いかなる時も君を


「円香が?」
「ええ、そうなの!とある人物を追っていたんだけど…急にあの子から撤退の指示が入った、って」


今日は帰れないかもしれない、と円香から連絡をもらっていた。だから、夜遅くなっても帰ってこないことを不思議には思わなかった。
だが、それはジョディからの連絡で一変する。



 side:赤井



同僚のジョディから連絡があったのは、日付が変わって少し経った頃。円香は帰ってきているか、と。そう問いかけてくる声は焦っていて、落ち着きがない。何かあったのか、と察するには十分だった。
とにかく合流する、とだけ告げて電話を切り、沖矢昴の仮面は被らないまま工藤邸を飛び出した。それがどんなに危険なのかはわかっている、だがFBIの仲間がいる場所に―――偽りの姿で行くわけにもいかんだろう?





「シュウ!」
「おお、来たかね赤井くん」
「それで状況は?」


挨拶もそこそこに今、どういう状況なのか問い質す。
ジョディの話によれば、円香は数人を引き連れ黒の組織と関係している可能性のある人物を追っていたそうだ。そいつを追ってアジトと思われるビルを突き止めたまでは良かった、だが、何か問題が起こり、銃撃戦―――と言っても、あちらさんが一方的にらしいが―――へと発展してしまったらしい。
そのすぐあと、今すぐ撤退して本部へ戻れと彼女から指示が入ったそうだ。だが、アイツは諸事情があって行けないと残し、そのまま通信を切った。何度呼びかけても応答してもらえず、泣く泣くその場を後にしたというのが全てらしいな。そしていまだに彼女は戻ってきてはおらず、携帯も繋がらない。
出る可能性は低いだろうが、念の為に俺もかけてみたものの…状況は同じ。コール音は聞こえるが、留守番電話に切り替わるアナウンスが流れた。成程、確かに繋がらないな。コール音が聞こえるということは、携帯自体は無事だということだが。


「電話に出られないとなると…銃撃戦に巻き込まれたか?」
「彼女と共に捜査に行っていた者達も、その可能性が高いと言っているよ」
「でしょうね。円香は銃を?」
「持っていっているはずよ。でも通常装備のグロック22だけ…彼らの話だと、向こうはショットガンやマシンガンを持っているそうだから太刀打ちは難しいと思うわ」
「ふむ…」


円香1人ならばどうにかして潜り抜けられるはずだ。だが、それをせずに仲間だけを撤退させた。しかも諸事情があって行けない、というのはどういうことなんだ?
しばらく考え込んで、とある推測が頭を過る。まさか…あのビルの中に一般人がいたのか?もしそうだとすれば、ビルの中に残る理由にも説明がつく。一般人がいるのならば、銃弾が飛び交う中を逃げるのも難しくなるな。


「ええっ?!円香は1人じゃないかもしれない?!」
「ど、どういうことだね赤井くん」
「彼女1人ならば、いまだに戻ってこないのは不自然すぎる。だとすれば、誰かが傍にいる可能性が高い」
「…そうか、一般人が…!」
「ご名答。何故、そんな所に一般人が―――と思いますが、その線が濃厚だと思いますよ」


…となると、助けに向かった方がいいだろう。彼女は嫌がるかもしれんが、俺の知らない所で怪我をされても困る。そうでなくとも自らのことは省みない性格をしているのだから。一般人が傍にいるのなら、確実に無茶をするのは目に見えているからな。自分がどれだけ傷を負ったとしても、ただひたすらに助けることを望むような奴だ。

(それが己の命を縮めていると、いつ気がつくのか…)

思わずつきたくなった溜息を飲み込み、どうするべきか話をしている2人にビルの場所を聞き出す。今回の捜査に加わっていなかった俺は、詳しいことを何も知らないからな。
念の為にライフルを積んできておいて正解だったな…使わないことを祈りたいが、現状を聞く限りではそれも難しいだろう。いまだに銃撃戦が続いているのなら、相手の銃を撃ち落とすのが最善の策だ。


「では、いってきます。何かあればすぐに連絡しますので」
「頼んだぞ」
「シュウ、私とキャメルも行くわ!」
「…わかった」
「飛ばしますので、しっかり掴まっていてくださいね!」


キャメルの車に乗り換え、彼女がいるであろうビルへと急ぐ。
嫌な予感ばかりが過ぎていくが、俺が信じないでどうする…大丈夫だ、無茶をする奴ではあるが運も強い。きっとピンチを乗り越える策を、考えているはずだ。


「必ず無事でいる、…そうだろう?」
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