無頓着な引きこもり


私は出不精だ。もちろん依頼人との約束や捜査、あとは誰かから呼び出されれば外には出る。けど、それ以外は基本家に引きこもり。この町に戻って来るまでの2年間もそんな感じで、のらりくらりと生きてきたわけだ。
別に外が怖いってわけでも、嫌いってわけでもない。学生時代はちゃんと学校行ってたし、外に遊びに行ってたりもした。それは事実。でもなー…私、面倒くさがりなんだよ。だから、必要に駆られない限り自分から外出するなんてことはほとんどないんです。
まぁ、博士の家に居候し始めてからはご飯の買い出しに出るようにはなったけど…それも週2〜3くらいのペースだったかなぁ。更に言えば、結構生活のリズムが乱れててなー。昼間は寝てる、ってこともしばしば。これはさすがに哀と博士に心配されたけど。
仕事が詰まって来ると徹夜で報告書作成したり、調べ物したりするから寝るの遅くなるんだ。どうにかしないと、とはずいぶん前から思ってはいるんだが…人間、そう簡単には直らないもんだよね。…いや、私の場合、直す気がないのかもしんねーけど。


―――コンコン

「咲羅、入るわよ」
「ん、…しほ…?どーぞー…」

―――ガチャッ

「全く…また遅くまで仕事していたのね。ほら、起きなさい!工藤くん達が来てるわよ」
「は?しんいち…?」


ふあ、と欠伸をしながら問い掛ければ、今日は土曜日で学校はお休み。私とショッピングにでも行こうと蘭が新一…もとい、コナンを連れてお誘いに来たそうな。ついでに言うと、少年探偵団の子達も来ているらしい。博士も発明が一段落しているらしく、これは皆で出かける感じになりそうだな…いいけど、別に。
適当なシャツを羽織ってリビングに顔を出せば、確かに皆が思い思いにくつろいでいた。…てか、朝から元気だねぇ君ら。


「あ、おはよう咲羅ちゃん」
「おはよう咲羅お姉さんっ!」
「はよ、…蘭、歩美ちゃん」
「何だか眠そうですね、寝不足ですか?」
「んー…寝不足、っつーか…朝方まで仕事してたんだよ。これから出かけるんだって?」
「そうなの、良かったら皆でショッピングにでもと思って。咲羅ちゃんも行こう?」
「いいよ、仕事は一段落したし。シャワー浴びて着替えてくる」


じゃ、と手をヒラヒラ振って風呂場へ。その途中、誰かにシャツを引っ張られた。
んー?と振り向けば、そこにいたのは心配そうな顔をした新一。


「どうした、コナン…何か私に用事?」
「いや、用事っつーか…探偵の仕事、忙しいのか?」
「まぁ、ぼちぼちな」
「…あんま…無理すんじゃねーぞ。心配になっから」
「おー。気をつける」


新一の頭をくしゃりと撫でて、今度こそ風呂場へ。簡単にシャワーを浴びて、着替えを済ませ、もう一度リビングへ向かえば皆は出かける準備が終わっているようだった。よっぽど楽しみなのか少年探偵団の皆は、嬉しそうにしてる。蘭はそれを微笑ましく眺めているみたいだ。
お待たせ、と声を掛ければ、歩美ちゃんが早く行こう!と手を引っ張って来て。何だかわからないけど、どうやら私はこの子達に慕われているらしい(新一談)。慕われるようなことをした覚えは全くないんだが、まぁ悪い気はしないし。子供に好かれるって案外嬉しいモノだったりするんだ。


「んで?何処に行くんだ?」
「洋服見に行こうかな、って思って」
「蘭のか?」
「ううん、咲羅ちゃんのよ。前から思ってたんだけど、もう少し女の子らしいの着ようよ!きっと似合うから」
「ぅえ?!いやいやいや、絶対似合わないから…!」
「歩美も似合うと思うよ?咲羅お姉さん美人だもん!ね、哀ちゃん」
「そうね…咲羅はもう少し自分のことに関心を持った方がいいと思うけれど」


