感謝と恋情は紙一重

「よっし、かーんせーい!」
「グレタもできたよ!」
「あら、可愛らしいクッキー。それは陛下とヴォルフ?」


焼き上がったホカホカのクッキーを指差して問えば、グレタ姫はとっても嬉しそうな顔になってそうなの!と笑った。ああもう、本当に可愛らしいなぁ…!姫の父親である陛下とヴォルフが羨ましいくらいだわ。

―――私達が何をしているかと言うと、去年だったかな?陛下が地球で行われている催し物『ばれんたいん』というのを、眞魔国に持ち込んできたの。
それからというものの、2月14日には大切な人達に感謝の気持ちを込めてお菓子を配り歩く、っていうよくわからない行事ができたわけであります。…何で配り歩くんだろうね?感謝の気持ちを込めたお菓子を渡す、っていうのはいいことだと思うけど。


「なまえは何を作ったの?」
「パウンドケーキよ、味見してみる?」
「うんっ!」


ドライフルーツをふんだんに入れたパウンドケーキを1つ、グレタ姫の口に入れてみれば、美味しい!と満面の笑みになってくれましたー。よしよし、姫のお墨付きをもらえれば他の人達にあげても問題はなさそうだねー。お菓子作りは得意な方だと自負しているけれど、やっぱり第三者に食べてもらわないと安心できないんだ。

さってと、あとはこれをあらかじめ用意しておいた袋にいれて、それからこれまたあらかじめ用意しておいたメッセージカードもいれて、…最後にシールを貼ればバッチリ!!
うーん、自分で言うのも何だけどなかなかにいい出来栄えなんじゃない?お菓子も成功したし。ふふー、陛下達、喜んでくれるかなぁ?
ニヤニヤしている私の横で姫は一生懸命、クッキーを袋詰めしています。その横には可愛い似顔絵が書かれたお手紙もあります。あれだな、あの2人は姫から頂いた贈り物にいっちばん反応しそう。下手すると泣きそうな気がするなぁ…溺愛度がすごいもん。半端ないもん。


「姫、できました?」
「うん、できた」
「じゃあ渡しに行きましょう。誰から行きますか?」
「えっとね、アニシナとグウェン!」


おお、陛下達が一番最初かと思ったら…まさかのお二方ですか。
話を聞いてみれば、陛下とヴォルフはいっちばん好きだから最後に渡すの!だそうです。あまりの可愛さに私がノックダウンするかと思いました、いやほんと。





「はいっ!ユーリとヴォルフに!!」
「グ、グレタ……!」
「僕にもあるのか?」
「もちろんだよ!グレタ、お父様達が大好きだもん」
「グレタ〜〜〜〜〜ッ!!!お父様達もグレタが大好きだぞー!!!」


わぁ…予想通りの展開だなぁ。グレタと一緒に色んな人にお菓子を渡し歩いて、最後にやって来たのは魔王陛下の執務室。グレタ姫は先にフォンクライスト卿とコンラートに渡し、父親2人から嫉妬の目を向けられつつ…それでも全く気にした様子はありませんでした。…日常茶飯事なんだね、溺愛されてるから。
そんなことがあった後にお菓子を受け取ったもんだから、2人の喜びようは尋常じゃありません。すっごいなーコレ。


「相変わらずですねぇ…陛下とヴォルフは」
「本当に。…君も一緒に作ってたのか?お菓子」
「え?ああ、うん。姫からお誘いを受けたもので」
「―――俺にはくれないの?」


陛下達の様子を横目で見ながら話していれば、コンラートからまさかの爆弾発言頂きましたー。


「え、欲しいの?」
「そりゃあね。なまえの作るお菓子は美味しいから」
「あ…そういう理由」


いや、別に他の理由が欲しかったわけじゃないけれども!…でもちょっとだけ、違う理由で欲しがってくれれば良かったのに―――って思っちゃったのは、仕方ないことだと思うんだ。


「…他の人達にあげてるのに、俺だけもらえないのは…結構傷つくんだけどね」
「べっ…別に用意してないとは、言ってないでしょ!」


はい!とコンラートの胸に押し付けるようにして渡したのは、皆と同じパウンドケーキが入った袋。でもさ、…少しだけ違うの。コンラート、貴方に渡した袋の中には―――もっと大切なものが入ってるんです。
恥ずかしいし、教えるのも悔しいから自分で気がつくまではヒントすらあげないけどね!


「味は、保証しますよ。グレタ姫のお墨付きでもあるし」
「なまえが作ったものでまずかったものなんてないよ。…ありがとう」
「―――どういたしまして」
「それで、…これを受け取ってくれると嬉しいんだけど」


手を出して、と言われたから素直に出せば、そこに小さめの袋が置かれました。ピンクのリボンがつけられていて、とても可愛らしい。中身が何かはわからないけれど、この流れからいくと彼も私にお菓子を用意してくれていたのかな?
コンラートに感謝されるようなこと、私は一切した覚えがないけどもらえるものは有難くもらっておくに限るからね。それに、単純に嬉しいから…どんな理由であっても。


「まっさかコンラートが用意してるとは思わなかったよ…ありがと」
「残念ながら既製品だけどね。君の好きな店のクッキーだよ」
「わっほんと?!大事に食べる…!」


ほわほわと嬉しい気持ちになっていると、それと―――とコンラートが口を開く。


「新しいケーキが出たんだって。なまえさえ良ければ、ご一緒にいかがですか?」
「え…コ、コンラートと…?」
「もちろん。俺と行くのは嫌か?」
「いっ…嫌じゃ、ない、…行きたい、です」
「じゃあ今度、休みを合わせて行こう」


ああもう。そんな顔で笑わないで。そんな声で名前を呼ばないで。…勘違いしそうに、なっちゃうじゃないか。



(ちょっとコンラート!なにこのカード…!)
(俺もビックリした、…まさかなまえも同じこと書いてるとは思わなかったなぁ)

((貴方のことが大好きです。))
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