わかりにくいようでわかりやすい


 side:コナン


少し前から、咲羅の様子がおかしい気がする。具体的に言うとどんな風に?と聞かれたら、何つーか…上手く言葉にできねーんだけど。でもおかしいんだ。よそよそしいって言えばいいのか?そんな感じで。
けど、蘭や園子とは普通に話してる。灰原、博士、元太、歩、光彦とも何ら不自然な様子じゃあない。…なら、どこがおかしいのか?んなの、

俺と話してる時に決まってる。

別に露骨に避けられてるとか、話してくれねぇとか、そういうわけじゃない。…いや、避けられてる節はあんのか…?…あ、あれだ。灰原や博士が部屋に戻って、俺と2人きりになりそうになるとそそくさと出ていくんだよな。最初は用事でもあんのかと思ってたけど、それが何回も何回も繰り返されたら、誰でも避けられてるんじゃね?って疑うだろ。
それに、だ。アイツは昔から誰と話す時でも必ず相手の目を見て話してた。それなのにここ最近は、俺の目を見ようとしねぇんだよな。見たとしてもすぐに逸らしちまうしよぉ。
何だっつーんだ、ほんと。


「(俺が知らぬ間に何かしちまった、とか?)」


いやいや。それはねぇ………はず、多分。きっと恐らく。咲羅の様子がおかしくなり始めた時は、あんまり会ってなかったはずだ。会ってたとしても事件の話を少ししてたくらいで、その時は至って普通。いつも通りだったと思う。…それともその会話の中で咲羅を傷つけるようなことを言っちまった、とかなのか?覚えはねぇけど、気が付いてないだけだっつーことはたくさんあるだろうしな。
あーっクソ!考えてもわかんねぇし、考えれば考えるほどこう、…もやもやしてくるっつーか、気分が悪い!!目を見て話してもらえないことが、さり気なく避けられることがこんなにダメージでかいとは知らなかった。
つーか、これが他の奴だったらそんなにショックじゃねぇと思う。それなりには受けるだろうけど、ここまで悩まねぇと思うんだよな。それって、やっぱり…


「それだけ貴方が咲羅を好きだってことなんじゃない?」
「…オメーはっきり言ったな…」
「あら、その方がわかりやすくていいでしょう?それに、気が付いたのはここ最近の話じゃないんじゃないの?」
「おー。ちっせぇ頃から、だな。いつからなんてはっきり覚えちゃいねぇけど、昔からだっつーのはわかる」


それこそ物心つく前から、俺は咲羅が好きだった。年上だとかそんなの関係ねぇくらいに好きだと思ったし、咲羅以外の奴を好きになることだってなかった。他の奴らに見向きもしないくらい、アイツは俺の心を捉えて離さねぇ。
高校に入学したら気持ちを伝えよう、と密かに意気込んでたのに…その前に行方をくらやましやがったんだよな。で、また会えたかと思えば俺は黒の組織に毒薬を飲まされて体が縮んだ後ときた。…なんだよ、このタイミングの悪さ。頭抱えたくなるぜ。


―――ガチャッ

「あら、おかえり咲羅」
「ただいま、志保……あ、新一、来てたのか」
「…んだよ。俺が来てたら都合悪いのか?」
「い、いや、そういうわけじゃないけど…わ、悪い、仕事あるから部屋行くっ!」
「あっおい咲羅!!」


帰ってきたと思えば、即行自分の部屋に行くってどういうことだよ!ぜってー捕まえて吐かせてやる!!!
リビングを出て階段を駆け上がれば、ちょうど咲羅が部屋に入る所だった。ドアが閉まる前に腕を掴んでやれば、ひどく驚いた顔をした彼女と目が合う。


「し、しんい、ち…!」
「ハッハァ、…何で逃げんだよ」
「べ、つに逃げてない。本当に仕事が―――」
「今日だけの話じゃねぇよ。ここ最近、ずっと俺のこと避けてんだろ?目も見ようとしねぇし…何かオメーにしちまったか?」


逃げられないように腕を掴む力を強めて問う。その間も咲羅の目は一度も俺を映そうとはしない。けど、俺の問いに明らかに動揺はしていた。何かあるのは、間違いねぇ。


「…なぁ、咲羅」
「避けてた、わけじゃないんだ。で、でもどんな顔して新一に会えばいいかわからなく、て、それで、なるべく2人きりにならないようにしてた、んだけど…!」
「は、…?」
「ダメ、なんだ、新一を見るとドキドキしちゃって、今までみたいに話すことができなくて」


お、おいおい、ちょっと待てよ…俺が想像していたような理由じゃねぇぞ?!


「今の新一は、小さくなっちまってるのに、それなのに…」
「咲羅、ちょっとこっち向け」

―――グイッ

「っ、あ……!」
「!!」


振り返った彼女の顔は、りんごみてーに真っ赤だった。耳どころか、首まで赤くなりかけていて…それは初めて見る幼なじみの表情。その表情にドキリと心臓が跳ねて、さっきの言葉に鼓動がどんどん早くなって、もしかして―――という希望が、浮かんでは消えていく。
期待したらダメだ、とはわかってるのにこの反応を目の前で見ちまったら、そんなの無理だ。期待、せずにはいられねぇ。ふっと咲羅の顔が伏せられて、どうしたんだ、と思う間もなく掴んでいたはずの腕はするりと抜け、彼女の姿は部屋の中へと消えていった。
部屋のドアが閉まってどれくらいの時間が経っただろう。俺は力が抜けたようにドアに体を預け、そのままズルズルと座り込んだ。鼓動が早い。顔が、熱い。予想もしていなかったアイツの反応に、表情に、体温は上がっていく一方だ。


「うそ、だろ…?!」


ハッキリとした言葉はなかった。けど、あの反応からして嫌われてるってことはなさそうで。これは少なくとも脈アリ、って思ってもいいのか?
ずっとずっと、それこそ幼い頃から抱いていた恋心だ。アイツが今、揺れ動いてるんだとすれば…そこにつけこんじまうぜ?少しでも咲羅の心に入り込む隙があるんなら、それを逃すわけにはいかねぇよな。


「…待ってろよ伊勢谷咲羅。俺は―――」

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