志保までそんなことを言うのか…?!しまいには、光彦くん・元太くん・博士にまで言われてしまい、今日の目的は私の洋服探しに決定致しました。洋服なんて着られればいいし、それに仕事柄動きやすい方が有難いんだけどなぁ。
そりゃあね?私だって生物学上は女だし、蘭が着ているような可愛い服が嫌いってわけではないさ。もちろん。けど、元々の性格がこんなだし、口調も男っぽいし、絶っっっっ対に!似合うわけがないんだよ。
…本当に小さい頃は、母さんの趣味でそういう服も着てたみたいだけど…新一達と遊ぶようになってからは、ほとんど…というか、全く着なくなっちまったしなぁ。スカートなんか制服でしか着てた記憶ない。


「(でもまぁ…いいか、こういうの久しぶりで楽しいし)」
「ねぇ咲羅ちゃん、こういうのはどう?」
「んー?…あ、可愛い」
「こういうのだったら咲羅ちゃんも好きなデザインでしょ?」
「うん、あんまりフリフリじゃないし」


蘭が持って来てくれたのは、シンプルなワンピース。花柄だけど、まぁこれくらいなら…問題ないかなー、って感じ。丈は短めだけど下にパンツを履けば、全然問題なさそう…てか、そうやって着るもんなんだろーしね。あとストライプ柄のワイシャツとVネックのシンプル且つ、シックなセーターの組み合わせ。どっちかっつーと、私はこっちのが好みだったりする。
蘭曰く、こういう服の場合はパンツでもスカートでも合うんだそうだ。でもせっかくだから、ってスカートまで持って来なくても…!!そして歩美ちゃんと一緒ににこやかに試着を勧めるな!…と言いつつも、蘭のお願いには昔っから弱くてな…大体聞いちゃうのがオチなんだ。


「…こんな感じでいいのか?」
「わぁ、やっぱり!咲羅ちゃん似合うー!!可愛いよ」


どっちも着る羽目になったんだけど、皆の反応がすこぶる良かったのは花柄のワンピースとパンツの組み合わせだった。特に蘭なんか絶対こっち!とゴリ押ししてきてたりする…1着、くらいなら…こういうの持っててもいいかな。着る機会はあんまりないだろうけど、一応女だし。服自体、ここ数年新しいモノ買ってないしいい機会だよな。
決めてしまえば、あっという間な私は蘭にオススメされた花柄のワンピースを購入。あと個人的に気に入っていたVネックの黒いセーターとストライプ柄のワイシャツも買ったんだ。こっちは仕事でも使えるしな。パーカーとジーンズで依頼人に会いに行くより、ずっといいだろう。こっちの方が。

脱いでしまうのはもったいない、ということでワンピースを着た状態で買い物続行ってどういうことだ。てか、私は蘭や歩美ちゃんのお願いに弱すぎるだろう…!髪の毛までちゃっかりセットされちまったし。
いや、もうこの際、着るのはいいとしよう。仕方ない。でもな?こういう女っぽい格好して、いつもの口調で喋ってみろ!絶対にびっくりされて二度見されるだろうが!!


「…今更ながら、言葉遣い直した方がいい気がしてきた…」
「あら、そうかしら?それが咲羅の個性じゃない。それに依頼人に合う時はいつもの口調ではないんだし…いいんじゃない?」
「スカートはいてこの口調はどうなの…」
「そんなに気にすることではないと私は思うけど。案外、誰も気にしてないんじゃないかしら」
「そんなもんかなぁ」


…ま、気にしても仕方ないか。志保の言う通り、私は私だしなー。
私の買い物が済んだ後はお昼を食べたり、アイスを食べたりして夕方まですっかり遊び歩いたわけで。蘭や私はこれくらいどうってことないけど、さすがに小学生の皆は疲れるよなぁ。新一と志保も少し、顔に疲れが出てる気がする。これはそろそろお開き、って所かね…時間も時間だし。


「そうだ!咲羅ちゃん、写メ撮ろう!」
「へ?い、いいけど…」
「コナンくん、お願いしてもいい?」
「うん!…じゃあいくよー?はい、チーズ!」


その写メはあとで送ってもらうことにして、今日はそのままお開きになった。
はー…寝不足で体も疲れてるけど、なーんかいい気分転換になったかも。また仕事を頑張ることが出来そうだ。



(…あら?工藤くん、その待ち受け…)
(ッ?!は、灰原、オメー見たのか…?!)
(失礼ね、"見えた"のよ。…でもそう、工藤くん貴方…)
(ちっ、ちげーよバーロー!!)

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