SS詰め合わせ
【スキなもの】
ルナの頭を撫でながら、ふっと顔を覗いてみるととても幸せそうに瞳を閉じていた。
「ルナ」
「んー?」
「昔から思ってたんだが、幸せそうな顔をするよな。頭を撫でると」
そう、思い返してみれば幼い頃からだ。見ているこっちまでも嬉しくなるくらい、幸せそうに笑ってくれる。いつもより柔らかい雰囲気になるし。
「好き、なんだよ」
「?何が」
「頭を撫でてもらうのが。姉上もよくしてくれてさ…安心するんだよ」
「そうだったのか…」
「温かいんだ、体温が直接伝わってきて。ああ、でも…コンに撫でてもらうのが一番好きだな。その大きな手は、安心感が増す」
全く、コイツは…鈍いくせにこうやって、簡単に爆弾を落としていくんだ。どれだけ威力があるかも知らないで。だけど、そう思ってもらえるのは何よりも嬉しいから。
俺も頭を撫でてやるのは、好きだなと思う。こうやって幸せそうに笑って、安心したように身を委ねてくれるからね。
【わかれのキスは軽めに】お題:Fotune Fate
「…長期?」
つい最近、恋人となった私とコンラート(まだ慣れないのだが)。基本的に2人で陛下の護衛をしているから、当然ながら一緒にいる時間が多くて。あんまり離れているってことがなかったんだ。
どっちかが城下に行っていれば、その間は会わないが…それも夜の間だけだったしな。私も諜報員として、そこら中を飛び回ることも少なくなっていたし。だから、何週間もコンラートと会わないというのは、実は初めてだったりするんだ。
「あぁ、陛下からのご命令でね。ちょっと視察に…ものすごく申し訳なさそうな顔で言われたけれど」
「ふふっあの方らしいよ。目に浮かぶようだもの」
でも、そうか…しばらくこうやって顔を見ることも、話をすることも、触れることも…できないのか。それを考えると、少し淋しいかもしれないな。隣にいることが当たり前だったから。
「気をつけて行ってこいよ?…危険は、ないと思うが何があるかわからないし」
「わかってる。俺の留守中、ユーリのことよろしく頼むよ」
「大丈夫。任せておけ」
ふと沈黙が流れる。
「餞別に…キスしても?」
「…仕方ないな…でも軽めにな?」
それでも離れている間、淋しくなどないように。
【探すと見つかりにくいけど】お題:Fotune Fate
この世に生まれてきたからには、姿も、形も、気持ちも、性別も。何もかもが違って。何一つ、同じものなんて存在してないように思う。
だから必死に生きて、生きて、生きて―――…"何か"を探す。幸せを、誰かを、生きている意味を。
「こんな所にいたのか」
「コンラートか…貴方もこっちへ来たら?気持ちいいぞ」
「だろうね。今日は暖かいから」
私が寝転んでいるのは、お気に入りの場所。ユーリの護衛となってこの血盟城に移り住んできた頃、偶然にも見つけた場所なんだ。
樹齢何千年と言われる大木に、心地良い風、そして眩しいほどに降り注ぐ太陽の光。天気がいい日は此処に寝転ぶと、最高に気持ちいいんだ。だから仕事が一段落すると此処に来る率が高いんだよなぁ。
…あ、もちろんユーリの護衛はサボってないぞ?休暇をもらえた時、だけだ。カサリと衣擦れの音と、草が擦れる音が聞こえてすぐ隣に移動した体温と、気配。
「…うん、気持ちいいな」
「だろう?風も穏やかだし、天気もいいし…本当ならユーリも連れてきて差し上げたいんだが」
「喜ぶだろうな。残念ながら今は、ギュンターと勉強中だけど」
「ははっまた苦戦しているんだろうな?魔族語に」
ふっと目に入った青い空。その深い青がとても綺麗で…"あぁ、幸せだな"と唐突に感じた。
穏やかに流れていく時間。綺麗な青空。キラキラと輝く陽の光。心地いい風。隣に寝転ぶ大切な人。
