運命の日
散々泣いて、弱音を全てコンラートに吐き出してから3日後。
猊下の護衛として眞王廟に行っていた(らしい)ヨザが、猊下と共に血盟城に帰ってきた。
「準備が出来たのか?」
「うん、もういつでも大丈夫だよ。あとはルナさんの心の準備が出来次第ってとこかな?剣も持ってきてあるし」
「思っていた以上に早いんだな…」
「でも場所はどうするんです?此処や眞王廟で行うのはまずいんでしょう?」
「建物がない場所を見つけておいた。そこなら多分、大丈夫なはずだよ」
いよいよ、か。
心の準備などとうに出来ている。迷いも、恐怖も全てあの日に…涙と一緒に置いてきたんだ。
大丈夫。もう迷うこともない、全てを受け入れる覚悟はできている。
「それでね、ルナさん」
「はい?」
「これが封印の剣…君には創主の魂を呼び起こしてもらわないといけないから、自分で自分の心臓を貫くことは難しいと思う」
「…やはり、このままの状態で貫いても無駄ということですか…」
「うん、それじゃダメなんだ。創主を解放しないと、剣に封印できないからさ」
創主をの封印を解いた後、誰かに私を殺してもらわなければならないのか…。
猊下から剣を受け取り、しばし思案を巡らす。きっと誰に頼んでも、その者の心には大きな傷と罪悪感を残すだろう。
罪人でも、敵でもない者を殺すのは…辛いから。どんな理由であれ、きついはずだ。
そんな思いをさせるのであれば、自分自身で命を断ちたいと思っていたのに。誰にも見られない場所で、ひっそりと死んでいこうと思ったんだがな。
渡された剣をギュッと握り、ある人物の前に足を進めた。
「コンラート」
「っ!」
僅かに彼の顔が歪んだ。
ごめんな、コンラート…私はお前に―――
「お前に、頼みたい」
「…ルナ」
「最後くらい…わがままを言っても構わないだろう?」
「ズルイな…お前は」
わかっているよ、ずるくて…酷いことを言っていることくらい。
コンラートにとっては最悪の最後だ。どこまでも痛みと、後悔と、罪悪感を負って生きていかせることになる。
辛いなら私を恨めばいい。憎めばいい。そして…何の苦痛もなく、私を殺せればいい。
「……それがルナの願いだというのなら、引き受けましょう」
「コンラッド…ッ」
「決まり、だね」
どうしてコンラートなんだ、と問われると困るんだけどね…だけど直感でこいつになら殺されてもいいと思ったんだ。
未来永劫の苦しみを与えることになっても、それでも。私はそれより自分自身の気持ちを優先してしまったんだ。