02
安室さんが納得してくれた所で、私は室内の物色を再開した。陽の光があまり入らないから薄暗いけど、広さとか置いてある機械から察するに元は工場だったのかも…うわ、チェーンソーとかまであるよ。何の工場だったのよ、チェーンソーが必要って。…これで扉をぶった切れたりしないだろうか。念の為、秀さんに聞いてみたけれどさすがに厳しいんじゃないか?と微妙な表情をされました。そうか、やっぱり無理か…良案だと思ったんだけどなー。
泣く泣くチェーンソーを放置して、辺りを見回す。すると、数メートル上にバルコニーというか何というか、…あ、ギャラリーとかキャットウォークって言うって昔に聞いたことがあったな。体育館の2階のほっそい通路みたいなやつ、あれです。
まぁ、呼び名はともかく…梯子は錆びて朽ち落ちたのか、上に数段残っているのみだけど何かを足場にして飛び移れば上がることも可能かなー。何もなさそうではあるけれど、でっかい窓があるし、あれを開けることができれば脱出も不可能ではない!…はず。飛び降りれれば、っていう条件があるけどね。
「キョロキョロして、何を探している?」
「ん?あそこ、梯子が朽ちちゃってるから何か足場になるものないかなーって」
「……咲羅、まさかとは思うが―――上がる気か?」
「まさかも何もそのつもり。あ、ちょうどいい棚はっけーん!」
おいよせ、と止めようとする秀さん。言っても無駄だよ赤井さん、と呆れた声を出す新一。とんだじゃじゃ馬娘ですね、と失礼発言する安室さん。
彼らの言葉を右から左へ受け流し、ひょいっと棚へ上がった。うん、このくらいだったら梯子に掴まれそう…掴んだ瞬間に外れることを願いたいけど、ねっ!
「よいしょ、っと…!」
何とか梯子は外れることも、崩れ落ちることもしなかった。ああでも、足が掛けられる場所まで腕だけで上ってたから、若干腕が痛いかも…明日は筋肉痛かなー、とか考えながら、服についた埃を叩いて落とす。そして視線を上げれば、細い通路が数メートル先まで広がっていた。
奥の方にご丁寧に布が掛けられた何かがあるけれど、今確認すべきなのはそれじゃあない。気にならないと言えば嘘になるけど、自分の好奇心よりも優先しなくちゃいけないのは脱出方法の確保、だよな。
通路の奥から目を逸らし、大きな窓へと移す。だが、しらみつぶしに見てもどこにも鍵があるようには見えない。これだけ大きな窓だけど、空気の入れ替えの為に作ったーってわけではなさそうだな…1階には窓がなかったし、これは完全に積んでしまった気がする。
うーむ、どうしたものか。やっぱりあのチェーンソーで扉を切る以外に方法がない気がする、一度、ダメ元でやってみるのはどうだろう。
脱出方法を思案しながら、コツコツと歩みを進める。その先にあるのは布が掛けられた、何か。こういう時、嫌な予感しか感じることのできない私は何となーく布の下に眠っているものの正体を察している。だけど、それはあくまで推測だからね。実際に確かめてみないと真相はわからない…真実を追い求める探偵というのは、そういうものなのさ。
―――バサッ
「……うげぇ、予想通りか」
「おい咲羅!どうしたんだ?!」
「ずいぶんと顔を歪めていますね、何かいましたか?」
私の呟きをバッチリ聞いていたらしい。少し焦りの色を宿した新一と、訝し気な安室さんの声が下から聞こえた。持ち上げた布をそのままに視線を落とすと、言葉こそ発しなかったが秀さんも眉間にシワを寄せてどうした?と表情で語っている。
…これは言葉で説明するより、実際に見せた方が早いかも…高さはあるにしろ、把握することくらいはできんだろ。中途半端に上げた布を思いっきり引っ張り、そのまま投げ捨てた。
露わになったのは、男性の死体―――それも胸をズッタズタに刺された、グロテスクなものだ。
見えるか?と視線を向けると、3人共、何とも言えない顔になっていたから何があるのかはわかってくれたみたいだ。さすがにこのグロテスクさと残忍さは見えないだろうけど。
「咲羅、今そっちに行くから不用意に触るなよ」
「さすがにそんなことはしないよ…信用ないの?秀さん」
「そういうわけではないが、…好奇心の塊だろう、お前は」
ええまぁ、否定はしませんけどね。
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