3人の男


び、ビックリしたぁ…!!!
突然起きた爆発に、私は目を向いた。だってまさか、急にビルが爆発するとは思わないでしょ?!これは何かもう、大変なことがおきているなぁ…思わず頭を抱えるしかない。爆弾を仕掛けたのは例の麻薬組織か、取引相手か―――もしくは、この間のパーティー会場に爆弾を仕掛けたのと同じ組織か。

(確率として高いのは、パーティー会場のと同組織だろうなぁ…)

目的として考えられるのは捜査の攪乱、混乱、そしてルパン一味を跡形もなく葬ることだ。元々、あの組織の目的はそれだもんね。此処に来ていることも確実に知っているだろうし。更に言えば、爆発騒動で例のモノが自分達の手に入る可能性が高いと思っているんだと思うのね?ほら、騒ぎに乗じて奪っちゃえばいいんだもん。取引自体が始まったタイミングを見計らって爆発させた、って感じだったし。
…でも捜査の攪乱と混乱は、偶然湧いた産物なのかな。ルパン一味を葬り、例のモノを手にいれることができれば万々歳のはずだもんね。


「工藤ちゃん、予定が狂ったが強行すんぜ!」
「はいはい。そうくると思ってたよ」
「五右衛門は逃走ルートに隠した車頼めっか?連絡したら俺達を回収してほしいんだよな〜」
「む、拙者は行かなくて良いのか」
「最初はその予定だったんだけどよ、この騒ぎの中まとまって行動すんのは危ねぇや」


まぁ、ルパンの言うことは一理あるかも。さっき、公安とインターポールらしき人物も見つけたし…これはいよいよ、FBI共々動き始めるでしょう。そうなると車を押さえられてしまう可能性もなきにしもあらず。その前に誰か、車に戻っておいた方がいいもんね。まぁ、滅多なことがない限り見つけられないとは思うけど、逃げることを考えると五右衛門に行ってもらった方が都合がいい。戦闘力は大分落ちるけど、致し方ないのであります。

…そういえば、次元から連絡来ないけど…秀一との対決はどうなったのだろう?さっきの爆発騒ぎで中断されているか、それとも気にせず続行中か、一体どっちなんだろう?銃撃っぽい音は聞こえてこないけど、爆発の音や炎の燃え盛る音にかき消されている気がするなぁ。ドンパチやってても。
けど、秀一も次元もこんな状況でやり続けるような性格してなさそうだし?案外、すんなりと中断している可能性は高いかなぁ。秀一もなかなかに自由奔放な所があるけれど、何が最優先かは必ず考えるし、それを間違えない人なので。


「…さて、取引現場からは離れていると見た方がいいかしら?」
「有り得るな。だが―――おっビンゴ!海岸沿いの道に見つけたぜ」
「………君、いつの間に発信機なんてものを…」
「泥棒ってもんは、いつでもいくつも罠を仕掛けておくもんなんだよ。にしし」


はぁ…もう返す言葉を考えるのも面倒だ。


「うしっ追うぞ、工藤ちゃん!」
「了解」


すんなりと事が進めばいいと願うばかりだけど、こういうのはあまりよろしくない方向へと進むと相場が決まっているのです。FBI、そして公安とインターポールが動いているとなると…ああ、やっぱり嫌な予感しかしないなぁ。もう色々投げて今すぐ逃げたいくらいに。事件に好かれている小さな名探偵が絡んでいないだけ、まだマシかもしれないけど。
ルパンが関わっているから、もしかしたらボウヤも…というのは、どうやら杞憂だったらしい。そればっかりは良かった、と思う。いくら高校生探偵を名乗っていたからとはいえ、今はただの小学生で、そして一般人に変わりないのだ。推理力がいくら高くても、あの子は警察関係者ではないからね。
叔母としてもできれば大人しくしててもらいたい、と思っているのが本音。言った所で無駄だというのもわかってはいるけどさ。走りながらも零れ落ちる溜息。何で私の周りって、こうも面倒なことを引き寄せやすい人達ばっかりなのかなー…あ、私もその1人か。

走ること数分。前方に1人の男が見えた。あれは、…麻薬組織の男ね。パーティー会場で見た赤城とは、後ろ姿が違う。
1人ってことは例のモノを奪って逃げている最中か、もしくは身の危険を感じて逃げ出したの二択だと思うけど、わざわざ日本に来たんだもの…手ぶらで逃げ出す、なんてバカなこと考えるわけがないわよねぇ?普通なら。


