サンタクロースは海をゆく!その2
サニー号を飛び立ち、早3日。さっきまで滞在していた島にハートの海賊団も立ち寄った、と情報を得たので、ただ今追いかけている最中なんだけどー…見当たらない。島を出たのは昨日の朝だって言っていたから、まだそこまで遠くまで行ってないと思ったんだけどなぁ。もしかして潜水中?だとしたら、もう追いつける・追いつけないの話じゃないぞこの野郎…!
でもその可能性が濃厚になりつつあるよな、と溜息をつきかけた時、船のような物体が見えてきた。よーく目を凝らしてみると、色は黄色、帆船とは全く違う形をしている。そして船体には見覚えのあるジョリーロジャーが描かれていた。やっと見つけたー!!
「よっしゃ、ピョン吉!下降して!」
ぺシペシ叩いてそう告げると、ひと声上げてゆっくりと進路を変えて下降していく。徐々に鮮明になる黄色い潜水艦・ポーラータング号目掛け、私はひらりと飛び降りた。
着地地点はもちろん、甲板だ!
「…キャプテン、でっかい鳥から何か落ちてくるよ」
「は?」
「やっほー!トラファルガーくん、ベポくん!!」
「……は?!おまえ、」
「あー!なまえじゃんか、久しぶり!」
スタン!と綺麗に甲板へ着地を決めた私は、そのままの勢いでもっふもふのベポくんに抱きついた。だって駆け寄ってきてくれたから、挨拶代わりにハグしておこうと思って。チョッパーくんももふもふで気持ちいいけど、ベポくんもいいもふもふ…。
思う存分、気持ちのいいもふもふを堪能していると、わらわらと甲板へハートのクルーが集まり始めた。おおう、いつの間に。
「あれ?なまえじゃん。何してんの?」
「出来心で遊びに来た」
「変なこと言ってんじゃねぇよ、何でも屋」
「あいった!ちょっと、刀で殴ることないでしょーよ」
「柄で殴ってんだから、大してダメージねぇだろ」
まぁ、そうなんだけどさー…でも女の子の頭を躊躇なく殴ることもないでしょ、トラファルガーくん。腰に手を当ててそう言えば、お前を女だとは認識してねぇ。と何とも辛辣なお言葉を頂きましたとさ。
うん、別に君に女の子扱いしてもらおうとかそんなこと思っちゃいないけど、もう少し言葉にオブラートってもんで包もうか!包むことを覚えようか!!
「…ま、いーや。そんなことよりさー」
「相変わらず自由だなーお前」
「ほい、ハートの皆へクリスマスプレゼント!」
「わぁ!なになに?」
「んっとね、お米50キロとお酒の詰め合わせ。あとベポくん用にアザラシさん(生け捕り)」
ほいさー、とプレゼント達を甲板に広げれば、至る所から悲鳴っぽいものが上がった。ん?悲鳴?何で悲鳴?変なものは一切持ってきてないはずだけど。
「おかしいおかしいおかしい!プレゼントってもっとこう…ドキドキワクワクするもんだろ?!」
「するでしょ?お米とお酒」
「しねぇよ!ビチビチいってるアザラシには、違う意味でドキドキするけどな!!」
「じゃあいいじゃん」
「よくねぇわっ!!!」
うがーっと吠えまくるシャチくんをどうどう、と抑えているのは、相棒的存在のペンギンくんだ。帽子で隠れて瞳は見えないけど、何となく苦笑を浮かべているような感じがする。声音もそんな感じだし、多分、間違ってはいないと思います。はい。
「アザラシ!これ、なまえが獲ったの?」
「そうだよ。ここに来るまでに見かけたから、ついでに」
「生け捕りって…仮にも女の子がアザラシを生け捕りって…」
「世の中の女の子は逞しいんだな…」
「な…おれ知らなかったわ…」
オイコラ。確かに自分でも逞しくなったな私、と思わんでもないんだけど、そこまでキッパリハッキリ落ち込みながら言われるとちょっと傷つくぞ。ガラスのハートなんて可愛らしいもんではないけど、これでも人並みに傷つくんだから君達もオブラートに包むってことを覚えろ。こんちくしょう。
「というか、何で米と酒?助かるけど」
「ん?だってトラファルガーくんの好物がおにぎりだって聞いたし、お酒好きでしょ?海賊って」
「おい、ちょっと待て。それは誰から聞いた」
「さあ?誰でしょう」
「そもそも何でそんな情報をお前が持ってる…!」
今の今までじっと黙って会話を聞いていたはずのトラファルガーくんが、こめかみに青筋を浮かべて鬼哭を片手にゆらりと立ち上がる。
おっと、野暮なことを聞きますねー君は。何で私がそんな情報を持っているかって?そんなの1つしか理由はないじゃないか。
「私は海をさすらう何でも屋だよ?情報取集もお手の物なのさ」
「ほう…?何の為に必要な情報なのか、じっくり聞かせてもらおうじゃねぇか」
「やだなぁ、怖い顔しないでよトラファルガーくん。今日はせっかくのクリスマスだよ?」
斬られる前に退散だ。甲板の床を蹴り、一気に欄干まで移動する。視線だけを空に向ければ、気持ち良さそうに旋回するピョン吉の姿が見える。うん、いい子だ。ちゃんと待っててくれてるね。
ピュイ、と指笛を鳴らすと、ジャンプすれば楽々飛び移れる所まで下降してきてくれた。よし、逃げる準備はこれで万端だ。最後のサプライズを成功させる為に必要なものをリュックから取り出し、ピョン吉へと飛び移る。
「待ちやがれ、何でも屋…お前は絶対にバラしてやる」
「やーだよ。シャチくん達と違って、私には組み立ててくれるお仲間がいないからね」
「あ、その時はおれらがやってやるよ。仕方ねーから」
「ふふっ嬉しいお言葉だけど、多分、その時は一生かかってもやってこないかなぁ」
シャチくんの言葉に笑みが浮かんだ。麦わらの一味もそうだけど、ハートの海賊団と一緒に航海するのもなかなかに楽しそうだと思う。思うけれど、それは絶対に口にはしない。
私は私で好きに世界を旅するって決めている、縛られるのも嫌いではないけれど―――今はまだ、自由に世界を見て回りたいんだ。
「んーじゃ、メリークリスマス!ハートの海賊団諸君!」
ピョン吉が飛び上がる寸前、私はそう叫びながら持っていた2つのクラッカーを鳴らした。パーンッという小気味いい音、はらはらと舞い散る紙吹雪、そして驚いた顔を浮かべているハートの海賊団のクルー。
サプライズ大成功!と笑みを深くした私を背に乗せ、ピョン吉は空高く舞い上がった。
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