アメリカと日本を繋ぐ


久しぶり…というわけではないけれど、アメリカに戻ってきました!1人でだけど!
何故、こっちに来たかと言いますと本部からの招集なんですよねぇ。なかなかに厄介な案件だから、手伝ってほしいと。どうやらその相手というのが腕利きのスナイパーらしくて。それだったら私より秀一が行く方が理にかなっているはずなのだけれど…何故か私が推薦され、行くことになりました。本部も「アイツの相棒なら安心だ!」とか言ってくれちゃったそうです。
おい、ちょっと待て。相棒なのは否定しないけれど、だからといって銃の扱いに長けているわけではないんですけれどもね?!


『もしもし』
「あ、秀一ですか?今、アメリカに着きました」
『そうか。お前なら大丈夫だと思うが…気を付けろよ』
「最善は尽くしますが、やっぱり貴方の方が適任だったと思うんですけどね」


さすがに不安ですよ、私。
ポツリ、と零れてしまった不安。ハッと口を塞いだ時には時すでに遅し。繋がっている彼の耳にも、バッチリ聞こえてしまっていて…電話の向こうでフッと笑う声がした。


「…何ですか」
『円香、お前に銃の扱いを教えたのは俺だぞ?何を不安がる』
「だって、…事情があったとはいえ、貴方の代わりですよ?!FBIが誇るスナイパーの代わりですよ?!」
『電話口で叫ぶな…うるさい』
「ぐ、すみません…」


そう。さっきは何故か、と説明をしたが、今回彼が来れなかったのは日本での任務があったからだ。そっちでの任務も腕利きのスナイパーが必要なもので、成功させる為に彼をアメリカへ行かせるわけにいかない…そんな経緯があって、私が候補に上がったらしい。
ちなみにボスと秀一の推薦だそうです。それこそちょっと待て、ですよね!本当に!!もう溜息つきたくなる…。今すぐ日本に帰りたい衝動に駆られます。
とは言え、尊敬する人達に推薦してもらった手前。このまま逃げ帰るような真似はしたくない、何も成果を上げずになんて以ての外だ。彼らの期待を裏切らない為にも、ここはできる限り踏ん張って任務を成功させなければならないということ。携帯を握っている手にぎゅっと力を込めた。


「すみません。泣き言を言いましたね…やってやりますよ、だって私は」


目を閉じ、再度開ければ―――そこには澄み渡る青空が広がっていた。


「赤井秀一、…貴方の隣に立つ女ですから」
『ク、…お前はなかなかどうして、男前だな?』
「ふふ。とにかくこれから本部へ行って、資料などを確認してきます」
『ああ、終わったら俺とジェイムズに連絡を寄越せ。いいな?』
「わかっています」
『なら…いってこい。愛している、円香』
「ッ!」


突然の愛の言葉で固まっている間に、電話はプツリ、と切れた。…えっ切れた?!あの人、言いたいことだけ言って切りやがったの?!嘘でしょう!まぁ、同じ言葉を返せと言われても困るだけだからいいんだけど、別に!
ああもう、これから本部へ行かなくちゃいけないのに、顔が熱くて仕方ないんですけど。なに爆弾落としてくれちゃってるんですかね?あの人は。はぁ、と呆れの溜息が出るものの、頬は赤く染まっているだろうし、口元はだらしなく緩んでしまう。

(だって、…だって愛している、だよ?そんなの)

嬉しくないわけがない。愛しくて仕方ない人にそんなことを言われて、怒れるはずもないじゃないか。離れている今だからこそ、余計に響いてくるものもあるのかもしれないなぁ。
ふふ、と笑みを零して、とっくのとうに通話が終了していた携帯をカバンの中に仕舞い込む。恥ずかしくて仕方なかったけれど、あの言葉はアメリカにいる間のお守りとなってくれそうだ。そんなことを考えながら、胸元で揺れているであろう指輪にそっと服の上から触れる。お守りが2つ、か…これはなかなかご利益がありそうね。


「私も―――愛していますよ、秀一」


空を仰いで呟いた言葉は、甘く蕩けそうな程の声音だった。
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