僕達から見たお姫様

Q.3人はあの2人のことをどう思いますか?



「…何だ、これ。」
「質問だろ、俺達への」
「でもさーこれ、誰のこと言ってんの?あの2人って?」
「俺達に聞くっつったら、あいつらしかいねぇだろ―――八戒となまえちゃん」
「はあ…くだらねぇ」
「なーんだよ。三ちゃんだって気になんだろー?」
「え、何で八戒となまえのこと聞かれてんだ?」


悟空は野生の勘が働くクセに、こういう色恋沙汰にはてんで疎い。まぁ、恋愛すらしたことねぇ奴だし?そもそも思考回路がお子ちゃまだから仕方ねぇんだけどよ。
にてしも、…八戒達のことをどう思うか、ね。


「2人で話してること多いよな!仲良いなぁって思うけど」
「時々、妙なことで結託してんのは気に食わんがな」
「あー…あいつら、笑顔で変なことしてきやがるからなぁ。妙に気が合ってんだよ」
「前に似た者同士なんです、って八戒が言ってたぞ」
「その通りだろ。八戒となまえちゃんは色んなとこが似過ぎてんの」


話は少し変わって、あいつらが一緒にいる時の雰囲気について。


「甘い。砂糖吐けそうなくれぇに甘い」
「柔らかくて、優しい雰囲気だなーって昔から思ってた」
「絶対につき合ってるだろ、お前ら。」


三蔵の言葉は言い得て妙だと、素直にそう思った。確かにあいつらの纏う雰囲気はそうなんだ、付き合ってねぇのに、まるで付き合ってるみてぇに甘いから…だから、実は俺達に報告してねぇだけでつき合ってんだろお前ら!って何度も怒鳴りたくなった。
でも本当につき合ってねぇんだよなぁ…好き合ってんのは間違いねぇし、八戒なんか一回告白しようとしてたしな(俺と悟空が邪魔しちまったけど)。


「…でもさ、俺思うんだけど」
「あ?」
「何だよ、悟空」
「八戒もなまえもさ、一緒にいる時ってすっげー幸せそうな顔してんじゃん?嬉しそうだし」


あの笑顔見ると、今のままでも何も問題ねぇんじゃねーかな、って。
いやに真面目な顔して悟空がそう呟いた。だってそれで2人は幸せなんだろ?って笑ったのがすげー印象的で、何つーか…その言葉がストンと落ちてきて、一発で納得しちまったんだよな。それが猿の言葉っつーのがちょっとアレだが、でもまぁ…間違ってねぇんだ。2人はきっと、今の関係性に不満とか、そういうのを抱いてねぇから。


「―――ひとつだけ、疑問がある」
「三蔵が?珍しいな、なによ?」
「アイツ―――八戒の中にはまだ居続けてるんじゃねぇのか」


それはきっと、八戒が初めて愛した女のことだろう。アイツの姉で、目の前で死なれて、それで、…亡骸さえも、残らなかった生涯唯一の女。実際、アイツはもう恋愛なんてしねぇだろうなぁって思ってたんだ。結構、衝撃的な過去を持ってるからもう一歩を踏み出すことを恐れるんじゃねぇかな、って。…そう、思ってたんだけど。


「居続けてはいるだろーな。忘れもしねぇだろ。…けど、」


それでもあの子が好きだ、と笑った八戒の顔が吹っ切れてるように見えたから。心底、優しい顔をしてたから。


「今のアイツが好きなのはなまえちゃん。それは間違いでも何でもねぇよ」
「…そうか」


フッと笑みを浮かべた三蔵なんて、レア中のレアだろ。
何だかんだ言ってコイツもなまえちゃんのこと気に入ってるっぽいからな、もしかしたらあの子に傷ついてほしくねぇって思ってんのかも。泣いてほしくない、と。


「どんな道を選ぼうと、あいつらの自由だ。俺達に何か言う権利などないのかもしれんな」
「俺、2人が笑ってくれてんならそれでいーや!」
「……ま、結局はそこに行き着くのかもな」

―――ガチャッ

「ただ今、戻りました〜」
「あれ?皆さん出かけなかったんですね。悟浄なんていないかも、って話をしていたのに」
「ん〜?今日はちょっと、な」


買い出しから戻ってきた2人は、相変わらずの笑顔と雰囲気を纏っている。
美味しそうなお菓子を見つけた、と笑っているなまえちゃんも、お茶にしましょうか、と賛同する八戒も、いつもと何ら変わらない。不変のものなんざ、と思うけれど、でもこいつらの雰囲気だけは―――この幸せそうに笑う笑顔だけは、変わらないでいてくれればいいと、柄でもないことを思うんだ。
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