C
■プロローグ的な。
私は今から2年前くらいに、とある男の人に拾われた。大神万理、それが私を拾って、そのまま面倒を見てくれている人の名前。
お金も持ってない私なんか拾っても、何の得にもならないのにあの人は何でもないような顔で「おいで」と、簡単にその手を差し伸べて。振り払うことも、逃げることもできず、いまだにズルズルとその人の家に居候をしている。
でも2年経って少しだけ、変わったことがある。それは、私が大神さん―――いや、万くんのことを大好きになったこと。
「ばーんくーん!もうすぐコーヒー豆なくなっちゃうけど、買い出し行く?」
「あれ、もうなかった?」
「うん。あと2〜3回分くらいかなぁ」
「最近はお客の数が増えてたからか…こんな裏路地にあるんだけどなぁ」
このカフェのオーナーである万くんは、何故か人があまり寄り付かないであろう裏路地にお店を構えている。こんな場所じゃお客さんなんて来ないに等しいよなぁ、と最初は思ってたんだけど、意外と常連客がいるみたいで…新規のお客さんではなく、昔からの常連客で成り立ってるみたい。
でもまぁ、リピーターになるのは頷けるかも。万くんの作るものはドリンクも料理も天下一品だもん!
「仕方ない。一旦、お店を閉めて買い出しに行こうか」
「私も?」
「うん。天気もいいし、今日は外でランチにしよう。ほら、なまえが行きたがってたお店があっただろ」
「そうなの!駅前にね…」
万くんは爽やかなカフェのオーナーだ。だけど、
―――カランッ…
「あ、すみませーん。これから休憩で店を閉めるんで…」
「…貴方が、『クロウ』さんですか」
「―――…この時間にソッチのお客さんが来るのは、珍しいな」
『クロウ』。それは万くんのもう1つの名前。その名前で呼ばれると、爽やかさは一切鳴りを潜めてニヒルな笑みを浮かべる。
―――そう。万くんのもう1つの仕事は…多額の報酬を対価に情報を売る、情報屋だ。
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