シンデレラの魔法

「パーティー?」
「そう!蘭も来るから、なまえもおいでよ!」


園子ちゃんは高校の友達で、所謂お嬢様。あんまりお嬢様っぽくなくて、すっごく接しやすいんだけど。だから、普段はそれを意識してないんだけど…彼女の口からパーティーって単語が出てくると、そういえばこの子ってお嬢様だったね、と思い出す。
私はただの一般家庭に生まれた普通の高校生なので、そんなパーティーとか華やかな場所には当然行ったことがない。そんな奴が気軽に行ってしまって良いのだろうか…!


「そんな心配しなくても大丈夫だって!私も蘭もいるし」
「着ていくドレスとかないよ…?!」
「あ、じゃあ園子に貸してもらったら?2人の背丈同じくらいだし」
「えっいいの?」
「いいわよ!ついでにメイクと髪もセットしてあげるから、当日は蘭と一緒にウチに来なさいね」


…うん?園子ちゃん家に行くのはいいんだけど、パーティー前に家の中に入っちゃって大丈夫なのかな?だって準備の真っ最中だよね?素朴な疑問を吐き出せば、パーティー会場はホテルだから彼女の家ではやらないんだって。
とんでもない勘違いをしていたらしく、楽しそうに笑う2人とは対照的に私は顔を真っ赤にして俯くしかできませんでした。





「ねっねぇ、園子ちゃん!蘭ちゃん!私、やっぱりこれ脱ぎたい…!」
「ダメに決まってるでしょ!アンタ、裸で参加する気?」
「こんなに露出あるドレスにされるとは思ってなかったんだもん!裸の方がマシ〜!」
「なまえ、落ち着いて…絶対、裸の方が恥ずかしいから。それにドレス似合ってるよ?」


会場に着くまでの車内も、会場のロビーでも、そして会場に入っても、私は今着ているドレスを脱ぎたくて仕方なかった。脱いだ方が恥ずかしい、というのはもちろんわかってるけど、それでも思っていた以上に露出が多いドレスを着続けることには抵抗があり過ぎてどうしようもないんですけど!!
借りたストールを羽織っているものの、それでも恥ずかしさは拭いきれず。思わずはぁ、と溜息が漏れてしまう。

(ちょっとしたパーティーだ、って聞いていたけど…全然そんなことない)

いまだ恥ずかしくて仕方がないけれど、いつまでも下を向いていたらもったいない。最初で最後になるであろうパーティーをこの目に焼き付けておくとしようか。料理と飲み物を取りに行く、という蘭ちゃんと園子ちゃんを見送り、私は壁にもたれかかって会場全体を見渡すことにした。
うん、やっぱりこれは立派過ぎるパーティーだ。招待されている人達もとても華やかで、こういう場所に慣れてる!って感じの人ばっかりだもんね。ドレスも綺麗だし、スタイルも抜群だし、何より美男美女が多いなぁ。
園子ちゃんが貸してくれたドレスは、とても上質なものだけれど…着ているのが私だからね。ドレスの魅力も半減しちゃうってものだ。いや、半減であればいいけれど。


「お一人ですか?」
「いっいえ、友人と一緒に…」


うわ、声かけられちゃった!驚いてどもっちゃったよ…!
苦笑を浮かべながら、声がした方へと視線を向ければそこには綺麗なブロンドの髪をした男性が立っていた。肌の色が黒いけど、でもそんなにチャラチャラした印象はないかも…?浮かべられた笑みも優し気で、こういうのを甘いマスクって言うのかなぁ。


「ああ、ご友人と…では、ご友人が戻ってくるまで隣にいても?」
「ぅえっ?!」


よろしければどうぞ、と差し出されたグラスを受け取りながら、素っ頓狂な声が出た。いや、出るでしょ?!隣にいてもいいか、なんてこんなイケメンに言われちゃったら、変な声でも出るでしょ!!我ながらマヌケな声だ、と本気で思っているけれど、でも仕方ないと思うんだ。うう、どうしようこの状況!


「すまないが、彼女は俺のツレなんだ。―――手を出すのはやめてもらおうか、安室くん」
「なっ赤井?!」
「赤井さん…っ?!」


肩を抱き寄せられたかと思えば、聞き慣れた低音の声が鼓膜を揺らした。顔を上げてみれば、そこにいたのはやっぱり予想通りの人でビックリ所の騒ぎじゃない。イケメンの金髪色黒さんと赤井さんが知り合いっぽいことも驚いたけど、それ以上にこの人がパーティー会場にいることが驚きなんですけども!!
だって園子ちゃんの家が主催しているパーティーだよ?どう考えても赤井さんは園子ちゃんとも、彼女のご家族とも知り合いじゃないでしょう。…もしかして、何か事件とか…?!き、聞きたいけど、本当に事件だったら聞いたらマズイよね。
どうしたものか、とうんうん唸っていると、私の耳に唇を寄せた赤井さんが「仕事で来ているわけじゃないから安心しろ」と囁いた。うっかり叫びそうになりましたけど、これもさっきと同じで仕方ないことだよね?!不可抗力ってやつだよね?!


「赤井、貴様…っ!プライベートでも僕の邪魔をするつもりか!」
「そんなつもりは更々ないんだが、…自分のものに手を出されるのを黙って見ていられるわけがない」
「彼女をモノ扱いか!!」
「そこに食いつくのか君は…」


ええっと、…これ、一体どういう状況?そしてどうしたらいいの?金髪色黒さん(赤井さんは『アムロくん』って呼んでたっけ)は叫ぶように赤井さんに突っかかってるし、かなり目立ってるんだけど…!
赤井さんに肩を抱き寄せられたままの私は、見事に逃げ場がなく騒ぎの中心にいます。恥ずかしすぎていい加減に泣きそう!!


「あのー…めっちゃ目立ってて、私泣きそうなんですけど……」
「す、すみません!…あ、僕は安室透といいます。名前を聞いてもいいですか?」
「え?えっと、」
「答える必要はない。…行くぞ」
「ちょ、赤井さん?!」
「貴様っ…!」


行くぞ、って私は蘭ちゃんと園子ちゃんと来てるから、この場から離れるのは非常にマズいんだけどな!そして追いかけてきそうだったアムロさんは、ちょうど戻ってきた蘭ちゃんと園子ちゃんに声をかけられたみたいで、こっちをチラチラ気にしながらもその場を動けなくなっていた。
…まるでこうなることを見越して、あのタイミングで私の腕を引っ張ったみたい。相変わらず、勘がいいというのか何というか…。


「…安室くんに何もされていないだろうな?」
「されてないけど…」
「ボウヤに聞いてツテを使って潜り込んでみれば、案の定だ」
「ツテって…職権乱用はダメですよ!」
「別にFBIだということを明かして入ったわけじゃないさ。ボウヤのツテだ」


コナンくんのツテ、っていうのも…何とも言い難いですけどね。


「色々説明してもらいたいけど、でもまぁ…カッコイイ赤井さんのスーツ姿が見れたからいいかな」
「俺も来て正解だったようだ」
「うん?」


さっきと同じように唇が耳に寄せられ、「とても綺麗だ、似合っている」と囁かれてしまい…今度こそ顔を真っ赤に染めた私でした。



(あの子はなまえ、って言うんです!でも…)
(蘭さん?)
(彼女、年上の恋人がいるって言ってましたから多分、無理じゃないかなぁ)
(結構、ベタ惚れよね?恋人のこと話す時、ふにゃっとした笑顔浮かべてるし)
(?!!)
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