目一杯、きみとふたり

新幹線に揺られること2時間半。お昼少し前に目的地に到着しました!朝はそこそこ早かったけど、行きたい場所やお昼ご飯の相談をしていたら寝る間もなくあっという間だったなぁ。
旅行ってこういう移動時間も楽しかったりするんだよね、お菓子食べたりして。修学旅行もそうだったなぁ…行きの電車からめちゃくちゃ盛り上がるの。あの時も寝た記憶はほとんどない。


「無事着いたな。先に荷物、預けに行こうか」
「え?チェックインって15時じゃなかったっけ」
「問い合わせしてみたら、チェックイン前でも荷物は預かってもらえるらしいぞ」
「そうなんだ…というか、そんなのいつの間に!」
「ん?行くことが決まって、次の日辺りだったかな」


本当、臣くんの気配りというか気遣いというか…そういうのがすごいと思う。昔から助けられてる気がするなぁ、こいつのこういう所に。私も見習わないといけない気がしてきた。全て臣くん任せにしちゃうのはなぁ、ダメだよね。うん。
とりあえず、旅館の近くにも観光スポットがいくつもあるのは新幹線内で確認してあったので、荷物を預けて旅館近くから見て回ることにした。まぁ、広いから見たい所全てを回ることはできないけど。


「あ、臣くん。観光する前にご飯食べたい、お腹空いた」
「もう昼前だもんな」
「美味しいご飯か、わらび餅を所望します!」
「うん、わらび餅は食後な。デザートをご飯代わりにしない」


あ、ダメですか。わらび餅ってもちもちしてるから、お腹膨れるしアリかなぁって思ったんだけど。ボソリ、と何気なく呟いた言葉は、しっかりと臣くんにも届いていたらしい。旅館までの行き方をスマホで調べている彼は、こっちを一切見ることなく私の後頭部をスパーンと引っ叩いた。無言で。アホかって意味合いだと思う、もしくはバカ。
もちろん、臣くんなりに加減してくれてるけどね。加減はしてくれるけど、容赦はしない奴なんだ。あれ、何かこれだと矛盾してる…違うな、ええっと……あ、遠慮がないって方が正しいかな。


「地下鉄・バス一日券っていうものがあるらしい。観光で色々回る予定だし、それが一番得だな」
「へー!そんなのがあるんだ」
「帰りの新幹線って夕方だったか?」
「うん、17時半だったはず」
「それなら一日券より、二日券の方がいいか。よし、なまえ買いに行こう」


ん、と出された手を取り、駅構内を進む。地下鉄・バス二日券はコンビニとかでも売ってる所があるらしいけれど、私達が降り立った駅は中心部の駅だし、此処のバス案内所で買えるらしいからそれが一番手っ取り早い。これからバスや電車に乗って旅館へ向かうわけだしね。行く途中で買うより、乗る前に買ってしまった方が断然お得なわけですし。
ということで、無事に購入できたので再度電車に乗りしゅっぱーつ!


「此処からどのくらいだったっけ?そんなに遠くなかったよね」
「ああ、30分くらいだな。駅から旅館までもそう遠くないし…調べてみたら旅館の周辺に食事処も多いみたいだ」
「ほーんといつの間に調べてるんだ、アンタは」
「あー……うん、割と浮かれてるんだよ」
「へっ……?!」


反射的に顔を上げ、臣くんを見上げると―――口元を手で押さえ、珍しく赤面している幼なじみ兼恋人がそこにいた。…マジか。なんか、滅多に照れない臣くんの照れ顔を見たら、私もつられて赤くなってしまうのですが。電車内で揃って赤くなってるとか、それはもうおかしな光景で。
でも赤くなってしまったものは、もうどうしようもないので………いやでもどうしよう。さすが3連休と言わんばかりの混み具合で、顔を隠すことができない。多分、これだけ混んでいれば赤の他人に見られる心配は一切ないけれども、恥ずかしいものは恥ずかしい…!!


「なまえと出かけること、あんまりなかっただろ。だから、その…喜ばせて、やりたいなって」
「…うん」
「恋人として、丸1日2人っきりってこともなかったから…浮かれるだろ、そりゃ」


寮暮らしをしているから、2人っきりになれることなんて稀だ。私の部屋に来ればそれも叶うけれど、未成年も多く暮らしている寮内で軽率に部屋で2人っきりっていうのは、なるべく避けようっていうのが私達の暗黙の了解だったりするから。
それに誰かしら寮内にいるから、完全に2人っきりになるってことは今回が初めてだったりするんだよなぁ。臣くんだけじゃない、私だって旅行が決まった時から今日までずーっとソワソワして落ち着かなかったんだ。私も負けないくらい、きっと浮かれてる。


「私の行きたい所も、臣くんの行きたい所も、たくさん行こう。それで、」
「ん?」
「たくさん思い出作ろうよ。写真も、撮ろ」
「ああ、そうだな。せっかくの機会だし」


私だけ楽しんでも、喜んでも意味がない。臣くんも一緒に楽しんで、喜んでくれなくちゃ。
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