03
上がってくるのは秀さんだけかと思いきや、新一と安室さんも一緒。
まぁ、下で待っているよりはいいのかな…公安と探偵だから、気にもなるんだろうし。
「思っていたよりひどいですね…貴方が顔を歪ませた理由、わかりましたよ」
「犯人はよっぽどこの男に恨みがあったんだろーな。…どうですか?赤井さん」
「こっちは専門外なのでね、何とも言えんが…硬直の具合から見て、死後3〜4時間といった所か」
「私達がいつ此処に連れてこられたかはわかんないけど、…そこまで時間経ってないはずだし、大体同じくらいかな」
ということは、拉致った奴らとこの男性を殺した犯人は―――同一人物だということだ。そこまでは多分、3人も予想がついていると思うんだけど………問題はその人物が誰か、だよね。
結局は振り出しに戻るって感じです、これじゃあ一歩も進まねぇよこの野郎。
「…今、気がついたけど持ち物は何も取られてないんだね」
「―――言われてみれば、携帯もありますね…これで外部と連絡を取れば良いのでは?」
「連絡を取ろうにも場所がわからんだろう」
秀さんの言葉にグッとしかめっ面になる安室さん。普段は笑顔を浮かべていることの方が多いのに、どうして秀さん相手になるとこうなるのかなぁ?この人。
はぁ、と密かに溜息を吐いてから、カシャリと死体の写真を撮った。それをギョッとした顔で見つめられたけど、…別に観賞用で撮ってるんじゃないからね?!頭いい奴らのはずなのに、何で変な方へ考えがいくんだよ全く!!
写真を撮った理由、それはただ1つ。
何かあった時の為に、と連絡先を交換していた高木さんと美和子さんにメールをする為だ。
2人共、頼りになる刑事さんだからねー助けてもらおうと思いまして。誰がどう見ても殺人事件だもん、この死体。それと私達の拉致監禁もあるし、ね?…っと、その前にこの廃工場がある場所を調べないと…マップのアプリを開いて、位置検索をすると―――あらまぁビックリ。私達がいたはずの米花町からはずいぶんと離れた所にいるみたい、ついでに言うと県を越えちゃってますよ。隣の県だけど。
あっははーと笑って画面を見せると、三者三様…なんてことにはならず、全員似たような顔になりました。そして項垂れちゃいました。
(まぁ、そうなる気持ちもわからんでもない。特に秀さんと安室さんは)
さて、場所もわかったことだし?ちゃっちゃかとSOSメールを送るとしましょうか。場所が場所だから、救出されるまでには大分時間がかかるとは思うけど…されないよりは、いいと考えることにしよう。
ポチポチと現状説明と監禁されている住所、それからさっき撮った写真を添付して送信、っと!どっちでもいいから、早くメールを見てくれると助かる。そして悪戯だと思わないで頂けると、もっと助かるね。今まで2人に悪戯なんてしたことないから、疑われる心配はゼロだと思うけど。一応。
「メール送れたのか?」
「バッチリ。圏外じゃなくて助かった」
「確かにな。あとは高木刑事達がメールに気がついてくれるのを祈るのみ、か」
「…しかし、目的が読めんな」
「そればっかりは赤井と同意見ですね。見張りもなく、ただ閉じ込めただけ…それも隠された死体と一緒に」
「俺達に罪をなすりつけよう、って感じもしねぇしなー…」
新一の言葉にも、秀さんの言葉にも同意する。本当に何がしたいんだろう…私達に恨みを持っている奴、と仮定しても、色々とおかしすぎる。殺したいのならば、何故誰もいないのだろうか?それともどこかに監視カメラがあって私達の行動を見ている、とか?慌てふためく姿が見たいーとかいう、悪趣味な理由で。…自分で考えてみて何だけど、それはないよね。
ダメだ、考えてもやっぱりわからない。神妙な顔つきで議論し始めた新一達を横目で見ながら、チェーンソーで扉を切れないか試してみようと思い立つ。別に議論の輪に入っても構わないんだけど、どれだけ話しても堂々巡りにしかならないと思っちゃってさー。無駄だよ、なんて言うつもりはないけれど。
見た目より割と軽かったチェーンソーを持って、さあ突撃!と意気込んだ時だった。ポケットに入れた携帯がブーブーと鳴ったのは。長さ的に電話か?