ああ…こんなにも近くにあったんだな、幸せと呼べるもの。探しても、探しても見つからなかったのに。けれど、確かに今ここにあるよ。
【愛の囁きは割愛】お題:Fotune fate
俺の大事な、大事な恋人のルナは、愛情表現が苦手だ。言葉にするのももちろん、態度とかで表すのも恥ずかしくてダメだと言っていた。だから、俺があいつから「好き」とか聞いたのは…きっと一番最初だけ。想いが通じ合った日だけ、かな。
別にそれが全てだとは思っていないし、愛されていないとは思っていないけれどね。あいつはあいつなりに、雰囲気というか…オーラで伝えてくれているから。優しくて、暖かいんだ。あいつの纏う雰囲気は。眼差しも。
それがすごく幸せだから―――別に言葉や態度にしてくれなくても、いいと思う。聞きたくないというわけじゃないんだけど…無理強いして言ってもらうものでもないだろうからね。
―――コンコン…
「はい?」
「私、だけど…入ってもいいか?」
「こんな時間に珍しいな…どうぞ」
「ごめん…寝ていたか?」
「いや?本を読んでいた。座ってろ、今お茶でも淹れるから」
「あぁ、ありがとう」
執務も終え、各々の部屋で過ごしていた夜中。突然、ルナが訪ねて来た。俺の部屋に来るのは珍しいことではないけど、夜中っていうのは初めてだな…何かあったのか?
紅茶を注いだカップを渡せば、穏やかに笑ってお礼を言われた。今日のルナは、いつもより雰囲気が柔らかい。その雰囲気から、何か良くないことがあったわけではないとわかって少しホッとする。
「…あ、美味しい」
「貰い物で初めて淹れたけど、確かに美味いな」
「今度、買ってこようかな」
「ルナ好みの味だもんな。…次の休み、一緒に買いに行くか?」
そう問い掛ければ、嬉しそうに笑って頷く。本当に、本当に嬉しそうに…幸せそうに笑ってくれるから。ずっと、ずっと護っていきたいと、この笑顔を絶やしたくないと思うんだ。
誓いの代わりに1つキスを送れば、一瞬目を瞠るけれど、すぐにルナも応えてくれる。…時には、言葉なんていらない。
【恋バナなんて縁がない!】@ヨザック
「恋バナときたら俺でしょー!」
「…そうか?お前、仕事が忙しくて彼女いたことないじゃないか」
「ハッキリ言うなよ、ルナ…悲しくなるぞ……」
「嘘を言っても仕方ないだろう。…で、何を話せばいいんだ?」
「恋バナだよ、恋バナ。お前は隊長のこと話せば良いんじゃないかね」
「コンのこと?一体何を…」
「ノロケとかー好きな所とかぁ?」
「………」
「今までしたことねぇよなー…恋バナなんて」
「…なかったな…」
「じゃあ、ルナの初めて俺がいっただきー♪あの人ってすげー人気あるけどアンタ妬いたりしねーの?」
「妬かないわけがない。…顔に出さないようにするの、意外と大変なんだ」
「へー…アンタでも妬くんだな。ちょっと意外だ」
「自分の好きな相手が他の女性にモテてるの見て、嬉しく思う奴がいたら会ってみたいよ」
「でもちょっと安心したよ。そういう"普通"の部分っていうの?戻ってきてたんだなーって」
「コンといると、自分が軍人だってこと忘れる」
「いーじゃん、いーじゃん!それ、今のアンタにはすげー大事よ?」
「…そういうお前は、好きな女性のタイプとかないのか?」
「俺ぇ?そーだなー…元気いっぱいな奴がいいかな。楽しそうに笑ってくれる奴」
「クス…そうか。お前らしい答えだな」
「そうかぁ?自分じゃよくわかんねぇよ」
「自分のことが、一番わからないものだ。…生きている者はな」
「…でーもさ!ルナとこんな話出来るとは思わなかったぜ」
「ふふっ確かにそうだな。こんな穏やかな時間…今までなかったから」
誰かとゆっくり話すことが出来るようになるなんて、想像したこともなかったよ。