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 side:八戒


初めて出会った時から、この子が寝込んでいるのを何度も見たことがある。一緒に住んでいたし、一緒に旅をしているのだからそれは至極当たり前のことなのかもしれないけれど…それでもやっぱり、ベッドの上でぐったりしている姿を見るのは辛いし、心が痛むんです。
それがいくら命に別条がなくとも。だってそうでしょう?いくら過度に心配しなくても問題ないものでも、辛そうにしているのを見ているんですから、やっぱり嫌なんですよ。なまえが元気でないのは。

さっきまで看病をしてくれていた悟空を部屋に帰して、ベッド脇に置かれたままの椅子に腰掛ける。ベッドサイドのランプしかつけていないから、ハッキリと顔色はわからないけれど、この宿に着いた時に比べれば少しだけ赤みが引いたかもしれません。熱冷ましを飲ませてあるから、それが徐々に効いているのかもしれませんね。ちゃんと休養を取れば2〜3日で全快するはずだ。
きっとこの子は熱が下がった時点で出発しよう、と言うでしょうが、今回ばかりはそれを聞くつもりはない。三蔵にも「なまえの体調が良くなるまで、出発はしない」と伝えてありますし。…大分、我慢していたんでしょうから…このくらいしないと、またぶり返してしまう可能性が高いんですよ。ただでさえ無茶をしやすい子なのに。


「ちゃんと言ってください、って約束したのに…」


心配をかけまい、としてくれているんだろうなというのはわかるんですが、それで倒れてしまったら元も子もない。それはなまえだってわかっているだろうに、…これもまた性格なんでしょうかねぇ?


「ゲホッ、ゴホッゲホッ!」
「なまえ、大丈夫ですか?水飲みますか?」
「すみませ、」
「謝らなくて大丈夫だから…はい、ゆっくり飲んで」


水をいれたコップを口元に運んであげれば、少しずつではあるけれど飲み下していく。その光景にホッと息を零す。


「はっかい、く、」
「ん?…ああ、僕ならずっと傍にいますから。だから安心して大丈夫ですよ」
「うん……」


この子は体調を崩すと寂しくなるのか、甘えるような仕草を見せる。それを初めて見たのは出会って1年経った時、だったかな?泣きそうな顔で行かないで、と言われてしまいまして…それからはずっと傍で看病するようになったんです。逆に僕が寝込んだ時は同じように傍にいてくれて、とても嬉しかったのを覚えています。だから今回も、なまえの傍にいようと決めていました。…とは言っても、あまりの襲撃の多さに身体が疲労を訴えていましたから仮眠はとらせて頂きましたけどね。

水を飲んで落ち着いたのか、うとうとし始めたなまえの頭をそっと撫でる。何度も、何度も、安心できるように優しく。大丈夫だよ、此処にいるよ、と僕の存在を知らしめるように。何度も。
次第に瞼が閉じていって、5分もしないうちに彼女は深い眠りに落ちていった。その様子にそっと息を吐いた、呼吸も大分安定してきているし…良かった。


「早く元気になって、…大好きなあの笑顔を見せてくださいね」
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