A secret.


「ていうかさ、予想してたんじゃないの?君達は」


アジトに見えないような廃屋。でも中は普通にくつろげる空間になっていて、いつの間に作り替えたんだこの野郎と言いたくなる程に綺麗だった。
そこにいるのはルパン・次元・五右衛門・私の4人だ。そのうち不二子さんも来る、とルパンが嬉しそうに教えてくれたけど…今の私はそれ所ではない。相も変わらずパソコンを操作して映像を解析しながら、チラッと2人―――ルパンと次元を見れば、素知らぬフリをされた。


「…ま、何かしら仕掛けてくるかもしんねぇなぁとは思っちゃいたが」
「で〜もそれは工藤ちゃんも一緒だろ?」
「否定はしない。…けど、まさか爆弾を仕掛けてくるとは思わないじゃない」


それに私達があの場所に姿を現す、と知られているとは思わなかったし。


「ああいう人間は、地獄の果てまで追ってくる。居場所を突き止めるなんざ簡単さ」
「…それは厄介だこと」


今から数日前―――街をぶらりと歩いていた私は、何故かルパンと次元に遭遇した。日本で、それも米花町で遭遇するとは思っていなかったからそりゃあもう呆然とするわよね。そのまま他人のフリができていれば、と今では思わなくもないけど、思いっきり顔に出ちゃっていたみたいでね…ルパン達を追いかけていた男に私も彼らの仲間だと誤認識されちゃったみたいでさぁ。そのまま追いかけられる羽目になりました。
その時は上手く撒けたみたいで事なきを得たんだけど、…どうやらいまだに諦めていないらしくて。そして私も人数にカウントされてしまっていることから、ルパンから1つの提案を出されたの。解決するまで自分達と組まないか、ってね。

今、ルパン達はとある宝石を狙っているらしい。それを所持していると思われるのが、今日潜入したパーティーの主催者・赤城(とか何とか…名前覚えてない)。
けれど、それを狙っているのは何もルパン達だけではない。その宝石は裏の世界じゃ有名な代物らしく、色んな組織が狙っているという。つまり、ルパン達を追っていたのもその色んな組織の中の1つ―――ということ。
ただでさえ、組織同士の攻防が避けられない状況だというのに泥棒に狙われるなんてとんでもない!ということなんだと思う。だから、盗まれる前に殺してしまえっていう算段なのだろう。もしくは、組織に引き入れて盗んでもらって自分達の物にする、とかね。どちらの目的にしろ、ルパン達は従うつもりはないとカラカラ笑っていたけれど。

『アンタなら自分で何とかできる、と思ってるかもしんねぇけど…裏の人間はそう甘くねぇ』
『そういう奴らを相手にしてきているつもりだけど?』
『ははっそれは俺だって知ってるさ。…俺が言いたいのは、裏の人間は一人消すことに何の躊躇もしねぇってこと』
『……』
『ターゲットは何もアンタだけじゃねぇってことよ、工藤ちゃん。FBIだと知れればもっと被害はでかくなるんじゃねぇかなぁ』
『仲間も狙う、ってこと?』
『人質にとることだって考えられる』
『君達―――…いや、君は何が目的なの?』
『俺達と組まねぇか?』
『おいルパン、』
『なぁ、工藤ちゃん。オメーにも悪い話じゃないと思わないかい?』
『……』
『俺達は目的の物が手に入る。オメーは犯罪を阻止できる…立派な同盟じゃないの〜』

はい、回想終了。まぁ、大分不本意ではあるけれど、そういうわけで今に至るってことです。
半ば無理矢理、とも思うけれど…でもルパンの言っていることに異論はなかった。確かに裏の世界で生きる奴らは容赦ない、それは黒の組織を追いかけている今、身に染みていることでもあるしね。証拠を消す為なら、どんな手を使ったってやり遂げるでしょう。どれだけの犠牲者を出そうとも、ね。

後々、詳しい話を聞いていけば本部の先輩方から聞いた覚えのある麻薬組織の名前まで出てくる始末。それを聞いて言われた通り、悪い話ではないと思ったのは秘密。

本部から日本にいる私達に要請が来るだろう、とその話を聞いた時、確信したの。昔から追っていた組織だと聞いているし、何よりもなかなか尻尾を掴ませてくれない厄介な組織、だともね。ならば尚更、この機会を逃しはしないだろうというのは、安易に予想がつく。
私の顔が知られてしまった以上、FBIとして動くには些か不便なのも確かなのよね。面倒なことになるのは目に見えてるし、それ以上に秀一達を余計危ない目に遭わせてしまう可能性も高い。だったら、私は別ルートで組織を追うのがベスト。そう思ったんだ。


「…ま、FBIが追っていると気付かれたら…雲隠れされる可能性、高いしね」
「そーいうこった。今の所、まだ気がついちゃいねぇだろうが…あんまり大人数で動くとマズイだろうなぁ」
「ふむ。では我々は、その前に動くということでござるか?」
「もっちろんだ!そうじゃねぇと、あの宝石が盗られちまうからなぁ」
「で?具体的にはどうするんだ?」
「まぁ待てって、次元…」


にしし、とルパンが笑った。何か裏がありそうなその笑いに、次元と私は嫌な予感がする…と冷や汗をかく。コイツ、何か仕掛けたのか?厄介なことにならなければいいけど、と溜息を吐きながらパソコンを片づけていると勢い良くドアが開いてルパンのなっさけない声が室内に響き渡る。
誰が来たのか、なんて彼の声だけですぐ察することができるのもどうかと思うんだけど…でもまぁ、あんな声で更に「不二子ちゃ〜ん」なんて言っていたら、否が応でもわかるでしょう?


