第三者から見た2人の関係
side:コナン
ピンポーン、とインターホンを鳴らした。だけど、いつまで待っても誰も出てくる気配がない。おっかしいな、いつもだったら昴さんか円香さんのどっちかが出てきてくれるんだけど…まぁ、円香さんは仕事で出かけてる確率が高いけど。
でも昴さんは今日、確実に家にいるはずだ。メールで行くことは伝えてあるし、この時間だったら確実にいますよって書いてあったはず…携帯を取り出してメールを開いてみれば、やっぱりそう書いてある。間違いはない。だったらいないわけがないんだけど、急用で出かけちまったのか?いやいや、それだったら絶対に連絡が入ってるはずだよな?そういうとこ、案外マメな人だし。
(…まぁ、合鍵持ってっから入れるけど)
行くことは伝えてあるし、ということで、俺は合鍵を使って勝手に入ることにした。勝手って言っても、本来は俺の家なんだけどな。住んでないだけで。―――っと、あれ?靴はあるな…円香さんが仕事の時に履いてる靴もあるし、2人共いるんじゃん。
じゃあ何で応答がねぇんだ?何かあったのか、とちょっと不安に思いながら歩みを進め、リビングに入ると…ドアが開いた音に気がついた昴さんが振り向いて、口元に人差指を当てた状態で「しー」と、唇が形作る。
「すみません、出られなくて」
「ううん、ボクこそ勝手に入っちゃって…あれ?円香さん?」
ソファに座っている昴さんに近寄って、ようやくわかった。
インターホンを鳴らしても誰も出てこなかった理由も、昴さんが「しー」と言った理由も。
「寝てる…?」
「ええ。どうやら疲れているようで、…本を読みながら寝てしまったみたいです」
「そうなんだ…だから応答がなかったんだね」
昴さんの太腿を枕にして、円香さんがスヤスヤと寝息を立てていた。うん、この状態じゃあ昴さんも動くことができないよね。仕方ないや。それにしても俺が入ってきても起きないなんて、ずいぶんと深く眠ってるんだな。近くで会話してても起きないし(一応、小声だけど)。昴さんの言う通り、疲れているんだろう。
ふっと視線を上げた先には、とても優しい顔で円香さんの髪を梳いている昴さんの姿があった。
慈しむような、はたまた愛しいものを見るような目で…それはもう昴さんというより、赤井さんのように見える。どっちにしたって初めて見る表情で、珍しいなぁと思ったのは確か。こんな顔、できるんだな。この人。
俺の知っている赤井さんは笑いはするけど、基本は表情にあまり変化がない人だ。冷静沈着って感じかな。だから尚更、こんな風に笑えるんだってことにビックリしてるんだと思う。
(何となく察してはいたけど、本当に大事なんだな)
今思えば、円香さんを見る赤井さんの目はいつだって優しかった。それは『沖矢昴』になってからも一緒で、ふとした時に見せる笑みとかはこっちが赤面しそうになるくらいに、甘い。…多分、本人は気がついてない。完全な無意識だと思う。あれは絶対に。
その片鱗を見たのは確か、…ああそうだ、円香さんが組織に呼び出された時だ。
「ん、…んぅ」
「―――あ、…ボク本だけ借りて帰るね!」
「ああ…すみませんね、お茶も出せずに」
「大丈夫。円香さんの傍にいてあげてよ…赤井さん」
「!…ああ、そうするよ。すまんな、ボウヤ」
リビングを出る瞬間に見たのは、愛おしそうに円香さんの髪に口づける昴さんだった。胸焼けしそうなくらいだけど、まぁ…あの2人が幸せなら、別にいいかもなって思うくらいには毒されてるのかも。