酔っ払いの戯言
アイドリッシュセブンのリーダーである二階堂とは、割と飲みに行く。仕事が同じ場所だったりとか、飲みてぇなって時に連絡してフラッと行ったりとか。サシで行くことが大半だけど、和泉兄や逢坂、ウチの龍が一緒に行くこともある。ああ、百さんもあるか。
今となっては千さんもたまに来るけど、いまだに二階堂があんまりいい顔しないから頻度はそう高くはない。…で、今日は久しぶりに二階堂と飲んでるんだが―――
「でさ〜その時の顔がめちゃくちゃ可愛くて」
「……おう」
「ちょっと八乙女、ちゃんと聞いてるか?!」
「聞いてるよ」
ここまで酔っ払ってる姿、初めて見たんだけど。俺。
side:楽
二階堂は酒好きだし、全く酔わないわけじゃない。ほろ酔い姿なんてよく見るし、顔だって赤くなる。でも今みたいな酔い方は、初体験だ。酔いどれMAXなんじゃねぇの?
くっそ、こんな風になるってわかってたら途中でストップかければ良かったぜ…。けれどそれはもう後の祭りってやつで、今からじゃああまり効果は期待できねぇだろうが、二階堂のビールの入ったジョッキを水の入ったグラスに変えてやった。
さすがに色も違うし、ジョッキからグラスになったらバレるかなって思ってたんだが…気づきもせずに飲んでんだけど。でもまぁ、中身が違うって暴れられることもないみてぇだしいいのか、これで。
「なー八乙女ぇー」
「今度は何だよ」
「なんでなまえってあんなに可愛いのかな」
「…俺に聞くなよ」
「最初はさー割とツンが多かったんだけどさー」
「もう話変わんのかよ!!」
勢いでツッコんじまったけど、総じて酔っ払いというのはこういうものだった。そういや、龍も酔っ払うと標準語と方言がごっちゃになって喋るし、仕舞いには方言オンリーで喋り始めるからもう何言ってるのかサッパリ。んで、話題も目まぐるしく変わってくもんだからついていけねぇんだよな…もしかして、俺も酔うとこんな感じになってんのかな。
酔っ払ってる龍を見て気をつけねぇとな、とは思うんだけど、やらかすんだよなぁ。俺も。やっぱり気をつけよう。迷惑かけちまうのはごめんだしな、うん。グビリ、とビールを飲みながら、改めて強く思った。
まぁ、それは今は置いておくとしても…この状況、どうすっかなぁ。
「…なまえ、お前生きてるか?」
「辛うじて……楽、もうこの人ぶん殴って埋めてもいい…?」
「それはやめてやれ。お前んとこの看板アイドルで、大事な奴だろ」
「ううう、だって〜…こんなの恥ずかしすぎて無理…!」
だろうな。実はちょっと前からなまえもこの場にいるんだよな。
ほら、二階堂がこんな状態だろ?今日はサシで飲んでるし、誰も連れて帰ってやれる奴がいねぇんだよ。最初はマネージャーである紡を呼ぶか、と思ったんだけど、前に潰れちまった時になまえがいい、って駄々こねたことを思い出したからなまえに連絡したんだ。酔っ払ったから迎えに来てくれ、って。
んで、さっき来てくれたんだが…まー見事に二階堂の奴、なまえが来てることにも気づかずに可愛い連発してるんだ。そりゃあ当の本人は照れるだろ?特に二階堂は素直じゃねぇからなぁ…言う時は言うみてぇだけど、今日みたいに連発しないだろうし、ここまで惚気ることもなかったんだろう。俺だってコイツの惚気を聞くのは今日が初めてだ。つーか、本人に惚気るなんてこと普通はしねぇだろうしな。
「ほんっと可愛くて、頑張り屋さんで…何度、なまえの笑顔に救われてきたか…」
「…おう」
「あの子がいなかったら俺、本気で誰かを好きになるなんてこと…一生なかったかもしんねぇなーって」
「そうか。…好きなんだな、なまえのこと」
「ちょっ楽―――もが、」
叫びかけたなまえの口を塞いで二階堂に視線を向けてみると、にへら、と締まりのない笑顔を浮かべた。
「好きだよ。すげー好き」
「ッ…!!」
その笑顔は砂糖吐きそうになるくらいに甘くって、蕩けそうで、本当になまえのことを好きで好きで堪らないって笑み。その言葉を最後に二階堂はスヤスヤと寝息を立て始めた。
「〜〜〜〜酔っ払ってない時に言ってよ、バカ…」
「ははっだよな」
ポツリ、と呟いたなまえの声音はどこか拗ね気味だったが、視界の端に映ったアイツの顔は嬉しそうにも見えて。ああ、こいつらはちゃんと好き合ってるんだなって実感した。
寝こけちまった二階堂をどう起こすかっていう問題は残っちゃいるが、とりあえず2人の関係が上手くいってるみてぇで安心したわ。
(はよ、二階堂。二日酔いは大丈夫か?)
(おー…ちょっと頭痛いけど。つーかさ、俺、昨日なんかした?)
(は?なんでだよ)
(いや、…なんか、)
(?……あ、なまえか?)
(理由教えてくれねぇんだけど、何か怒ってるみてぇで…やらかしたのかな、と)
(あー…やらかしたっちゃあ、やらかした?)
(マジ?!俺、なにしたんだよ八乙女!!)
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