守ってもらったことも助けてもらったこともあるから、実力は本物だし、頼りになる人だっつーのはよくわかってるけども。安室さんは知らんけどね、公安としての彼とは接触皆無だし。
唯一知っているのは、秀さんをひどく恨んでる?憎んでる?ってことだけだ。まるで子供のように突っ掛かっていくんだよなぁ…どんな因縁があるのか、それを聞くことをしようとも思わないけど。


―――カシャン、

「あ、開いた。」
「うお、すげぇな咲羅…」


適当にやってみただけなのに、手錠は無事にこじ開けられた。外した手錠をそのままガシャン、と床に落とせば、秀さんと安室さんが驚いたような顔をしてこっちを見上げているのが視界に映る。静かになったかと思ったら、いつの間にか安室さんの威嚇が終わってるし。
何です?と首を傾げれば、どうやって外した、と訝し気に問いかけられた。持ったままだったヘアピンを見せ、これで開けましたと自信満々に言えば、安室さんが呆れがちに泥棒か何かですか貴方は…と、溜息と一緒に言葉を吐き出す。泥棒なワケないでしょ、やだなぁ。


「すまんが、こっちも外してくれるか?」
「あいあいさー。…でも時間かかるから、もう少し我慢してて」


もう一度、手錠の鍵穴と対戦すること数分。さっきと同じようにカシャン、という音と共に2人の手を繋いでいた手錠が外れましたー!いやー、適当な知識で何とかなるもんだねぇ。まぁ、こんな時以外は使えるような知識ではないのが明らかだけど。それこそ本当に泥棒が使うようなものだよね。

これでようやく全員が自由に動けるようになったんだけど…私達を誘拐した奴らって、一体何者だ?この4人が関係している奴らといえば、黒の組織しかいないけど―――もう壊滅して、残党もほぼしょっ引くことに成功したって聞いているからその可能性は低いかな。だけど、アイツら以外に思いつく犯人って1人もいないんだけども。
安室さんとちゃんと顔を合わせるのは初だけど、組織にスパイとして潜り込んでいたって新一から聞いているから…うん、やっぱりそれ以外に心当たりなんてない。まぁさ、それぞれ何らかの事件で恨みを買っててもおかしくない職業ではあるんだけど。

…考えても正解なんて見つかりそうにないし、とりあえずそこら中を引っ掻き回してみるとしましょうか。
ぐーっと伸びをしてひとまずはでっかい扉へ近づく。外に人の気配はなし…するってぇと、見張りはいない可能性が高いか?それとも気配を消しているだけかな?…いやいや、見張ってなきゃいけないのにわざわざ気配は消さないか。

(でも気配がないから、って出ようとした所をズドンっていうのはありがちな手かも)

扉に耳を当ててみたけれど、扉が分厚いのか、予想通り誰もいないのかは判断しにくいけれど話し声は聞こえてこない。というか、外の音らしきものが一切聞こえてこないんだよなぁ。あ、ってことは扉が分厚い説有効か。んー…危険を承知で開けてみるのも1つの手だけど、

―――ガチャンッ

お?鍵でも掛けられてるのか?でも扉につけられているのは取っ手のみ、それに鍵穴なんてものは見当たらないから…恐らくは鎖とか南京錠で施錠されてる、って所かな。
うーん、内側から施錠されているだけだったらどうにか壊せそうなものだけど、さすがに外側でやられちゃったら打つ手なしじゃんか。どうしようもない。でも1つだけハッキリしたことがある、施錠されてるってことは―――見張りが誰もいない、ということだ。


「咲羅、何か見つけたのか?」
「見つけた、というか…扉が開かない。外側から施錠されているようだよ」
「げ、マジかよ…」
「さすがにライフルや拳銃ではこの分厚そうな扉は撃ち抜けないだろうね…ね、秀さん?」
「バズーカでもあれば話は別だがな」
「ふん、FBIも役立たずだな」


いや、それは言い過ぎ。というか、貴方だって何もできないでしょーよ安室さん。


「ああ、それともう1つ。多分、見張りはいないと思う」
「どうしてそう言い切れるんです?」
「まず気配が一切しないこと、次に扉が施錠されていること…それらを合わせて考えてみると、見張りがいる可能性はがくんと落ちると思いません?」
「…成程。確かに貴方の言うことは一理あるかもしれませんね」

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