「ルパンッ例の宝石は持ってんの?あの男!」
「ああ、反応があるから間違いねぇぜ。大方、あの赤城って男を殺したか脅したかでぶんどったんだろ!」
「なら確実に殺してるでしょうね、その方が手っ取り早い」


ということは、日本警察も呼ばれる事態になるかな。…その前に片をつけたい所だわ。
走るスピードを上げ、ルパンと二手に分かれる。ルパンは奴の前方を塞ぐ為、コンテナを踏み台にして華麗に一回転し、見事に奴の進行方向へ着地した。私はその後方へ。方向転換して逃げるのを防ぐ為に、ね。
その辺りは抜かりないわよ、いっくら予想外の爆発で予定が狂おうとも。言葉を交わさずにルパンと意思疎通、なんて洒落になんないけど。


「おーっと、逃亡劇はそこまでだぜ?」
「なっ…ルパン三世?!」
「申し訳ないけど、貴方が赤城から受け取ったその石…私達が頂くわ」


コツン、と踵を鳴らして近づけば、前にも後ろにも行けないことに気がついたらしく、グッと顔を歪めたのが見える。ふう…これで何とかチェックメイト、かしら。
歪められた顔にはもう抗う意思はない、と判断して、男に近づこうとした瞬間だった。足元に、的確に銃弾が撃ち込まれたのは。


「ッ?!」
「は、…ははっ悪いなルパン三世!まさか1人で取引場所にのこのこ来ると思っていたわけではあるまい?」
「…まぁな。この人数はちーっと予想外だが」


ゾロゾロと姿を現した男達。出で立ち、そして手に握られた得物を見る限り―――男の仲間、つまりは麻薬組織の構成員と思って間違いはなさそうだ。
…まずったな。確かに男の言う通り、1人で来ているとは思っていなかった。こうなるであろうことは、私もルパンも少なからず予想はしていたんだけど、ここまでの大人数だとは思っていなかったんだよねぇ。正直。いたとしてもせいぜい数十人だろう、と踏んでいたのに。
今、私達を囲んでいる人数は少なく見積もって数百人だと断言できる。下手するとこれ以上いる、という可能性も捨てきれないけど。

(こういう事態を想定して銃を持ってきたのは、正解だったな)

ジャケットの内ポケットに忍ばせておいた銃を脳内に思い描き、そっと笑みを零す。けど、抜く瞬間は慎重に見極めなければこっちが蜂の巣になりかねない。これだけの人数だ、命を失うまでに1分とかからないんじゃない?一斉に射撃をされたら。
そうならない為にも、相手側の一瞬の隙をつかなければいけないんだけど…再度、辺りを見渡して溜息をつきたくなった。これ、隙なんてできる?いや、それぞれには隙ができるだろうけど、全員にっていうのは些か無理があるよね?そんな瞬間、あるはずがないよね?
ああもう、頭痛い…何で毎度、こんな面倒なことにならなきゃいかんのだ!


「これは泥棒なんぞに渡すものか…これで俺は、頂点に立つ」


はぁ、そーですか。それはまたでっかい野望だこと。
…この男は組織のボスではなかったよな。確か―――…下っ端構成員に近かったはずだ、幹部でも何でもない男。取引に行かせるにはうってつけの立ち位置だろう。そんな男が頂点に立つ、と口にしたということは、アレを利用して幹部、もしくはボスの座を勝ち取ろうって魂胆か。
最初はそんなつもりはなかったんだろうけど、どこかでアレの存在価値・利用価値を聞いてしまったんでしょうね。そうじゃなきゃこんなバカなこと、考えるはずもない。
周りにいる男たちが不穏な言葉を聞いても顔色ひとつ変えないということは、こいつらはすでにこの男の手中に落ちているってことかしら。金で釣ったのか、それとも元々のし上がりたいという野望を腹の奥に秘めていたのか…そこは私の知る所ではないけれど。どっちにしろ、厄介だということには変わりないし。


「はははっ撃ち殺せェ!!」


男の言葉を皮切りに、私達に向けられていた銃が一斉に火を噴いた―――と、思ったのだが、倒れたのは私でも、ルパンでもなく、銃を構えていた男達だった。倒れた、と言っても数十人だけだが。
でも一体、どこの誰が…?


「全く…何で貴方がそっち側にいるんですか、工藤!」
「おい、ルパン!嬢ちゃん!無事かー?」
「相変わらず無茶をする女だな、…円香」


現れたのは秀一、次元、降谷の3人。何とも鉢合わせたらかなり面倒なメンバーが揃ってしまった。
ルパンは楽し気な笑みを浮かべてはいるけれど、私は引きつった笑いしか出ないぞ。
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