So Cute!
―――なまえさん!赤井さんが大変なんだ!!
慌てた様子のボウヤから電話をもらったのは、今日の昼間。一体、何があったんだと目を丸くしたけれど、いつだって割と冷静なボウヤがここまで取り乱した様子で連絡してくるのは珍しい。
それに秀一が大変、と聞いたら居ても立っても居られないというのが、恋人というものだと思う。ちょっと違うだろうけど。とりあえず、買い物をそこそこに工藤邸へ飛んで帰ったのは言う間でもありません。
「…あら。ずいぶんと可愛らしい姿になりましたね」
「何でそんなに冷静なのなまえさん…」
「多分、君が私の代わりにたっぷり慌ててくれたからじゃない?思ったより大変な事態ではなかったわ」
「これで?!だって赤井さん子供になっちゃってるんだよ?!」
うん、まぁ子供になってることも大変な事態なんだろうけど…最悪の事態を予想していたから、それに比べると子供になってしまったことくらいそこまで大変じゃない、と思ってしまうのよね。
ほう、と思わず吐息が漏れる。だって…ねぇ?見ることは叶わないと思っていた秀一の幼少時代を、この目で見ることができたんだもの!それはもう感動しちゃうよね!初めて会った頃はもう中学生くらいだったし、こんなに小さい姿が見れるなんて思わなかったなぁ。写真も見せてもらったことないんだもの。
「ねぇねぇ、コナンくん!新くんの子供服ってどこにある?」
「え?確か2階にあったと思うけど…何で?」
「このままじゃさすがにマズイでしょ?」
黒シャツ1枚(それもダボダボ)羽織っているだけの秀一を指差せば、簡単に事情を理解してくれたらしい。ちょっと見てくるよ、とボウヤはリビングを出て行った。どこにある、と聞いたものの…よくよく考えてみれば、新くんの子供の頃の服って全部毛利家に持っていってしまってるんじゃないか?だってコナンくんが新くんなんだもの、その可能性が一番高いわよね。
だけど見に行ってくれたってことは、数着は残っているかもしれないってこと?それとも秀一にコナン=新一っていうのを悟らせない為に、わざと見に行ったとか?
(そんなことしなくても、秀一のことだから気がついていそうだけどなぁ…)
廊下から聞こえる足音を聞きながら、内心苦笑する。今はその問題は置いておくことにしよう!それよりも大事なのは、秀一のことだもんね。
ソファに座って手を握ったり開いたりしている姿は、もうもんのすごく可愛い…!携帯で連写したい。むしろ、この姿だけでアルバムを1冊作り上げてしまいたい気分だわ。
「赤井さん、なまえさん!少しだけど残ってたよ、新一兄ちゃんの子供の頃の服」
「すまないな、ボウヤ」
「わぁ…口調は秀一なのに、声高い…」
「やっぱりなまえさんも違和感あるよね?」
「あるある。でもそれ以上に可愛いぞチクショウ…!!」
あ、本音がダダ漏れだ。
「…お前はショタコンか?」
「赤井さんの、それも子供の姿でショタコンとか言わないでよ……というか、そうなの?!」
「え?違うよ。子供は好きだけど、こんな反応はしないよ。多分、秀一だからかなぁ…」
「それなら問題がない、という口ぶりだが、そうでもないぞ?」
「いや、だってずっと見てみたかったんですもん。秀一の小さい頃!」
んふふ、と笑ってみせれば、ボウヤがジト目で見上げてきた。言いたいことはわからないでもないけど、可愛くてテンション上がっちゃってるんだから仕方ないじゃない!開き直って、鼻歌を歌いながらボウヤが持ってきてくれた子供服を広げてみる。
どれが似合うかなぁ…普段、黒ばっかり着ているんだからこういう時くらい違う色の服を着せたくなるよねぇ。あ、このパーカー可愛い。確か新くんのお気に入りでよく着てたんだよね、兄さんが送ってくれる写真によく写ってたもん。これ。
「秀一、これ着てみてください」
「俺に青か…?」
「いっつも黒ばかりなんですから、たまにはこういうのもいいでしょう?」
「大丈夫だよ、赤井さん。赤井さんなら何でも着こなせる気がする」
「ボウヤ…面倒になってきているだろう」
「あはは、そんなことないよー?」
このパーカーに合わせるなら無地のTシャツ…いや、襟付きのシャツでもアリかも。きっとどっちでも似合うだろうし、ひとまず着てもらおう。
人の服を選んだことって一度もなかったけど、これって案外楽しいかもしれない。
「楽しそうだね、なまえさん」
「うん、今年一番の楽しさ。…あ、やっぱり襟付きのシャツの方がそのパーカーに合いますね!」
「なまえの顔がここまで緩んでいるのを初めて見たよ…」
「秀一、秀一!」
「なんだ?」
「ぎゅーってしてみてもいいですか?」
期待を込めた眼差しで見つめれば、逆らうことは無理だということを察したのか、溜息をつきながらも好きにしろと言ってくれた。許可ももらえたことだし、遠慮なくぎゅーっと抱きしめれば普段と違う感触で自然と頬が緩む。
んー、子供特有の温かさと柔らかさだなぁ…和んじゃうね、これは。ボウヤは再会した時に抱きしめさせてくれなかったから、この感触は本当に大分昔に感じたっきりだ。
「…このまま戻らなかったら、養子になりません?」
「本気のトーンで言うのはやめてくれ」
「えー?だって子供の秀一、めちゃくちゃ可愛いんですもん」
きっと明日には元に戻ってしまっているんだろうけど、それまでは堪能したいなぁ。
(そういえば、何で小さくなっちゃったんです?)
(ボウヤに風邪薬をもらったんだが…)
(…あ、まさかの哀ちゃんの試験薬だったんですか?)
(どうやらそのようだ)
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