キミは誰のもの?

こんにちは!私、なまえといいます。大学に通うフツーの女の子のはずだったんだけど…何と!わたくし、魔族だったらしいのですっ!
それだけでもびっくりする真実なのに、更に舞姫だとまで言われちゃって…!!!何ですか、舞姫って!私、ダンスなんてやったことないのに〜…。

…まぁ、それは置いておいて(これを話してると長くなっちゃいそうだし)。そんな事実が告げられたのが、もう2年半くらい前になるのかな。初めて言われた時はビックリしたけど、今では大分向こうでの暮らしにも慣れてきたほど。
王様(あっちの世界だと魔王になるのか)のゆーちゃんや、ダイケンジャー(ん?何か違う気も…)のムラケンくんは色んなこと話してくれるし。
ちょっと怖そうに見えたグウェンダルも話し相手になってくれたり、編みぐるみ教えてくれるしね。
ヴォルフは強引だけど、楽しませようとしてくれるのがわかるから…その優しさが嬉しい。
ギュンターはー…眞魔国について教えてくれるのはすっごく嬉しいんだけどね、ちょっと自重してほしいことが多々ある。
…あと、護衛兼恋人のコンラッド。
最初はゆーちゃんの護衛だったんだけど、私が向こうにスタツアしてからはずーっと傍にいてくれている人。銀の虹彩を散らしたような瞳が、すっごく綺麗で印象的だった。
気がついたら好きになってて、気がついたら…恋人同士になっていたんだよね。
すっごく大事にしてくれるし、優しいし、1年経った今でも大好き。あんな素敵な人、嫌いになる人の気持ちがわからないくらい…大好きな人なんだけれど。私には1つだけ、不満というか…悩み事があるのです。


「ねぇ、今日の帰りに何処か寄っていかない?」
「お、いーじゃん。何処行く?」
「そうだなぁー…」
「(デート、かな?いいなぁ…)」


そう。私の悩み事というのは…ずっと傍にいれないこと。
私は不定期に地球に戻されちゃうし、コンラッドの住む世界は眞魔国の他にはなくて。だから…離れてしまうのがとてつもなく寂しい。もっともっと、一緒にいたいし…2人で何処か遊びに行ったりしたいし。
それこそ、コンラッドと一緒にしたいことなんて山ほどあるんだ。言い出したらきっと、キリがないくらい。


「友達と恋バナとか、したことないな…言ったら、会わせて!って言われるだろうし…」
「あれ?なまえ、こんなとこで何やってんのー?」
「あ、本当だ!なまえだー」
「え?…あ、美央に繭嘩」
「今日はもう学校終わり?」
「うん、終わり。2人も?」
「そ、終わり!この後、用事ある?」
「今日は何もないよー」


この2人は幼なじみで、大切な親友の美央と繭嘩。小さい頃からずっと一緒で、いつも3人で遊んでたのよね。…それは今でも変わらないけど。
大学は別々の所なんだけどね、今日みたいにたまーに駅で会ったりする。まぁ、連絡なんていつも取ってるから、偶然なんか待たなくてもいいんだけどさ。


「何も用事ないなら、これから3人で遊びに行かない?」
「いいよー。何処に行こうか?」
「久しぶりにあのカフェ行こうよ!あそこのシフォンケーキ、絶品なんだもん」
「繭はあそこのケーキ、本当に大好きだよねぇ」


やっぱりこの2人といるのは、すごく楽しい。…楽しい…のに。どうしても頭の中に浮かぶ、コンラッドの優しい笑顔。
私達のお気に入りのカフェも、彼と一緒に行ってお茶したいって思うなんて…美央と繭嘩に失礼なのにな。2人に気づかれないくらいの溜息を吐いて、顔を上げると美央達が立ち止まっていた。…どうしたんだろ?


「美央?繭嘩?どうしたのよ、立ち止まって…」


不思議に思って声を掛けてみれば、ちょっと興奮気味に振り返られました。
ちょっと怖いよ…お2人さん。


「あんね、あんねっ!」
「…うん、少し落ち着こうか美央。どうしたの」
「あそこっ!超、超、超!カッコイイ人がいるのっ!」
「カッコイイ人?」


いまだ若干、落ち着きのない美央をなだめながら、繭嘩が指差す方向を見てみれば…よく知っている顔を見たような気がした。

綺麗な茶髪に、整った横顔。
その全てが愛しいと思った…彼。

コンラッドによく似た人が、目の前にいるの?それとも本人なの?
でも此処は地球で、彼は笑顔で私を送り出してくれて…なのに、此処にいるはずないわよね?だって―――…彼の住む場所は、向こうなのだから。
美央と繭嘩が何か言っているけれど、もう耳には入ってきていない。私はもう彼に釘付けで、目が離せなくなっていた。
ふっと、"彼"が目線をこっちに向けて、ふんわりと笑みを浮かべた。あの優しい笑顔で。


「…なまえ」
「コン、ラッド…?」


優しい声音で紡がれる私の名前。本当にコンラッドだ…見間違いでも、よく似た人でもなかったんだ。
思わず抱きつきたくなったけど、誰かに腕をくいくいと引かれて、踏み止まりました。(…危ない、危ない。此処、街のど真ん中でした)
腕を引っ張ってたのは、どうやら繭嘩のようで振り向いてみればいやに瞳をキラキラさせておりましたとさ。ついでに美央も。


「何、何っ?!このカッコイイ人、なまえの知り合いなの?!」
「え、えっと…そのー…」
「もしかして彼氏?!そうじゃないなら紹介してほしいなぁ〜」
「ダッ…「すみません」」