「不二子さん」
「あらっFBIの子猫ちゃんじゃない!一緒にいる、とは聞いてたけど」
「まぁ…色々あって、しばらくは」
「うふふ!私は嬉しいわ、女の子が増えるのは大歓迎よ〜」


いや、一時的に手を組んでるだけで仲間になったつもりもないんだけど…というか、不二子さん自身もルパンの仲間ってわけではなさそうなんだけどなぁ。彼女は彼女の目的があって、その利害が一致した時は一時的に手を組んでいる感じ?それこそ、今の私のような感じだろうか。
裏切りは女のアクセサリーだ、という言葉は、正に彼女の為にあるのではないかと思ってしまうくらいに。私の場合、裏切ること前提で手を組んでいるといっても過言ではない。
…ああでも、現状だけ見ればFBIを裏切ってルパン側についたって言われても何も反論できないんだよなぁ。とはいえ、すんなりあっちに戻るわけにもいかないし、自分の意思は貫かさせて頂きますけれども。


「不二子ちゃん、俺のお願いは?」
「今回は特別に叶えてあげるわよ!…3日後、この場所で取引を再度行うらしいわ」
「この住所、…港?」
「ええ。この港は名ばかりで、あまり船も泊まらないらしいわよ〜?」


船が…?ということは、取引するにはうってつけの場所だってことかしら。逃げる為の船さえ用意しておけば、そのままアメリカ―――いや、海外へトンズラすることだって容易い。
うーん、でもまぁ飛行機で逃げられるよりかは追いやすいか…まぁ、そう簡単に逃がす気もないですけど。

(ルパンが狙っている宝石、それが例の麻薬組織の手に渡ったら…大変なことになる)

だからこそ、その取引は確実に潰さなくてはいけない。ただ潰すだけではダメだ、その宝石自体が裏の世界の人間の手に渡ってしまっては、何の意味もなくなってしまう。取引を潰し、尚且つその宝石を誰の手にも渡らない場所へ―――だからこそ、ルパンの手が必要になるのだ。FBIだけでは、そんなことができないから。
別に、…組織の中で動くことを窮屈だと思ったことはない。組織に属していなければできないこと、それは山ほどあると知っているから。けれど、何に縛られることなく動ける人の方が有利だということも多々あると思っている。今回の案件がそうだったというだけ。


「ねーえ、子猫ちゃん!貴方の恋人って本当にイケメンで、素敵な男ね!」
「…は?」
「ちょっとつまみ食いするつもりだったんだけど、…ふふ、食えない男だったわよ?」


え?ちょ、この人は一体何を言っているの?!まるで、秀一本人に会ってきたような口ぶり…。


「ま、まさか…?!」
「やぁ〜だ、そんな怖い顔しないでよ。イイ女が台無しよ?」
「台無しな顔にさせるよう、仕向けてるのはそっちでしょう…っ!」
「なんだ、そんな顔もできるんじゃない。ルパンの前じゃすました顔ばかりだから焦ったりしないと思ってたんだけど…」
「それがそうでもねーんだぜ、不二子ちゃん」


ルパンが浮かべた笑みに、紡いだ言葉にギクッと身が強張った。
私の予想が正しければ、彼がこの後紡ぐ予定であろう言葉は―――


「パーティー会場で鉢合わせしたシルバーブレットの姿に、これでもか!ってくれぇ悶えてたから」
「やっぱりそれ持ち出してきたか!!」
「まぁ、あの姿はこっちもビックリしたな」
「なぁ〜んだ、何だかんだ言いつつベタ惚れなんじゃない!子猫ちゃんも!」
「正にその通りだったでござる」


シルバーブレットの彼の前ではどんななのか、気になるわ〜。
楽しそうに言ってますけど、知られたくない。絶対に知られたくない…!スーツ姿の秀一に悶えていたのだって見せたくなかったのに、気持ちはそう簡単には抑えられないものなのです。会場でそうならなかっただけ褒められたものだと思う。
今思うと、そりゃあもう恥ずかしい姿晒してるんだな私…今更だし、きっとルパンも次元も五右衛門も忘れてはくれないだろうから、開き直るしかないけど。とりあえず、このよくわからない空気を払拭したい!咳ばらいを1つして、それで?と口を開けば、ルパンが不敵な笑みを浮かべた。


「勝負は3日後だ。取引現場を押さえて、そんで宝石を頂くって寸法さ〜」
「ねーえ、ルパン?その宝石、盗んだら私に頂戴?」
「ん〜?いっくら可愛い不二子ちゃんの願いでも、今回ばかりは聞けねぇんだな。これが」


……?何か、今違和感を感じたような気がする。首を傾げて考え込んでいると、ルパンが自分の欲の為に動いているという口ぶりには、聞こえなかったことに気がついた。何というか、…誰かに頼まれているような…そんな感じがしたんだ。
不二子さんに弱いと聞いていたルパンが、彼女のお願いを聞けないと言っているのも何だか引っかかるしね。まぁ、私がそれを知る必要は1つもないだろうからいいんだけど。
ルパンに断られた不二子さんは、せっかく情報を手に入れたのに何よ〜!と怒ってはいるものの…彼の意思が固い、と気がついたのか頬を膨らませたまま黙り込んだ。これ以上は何を言っても無駄だ、と気がついたのかもしれないわね。うん。


「…で、いいのか?嬢ちゃん」
「いいのか、って何が?次元」
「あのFBIの兄ちゃんと敵対してもいいのか、ってことだよ」
「ああ…まぁ、罪悪感がないわけじゃないけど…でも使えるものは使わないと、でしょう?」
「おーこわ!俺達も手駒にするつもりかよ〜工藤ちゃん」


さあ?それはどうでしょう。
人差指を唇に当ててそう笑えば、ルパンは一瞬間を置いて茶化すかのように口笛を吹いた。
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