それは所謂、嫉妬心
夕飯も、片付けも、お風呂も済んで私の部屋のベッドで秀一とのーんびりくつろいでいると、そういえば、と声を掛けられた。
何かあったのか、と読んでいた小説から視線を上げると、
「安室くんから告白されたというのは本当か?」
爆弾発言を投げられ、見事に被爆しました。何でこの人がそれを知ってるの?!
「………え?」
「その反応を見る限り、本当のようだな」
「ちょ、ちょっと待ってください?!や、やだなぁ、そんなことあるわけ…」
「嘘はいけないな。…そんなわけあるだろう?円香」
「……はい」
何とか誤魔化そうとしたけれど、あえなく撃沈しました。やっばい、マジで怖いです。秀一さん。もう冷や汗ダラダラで、寝転んでいた体を起こし自然と正座になるくらい。これはもう色んな意味でのお説教コースになりそうで今からガタガタ震えそうなレベル。
でも本当にどこからバレたの?降谷が自分から言うワケ…ありそうだけど、アイツは秀一の連絡先を知っているわけがない。だとすれば…話の出所はもうあの子しかいないじゃないか!
「ボ、ボウヤからですか…!」
「よくわかったな」
「そりゃああの時、一緒に出かけてましたから。も〜あの子も何で言っちゃうのかなぁ…!」
私の心の底からの叫びに、秀一は素知らぬ顔。
「言う必要がないと判断したのはわからんでもないが…気分が悪いな、自分のものに手を出されるのは」
「あれ、貴方に対する嫌がらせの一種なんじゃないですか?本気で私のことを好きなわけじゃあ…」
ない、と続くはずだった言葉は、不自然に途切れた。というか、秀一に唇を塞がれて続けられなくなった、というのが正しいと思うけれども。
話している最中だったから、もちろん口は開いた状態であっという間に舌を絡めとられて深く唇が重なり合う。角度を変えて何度も、何度も貪るように繰り返されて、ようやく離れて行った時にはもう息も絶え絶えな状態だった。ほんと容赦ないなこの人…!
「ふ、は…ぁ、」
「嫌がらせにしては手が込みすぎている。彼ならやりそうではあるが―――あれは本気で言っているぞ」
「え…?」
「安室くんはお前を本気で気に入っている。奪いに来るぞ、必ずな」
酸素の足りない状態で何を言われても、ちゃんと理解できていない気がするけれどでも…本気で心配してくれている、というのはわかった。というか、多分嫉妬してくれているんだと思う。そんなことを考えながらぽすん、と寄りかかればぎゅっと抱きしめられて、ホッと息を吐く。煙草の香りと、微かな硝煙と火薬の匂い。よく知っている秀一の、香りだ。
呼吸が落ち着いてきたのと同時に、うつらうつらと眠気が…ここ最近、根を詰めて仕事してたからかなぁ。支障が出ないように少しでも睡眠はとっていたつもりだったんだけど、ダメだ。秀一の傍にいると安心しちゃって、すぐ眠くなってきちゃう。
「この状況で寝ようとするとは…なかなかに大物だな」
「ん、…ごめんなさい」
「全く、人の気も知らんでよくもまぁ…」
「どういう、意味です…?」
「いい。ほら、寝るぞ」
そのまま横にされて、布団をかけられてしまえばもうあとは落ちていくだけ。夢の世界へ旅立つ寸前に紡いだおやすみなさい、は果たして彼に届いていたのだろうか?
「―――おやすみ。良い夢を」