"それはダメ"だと美央に告げようとした時、ぐいっと引き寄せられた。
目線だけを上に上げてみれば、見慣れたコンラッドの顔が近くにあって不覚にもドキッとして。
いまだに慣れないんだよなぁ…コンラッドの顔が至近距離にあること。もうそれなりに長い期間、一緒にいるはずなんだけど。
どうしてだか、ずーっとドキドキしちゃうの。…それだけ好きだってことなのかしら。


「彼女は俺ので、俺も彼女のモノなので」
「ッ!?コッコンラッド?!」


この人は何を、にっこり爆弾発言しちゃってくれてるんですかぁーーーーーーっ!!!
ほら、美央と繭嘩だって顔を真っ赤にしてるじゃん!多分、私も真っ赤だろうけどもっ!それでなくても抱き寄せられたり、顔が近くにあるから顔が熱いのに〜…。


「え…っと…この人はコンラッド。私の…か…彼氏、です…」
「お2人はなまえの友達ですか?」
「はっはい!」
「幼なじみで、親友なんですっ!」
「申し訳ないんだけど…今日、彼女を借りてもいいかな?」
「「どっどうぞ!」」
「それじゃあ、行こうかなまえ」


そう言われて手を取られて、そのまま歩き出すコンラッド。え、私は何処に連れて行かれるんでしょうか…。
美央達に申し訳ないと思いつつ、コンラッドに会えたことがすっごく嬉しいと思ってる。
でも遊びに行く約束をすっぽかしちゃったし、今度の休みに謝罪の意を込めて埋め合わせをしよう。

美央達に別れを告げて、そのまま街をブラブラと歩いている私達。
会話はないけど、繋がれた手から彼の温もりが伝わってきて…すっごく安心するんだ。
やっぱりコンラッドの手は、魔法の手だなぁ。
…聞きたいことはたっくさんあるけれど、今だけはこのままでもいいかなぁ…なんて思ったり。


「…驚いた?」
「そりゃもちろん!こっちにいるなんて…思わないでしょう?普通」
「あははっそうだよな」
「でもどうしてこっちに?向こうで何かあったの?」
「いや、姫が心配するようなことは何も」
「さっきは名前で呼んでくれたのに、もう"姫"って呼ぶの?」


ぷうっと頬を膨らませながら言えば、一瞬きょとんとした表情を浮かべて…でもすぐに嬉しそうに笑って"なまえ"と呼んでくれた。
紡がれた名前と共に、私もようやく笑顔になれる。
向こうではずっと"姫"だから、慣れているといえば慣れてるけれど…せっかく2人きりで、しかも地球にいるんだもの。名前で呼んでくれたっていいじゃない?
地球での私と彼はただの恋人同士で、姫と護衛じゃないんだから(向こうではあんまり名前で呼んでもらえないし)。


「それで…どうしたの?どうやって地球に来たの?」
「あぁ…ユーリ達が地球に帰るということで、見送りに行ったんだけどね。どうやらそれに巻き込まれてしまったらしい」
「え、じゃあ有利くんとムラケンくんが向こうに帰るまでこっちにいられるの?!」
「ええ、もちろん。今回お2人が戻る時には、貴方も一緒に向こうに戻ってきてほしいようですし」


どれくらいで眞魔国からお呼びがかかるかわからないけれど、少なくともそれなりの時間は一緒にいられるんだ。
それはすごく…嬉しい、かも。


「しばらくは渋谷家でお世話になるから」
「そっか。…じゃあ、時間を見つけて会いに行く!有利くんの家なら知ってるし」
「俺も会いに行くよ、なまえに」
「あ…コンラッド、まだ時間ある?」
「うん、まだ平気かな」
「じゃあ、一緒に行きたいところがあるの。付き合って…くれる?」
「貴方が望むなら、何処にでも」


突然のわがままにも、こうやって笑顔で答えてくれるんだ。
私も彼の笑顔ににっこりと笑い返して、手を引いて走り出した。
この行動にはいつも落ち着いているコンラッドもびっくりしたみたい。だって後ろから"わっ!"って少しだけ、焦った声が聞こえたもの。
ただそれだけなのに、私は何だか嬉しくって、楽しくって自然と笑顔になれた。

走って、走って辿り着いたのは私のお気に入りの場所。


「うーんっ!久しぶりに走ったぁ!」
「驚いたよ、急に走り出すから」
「ふふっ何だか走りたい気分だったんだもん。…結構な距離を走ったと思うけど、やっぱりコンラッドは呼吸が乱れてないのね」
「鍛えてあるからね。…陛下や猊下、そして姫を護る為に」
「…そっか」
「ところで、此処は…」
「港公園。私のお気に入りの場所なの」


海が見える公園。景色がとっても綺麗だから、デートスポットにもなってるみたい。
コンラッドに恋をしてから…いつか一緒に来てみたいなと思っていた場所の1つ。
絶対に叶わないだろうと思っていた夢だったのに、すんなり叶ってびっくりしたよ。嬉しいけど。


「綺麗でしょ?今日は天気もいいし、陽の光が水面に反射して…キラキラしてる」
「…ええ、本当に綺麗だ」
「…ずっと、ずっとね?コンラッドと来てみたかったの。他にも一緒に行きたい場所がたっくさんある。だけど、それは一生叶わないと思ってた…貴方がこっちに来るなんてこと、考えたことなかったもの」


地球で一緒に過ごせる時間なんて、ないに等しいものだと思う。
でも…でもね、コンラッド。それでも私は―――――


「色んなとこ、行きたい。コンラッドと一緒に」
「何処にでも、どこまでも…お供いたします。何時も離れることはしません」




何処にいても、何をしていても、考えるのは貴方のこと。
だって私は―――愛しいキミのモノなんだから。
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