陸の孤島
銃声の音が辺りに響き渡っている。ああもう、あっちにショットガンとかマシンガンとか持ってる奴がいるとは思わなかったな…!私が持っているのはグロック22一丁のみ、どう考えたって太刀打ちできる代物ではないのです。
さあ、どう応戦するかしっかり考えていかないと、私の命がなくなるだろう。ふう、と息を吐き、隣に座り込む少年―――怪盗キッドを視界に映しながら、数十分前のことを思い出していた。
―――今から数十分前。
私はFBIの仲間と共に、このビルの周辺へと来ていた。とある人物を尾行して。その人物は黒の組織と関係している可能性が高く、前から目をつけていたの。そいつが今日、動く可能性があるという情報が入ってきたんだけど…そこでまさかの展開が起こったのです。
「なんっで君がいるんだ、キッド…!」
「アンタ名探偵の…何で此処に?!」
「それは私のセリフよ!いいから早くこのビルから、」
「見つけたぞ、あの男が侵入者だ!!」
「げっ?!」
「ああもう…っ!こっちに来て!」
何故かビル内にいたキッド(白のスーツではなかったけど)と出会い、更に言えばキッドは追われている最中でした。どうしてこんな時に限って追われてるの?君は!!キッドはそんな失敗しない奴でしょうに!これじゃあ私達の計画も丸つぶれだわ…っ!
急いで仲間達に撤退の指示を出し、本部に戻って報告をしてもらうように伝えた。私は諸事情で行けない、と説明して。もちろん、何があったんですか!と言われてしまったけど、詳しく説明している暇なんてないから通信をぶった切らせて頂きました。ごめんなさい。
そして今に至ります、少し前から銃撃戦が始まりました。バカでしょ、コイツら!
「わ、悪い、何か巻き込んじまったな…」
「ええ、本当に大迷惑よ。偵察するのは勝手だけど、見つからないでよね?!」
「いや、本当に申し訳ない…!」
「はぁ…その喋り方だと何か調子狂うわ。君、キッドで間違いないのよね」
「ああ、間違いないよ。今日は偵察だけだから、あの格好してねーけど」
前に助けてもらった時に素を出してしまったから、と今はこの喋り方みたい。別に構わないけど…キッド=敬語ってイメージだったから変な感じがするわ。
「何も危ない組織に盗みに入らなくたって…」
「仕方ねーじゃん!ここに俺が狙ってる宝石があるんだから…」
「…君、1人で来てるの?」
「いや、親代わりっつーか…そういう関係の人が外で待機してくれてっけど」
「連絡手段は?」
「あるにはあるけど、助けは求めらんねぇと思うぜ?」
それもそうか…この銃撃戦が行われている中、突っ込んでくるような考えの持ち主なんてそういるわけないわよね。自分だったら突っ込んでいくな、とか思ってたけど、それはきっと普通ではないのだろう。うん。
さーて、どうしたものか…私も彼も1人きり、助けを求めるにしたって易々と危険に晒すわけにもいかないし。あれだな、詰んだな、これは完全に。あはは、とつい苦笑が漏れる。
「アンタこそ誰か助け呼べねーの?さっき、通信繋いでたじゃん」
「撤退させたに決まってんでしょ、私達の正体がバレるのはマズいのよ」
「え、じゃあアンタ1人…?!」
「そ。残念ながらね」
ジャケットのポケットに入れていた携帯を取り出せば、ジョディやらボスやらキャメルくんから連絡が入っていた。うん、電話なんて取れないってことわかって…!あ、秀一からもかかってきてるじゃん!きっとあとでお説教タイムになるんだろうなぁ…1人で残るなんて無茶してるってことくらい、ちゃんと理解してるけどどうしようもなかったんですよこうする以外!
逃げても良かったけど、キッドの姿を確認しちゃったし、この子を銃弾が飛び交う中に残していくわけにもいかんし。それで殺されました、とか心が痛むし、目覚めも悪い。だから何とかこの子も連れて逃げ出したい所なんだけど、果たして銃弾の雨を避けきれるかどうかが問題だと思うのです。一番の。