「もしもし、伊勢谷です」
『咲羅ちゃん?!良かった、繋がって…佐藤よ』
「うん、わかりますよ美和子さん。電話くれたってことは、メール見てくれたんですね」
『ええ、高木くんも見ていたから目暮警部にも報告してある。住所も書いてくれていたから、これからすぐそっちに向かうけど…』
そこで美和子さんの言葉が不自然に途切れた。何か問題でもあったのだろうか?と首を傾げるけれど、すぐに何のことか思い当たりました。多分合ってるはず―――と口にしたのは、誰も見張っていませんよって言葉。どうやら正解だったようで、美和子さんはホッと息を吐いてそう、とだけ呟く。
そしてすぐにじゃあ切るわね、と言われたけど、その前に欲しいものがあって慌てて口を開いた。欲しいもの、というのは、添付した男性の情報。素性がわかればもしかして、真相に辿り着けるんじゃないのかと思ったから。美和子さんは出発前で慌ただしいだろうに、快く承諾してくれてすぐにメールで送るから!と言ってくれたのでありました。
ピッと通話を切って一息。美和子さんからメールがくるまでは、…チェーンソーを振り回していようか。うん。携帯をしまっていると、オメー何物騒なもん持ってんだ?!って新一に取り上げられた。何を?チェーンソーを。
「物騒なもんって…別に誰かを殺るわけじゃないからな?」
「ったりめーだバーロー!んなことするつもりなら、全力で止めるわ!!」
「咲羅…突拍子もない行動はやめろ」
「一体、何をしようとしていたんですか?」
「扉に突撃しようと思いまして」
ほら、もしかしたら切れるかもしれないでしょう?扉。
にっこり笑みを浮かべてそう言えば、一斉に溜息吐かれたぜ。そんっなに呆れることもないんじゃないかなぁ?失礼な奴らだね、全く。
「この分厚さでは切れませんよ、赤井も言っていたでしょう」
「いやぁ、イチかバチかと思って…」
「いいから大人しくしていろ。連絡もついたんだろう?」
「ん、すぐにこっちに向かってくれ―――お、美和子さんからメールきた」
「佐藤刑事から?」
「上にある死体の男性の素性、調べてもらってたんだ。仕事早いなぁ」
早速、メールを開いてみると…書かれていたのは男性の名前と、どこかで聞いたことのあるような気がする組織の名前だった。そのまま読み進めていくと、殺された彼は少し前に私と新一が捜査協力した麻薬密売の組織の一員だということも書いてありまして。
そこでようやく、拉致監禁した奴らの目的が読めた。なーるほど、組織をほぼ壊滅させられた逆恨みかぁ……多分、秀さんと安室さんは偶然居合わせちゃったから巻き込まれたんだろうね。私達の仲間だと思われて。
あははー、ごめんなさいね2人共。とんだとばっちり喰らわせちゃった。
「ごめん。秀さん、安室さん」
「は?」
「急になんだ?」
「上の死体、私と新一が捜査協力して潰した組織の一員だったらしい」
「……どれだ?」
「つい最近の。ほら、麻薬密売してた…」
そう言うと、新一があーって顔をしてげんなり。だよねー、そんな反応になるよね。私もなった。
「んじゃ赤井さんと安室さんは…」
「とばっちり。偶然居合わせちゃっただけだから」
「成程。それで急に謝罪の言葉を口にしたのか」
「相手の逆恨みでしょう?別に貴方達を責める必要はありませんよ」
呆れたような口調で、呆れたような顔をしてはいるものの、2人共、私達を咎めることはしないらしい。というか、完全に悪いのはあっちだろ、ってスタンスみたいです。そのことにホッと胸を撫で下ろすけれど、…組織の残党を見つけたら制裁を下しそうだなぁと考えてしまった。さすがにそれはしないと思いたい、けど、意外と喧嘩っ早い人達だからなぁ。どうなんだろ。制裁下す前に目暮さん達が捕まえてくれるのが、一番いいと思うけど。
キレたら怖いんだろうな、と苦笑していると、どこからともなくカチ、カチ、と音が聞こえてきた。さっきまでこんな音、聞こえてきていなかったと思うんだけど…自信はない。だって話をしたり、歩き回っていたりして、決して静かな時間などなかったんだから。
目を覚ました時が一番、静かだったような気もするけどその時の記憶すら曖昧だからもう仕方ないね。それより、何の音か確かめないといけないかな…嫌な予感しか、してないのが事実なんだけど。
「伊勢谷さん、怪訝そうな顔をして…どうしました?」
「音、」
「咲羅…?」
「音がするんだ、カチカチって時計の秒針みたいな音」
キョロキョロと辺りを見回しながら口にすれば、秀さんが低い声で「まさか爆弾か?」と呟いた。ああ、やっぱり秀さんもそう思う?私もそれしかないだろうな、って思っていた所だよ。
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